八ヶ岳 '14.6.29
  山歩紀行 2015

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります

白山 '14.7.21
 
    2015年9月20~23日 栂海新道を歩く4日間のテント旅<その2>
 第3・4日目 朝日岳~犬ケ岳・栂海山荘~親不知(海抜0m)へ
朝日岳2418.3m 犬ヶ岳1593.0m 白鳥山1286.9m   新潟県糸魚川市・富山県朝日町

22日7:35 草紅葉のアヤメ平から、越えてきた長栂山を振返ると、緑と赤と黄と絶妙の配色。 

22日9:31 朝日岳から黒岩平までは、湿地草原が棚田のように段々状に続く素晴しい景観。
この後、黒岩山の登りから栂海新道は本性を表し、きついUp・Downが延々と続く。

<第3日目> 朝日小屋4:16-5:30朝日岳5:45-6:09吹上ノコル-9:38黒岩山分岐-9:40黒岩山9:52-11:07サワガニ山11:32-13:31犬ヶ岳-13:40栂海山荘
<第4日目> 山荘4:06-6:22菊石山-7:00下駒ヶ岳7:09-8:43白鳥小屋9:08-10:58坂田峠-11:43尻高山12:03-12:43二本松峠12:58-14:20国道脇登山口14:40-14:50親不知海岸

第3日目、4日目の行程中の詳しい様子や花・紅葉なども、YouTubeにUP中です
  →こちら からどうぞ

第3日目、行動開始。
朝日小屋に頼んでおいた弁当を早朝にもらって、暗いうちに朝食。テントを畳み、ライトを点けて出立。前日と同じ行動。
朝日山頂への斜面を暫く登って振返ると、真向かいの、目の高さの山上に建物の灯りが見えて、幻かと不思議に思ったが、言われて見れば、朝日小屋とテント場の灯り。意外な高さに思えて、どこか幻想的だった。
その上、眼下はるかに糸魚川と富山平野の夜景が実にきれいに見えた。
それらの夜景を何とかカメラに収めたく悪戦苦闘したのだが、どうやらカメラも相当のお疲れらしく、結局言うことを聞いてくれなかった。おまけにバッテリーの入れ替えをしたりして、結局、山頂までの時間を若干無駄にしてしまった。
それにもかかわらず、山頂に着いて間を置かず、ジャストタイミングで朝日が昇ってきた。

栂海新道は、この朝日岳から始まる。
なんと幸先のよいことか。
朳差で、朝日は好きでないなどと嘯いていたUnqさんも、夢中でシャッターを切っていたから、栂海新道踏破に幸いあるに違いない、そんな気がした。

標高的には、ここから海抜0mまで下るだけ、長い下りに耐えるだけだと思っていたのは大いなる間違いだった。それが分かるのは、ずっと後、黒岩山を越えた辺りから。
朝日岳から黒岩平までは、多少の凹凸はあるものの、平原草原を斜めにしたような、緩やかで大らかな下り。少し上って、少々下れば、池塘、草原のある平原、その組合せが段々状にずっと続く。
草原の草紅葉、斜面樹木の緑と紅葉、その色合いが実に絶妙で、上から見下ろしても、振り返って見上げても、何度も何度もため息をつくほど。紅葉の始まった今ならではの景色。
そんな絶景が、朝日岳からずっと続いている。そして、その後方には白馬、さらに立山、剱。前方左右には、糸魚川と富山湾の海岸線と日本海。
こんなポカポカ陽気の日に、池塘の脇の草叢にテントを張って、一日の~んびりと過ごせたら、どんなにいいだろうかと、心底思う。
が、現実はそうはいかない。

黒岩山を過ぎると、栂海新道はその本性を顕わにする。
日本海までの曲折した細い尾根の道は、とんでもないアップダウンの連続。時には、顎がつかえるほどの急坂が続く。
つい、弱音を吐くわ、ため息はつくわ、愚痴りたくなる。
そんなとき、Unqさんが言った。
まだこれほどの登りが残っていると、喜ばずしてなんの登山人か。例えば、甘党が、ショートケーキを食べた後で、まだデコレーションケーキがあることを喜ぶが如しだ、と。
うまいことを言う。
大甘党の小生には、この程度の坂など、お汁粉の後のあんみつみたいなものだ。
犬ヶ岳山頂の下にある栂海山荘に水場はない。だから、犬ヶ岳に登り付く前に、鞍部から更に10分ほど下がった水場から水を汲んできて、それを担ぎ上げなければならない。
今夜と明朝は自炊だから、炊事用と飲用の水を、3ℓタンクにパンパンに詰めて担いだ。
何のこれくらい、あんみつの後のフルーツパフェくらいのもんだ。

それにしてもだ、坂バカを自称するYoumyさん、嬉々として登っていくではないか。息を切らすということがないのだから、不思議だ。マラソンもこうだといいのだけど、などと言いながら、ウフフなーんて笑っている。2週間後の最大のライバルだ。
それよりもIke会長さんだ。嬉しくもなんともない顔をして、つまり、坂なのか平らな道なのか、全く違いのないペースで淡々スイスイ上っていく。しかも、夕食時になって分かったのだが、ザックの中には、ご飯だの缶詰だの、分け与えてくれるだけの食糧が詰まっていたのだから。
一体どうなっているのだ?どうも足の作りがちがうのでは、と思うしかない。いやはや。

それにしても、第3日目の終点、犬ヶ岳から振返った山は凄かった。朝日岳からずーと歩いてきた峰が繋がっている。ケーキのオンパレードだ。

栂海山荘にはビールもない。だから、それぞれ担いできたウイスキーやらワインやらブランディーやらを出し合って、3日目のカンパイ。あとは、ぐっすり。
あ、忘れていた。ここのトイレは、語り草。気の弱い小生など、とても使えなかった。前世紀の遺物、いやいや前々世紀かも。
ただ、自分が何者であるかを確認するためにも、一度は覗いてみることをお薦めだ。

さて、いよいよ最終日第4日目。
いつもの如く、早立ち。そして、相変わらずのアップダウンの連続。
途中の白鳥山頂の白鳥小屋にも水場はない。昨日担ぎ上げた水も切れかけている。前日と全く同様に、直前の鞍部の水場に下って水を詰め、白鳥山に担ぎ上げる。その後の水場はあてにならないから、親不知までの分として2.5ℓは担いだ。

標高千m近くまで下れば、樹相はブナ林に変る。更に下って670mの尻高山になれば、ブナの里山。それでも、立派な飛騨山脈の一部、つまり、白馬はもとより、あの槍、穂高に連なる北アルプス。歩きやすい散策路が整備されていて、春・秋のブナ林の散策を楽しめそうな山、それでも北アルプスを歩いていることになる。それが、何処となく面白い。
やがて北アルプスは、ブナ林から、天然杉の林になり、やがて、植林された杉の人工林になる。その杉の木立の間を透かして、足元はるか下に日本海の海面が見えたときは嬉しかった。
その頃には、国道を疾走する車の音がビュービューと斜面を上がってきて、ゴールが近いことを教えてくれる。

国道8号に下りて、何はともあれ、コーラでカンパイ。
その後、標高差80mの海岸に下りた。
日本海に手を浸して、完全ゴール。栂海新道の踏破成功!!

後日、カシミール3D地図で計測してみたら、
平面距離 48.5km
沿面距離 50.0km
登り累積標高 4191m
下り累積標高 5657m
推定所要時間 18時間25分
と出た。

テント荷を担ぎながら、よく歩いたものだと自画自賛。
それにしても、これだけの山並に道をつけようなどと思った人は一体何者?
改めて知りたくなって、昨日9月30日、村上市の図書館から小野健著「栂海新道ものがたり」1冊を借りてきた。
遅まきながら、これから読んでみようと思っている。
実は、朴訥で偏屈な山親父が、何を思ったか、一人コツコツと山道を切り拓いているうちに、見かねた他の山男たちが手伝い始めて、そうやってできた道が栂海新道か、などと勝手に想像を逞しくしていたのだが、どうもそんな人のそんな話ではなさそうだ。
そうこうしているうちに、たった今、Unqさんから、やはり小野健著作の別な栂海新道の本が手に入ったから1冊届けるとメールが入った。ありがたいことだ。
それにしても、行って来てから読むのと、読んでから行って見るのと、どっちがよかったのだろうか。


ともあれ、同行の皆さん、本当に本当にお疲れ様でした。今回も、想像以上の素晴しい山旅、本当に本当にありがとうございました。

22日5:32 朝日岳山頂で、日の出を迎える

5:33 左端・白馬岳、その隣・旭岳 右遠くに立山と剱岳

5:46 朝日の昇る方向に妙高の連山

5:55 吹上のコルへ、大らかな朝日岳の山腹を下る

7:01 まるで空を仰ぐアポロンか  長栂山の手前で

7:06 糸魚川の海岸線

7:09 富山湾の海岸線

7:26 アヤメ平へ下る

9:40 黒岩山 この山から長くてきついアップダウンが始まる

12:01 平らな山が犬ヶ岳 そこまで幾つもの山を越える

13:33 犬ヶ岳山頂直下の栂海山荘とテント場

13:42 栂海山荘とテント場 ここのトイレが語り草

23日4:06 栂海山荘を発つ このスタイルも既に3日目

5:27 黄蓮山 本日もこのようなピークを幾つも越える 

6:09 標高千m近くなると、気持ちのいいブナ林が続く 

6:51 かと思えば、下駒ケ岳へのとんでもない急登

8:42 白鳥山に登り上がると、そこに白鳥小屋 

9:00 屋上展望台から 越えてきた山々 中央奥・白馬 右奥・剱 

14:30 親不知の国道8号脇、栂海新道登山口に下山

14:50 海抜0m、日本海にタッチして栂海新道完全踏破

まことにまことに、お疲れ様でした
   
カシミール3Dによる全コースの断面図 
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