2015.7.27鳳凰三山
  山歩紀行 2016

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります
 
2015.9.21栂海新道へ
 
   2016年7月31・8月1日 仙丈ヶ岳 女王様のご機嫌麗しく
仙丈ヶ岳3032.9m  長野県伊那市・山梨県南アルプス市   

7月31日8:51 小仙丈ヶ岳から甲斐駒 その右奥には金峰山の秩父山地 右端に地蔵岳のオベリスクも

8:57 小仙丈から山頂へ続く一万尺(千丈)の稜線 正面は小仙丈カール 右端奥に木曽駒ケ岳

テント場発5:38-7:39大滝頭-8:14六合目見晴-8:51小仙丈ヶ岳9:10-
10:29仙丈ヶ岳山頂12:46-13:05仙丈小屋13:20-14:03馬の背ヒュッテ-
14:50大滝頭15:00-15:44近道分岐-16:19キャンプ場着


動画をYouTubeにUPしました。
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キャンプ3日目のこの日、天気の神様は最良の日を恵んでくれた。
そのお陰あって、女王様のご機嫌はすこぶる麗しく、小仙丈ヶ岳の頂は雲一つない大展望。

まずは正面に白肌の貴公子・甲斐駒ヶ岳。
前日歩いた道を、谷底のテント場からずっと目で辿ることができた。
仙水峠の大鞍部、駒津峰への長坂、白岩の山頂部、摩利支天への切戸、下山路の双児山尾根道。
これだけ、全ルートを俯瞰できる山は珍しいのではないだろうか。

甲斐駒の右奥に見える青い山並、あれは、前回登った金峰山と秩父の山々。甲武信ヶ岳はその山塊の奥。

さらに右へ目を転じれば、アサヨ峰。
甲斐駒から鳳凰三山へ続く早川尾根の一ピークだと思っていたが、どうしてどうして、さすが三百名山に数えられるだけあって、堂々たる独立峰の風。
そして、去年捩り登ったオベリスクの地蔵岳、そこから続く観音岳、薬師岳の大山塊・鳳凰三山。
さらに右へ、言わずと知れた富士の山。
その右手前、以外にも三角形に尖った北岳。鳳凰からはデンと居座った大きな形が印象的だった北岳、この角度からはまた、別な姿を見せてくれている。
肩ノ小屋が見えた。
北岳を越えると一万尺の日本最高最長稜線の先に間ノ岳。あの峰を歩いてから、早3年になる。
その右、頭だけちょっと見えた農鳥。さらに、塩見、赤石、聖と続く南アルプスの中核部。まだ見ぬ山々。

姿勢を変えて後ろを見れば、これから向かう仙丈ヶ岳の山頂。
氷河が削ったという小仙丈カールの縁を登山道が続く。ここも一万尺の稜線道。
去年歩いた時は、確か、穏やかな天空の散歩道だったように覚えていたのだが、この後、再度歩いてみると、どうしてどうして、アップダウンのきつい道。
人間、苦しいことはすぐ忘れ、心地よいことだけが思い出に残るものらしい。

さて、その天空一万尺の稜線道の右、伊那谷の盆地を眼下に挟んで、中央アルプス。
主峰木曽駒ヶ岳と宝剣岳がよく見えた。
4年前、あの山から、甲斐駒、仙丈、北岳の山並を眺め、いつかきっとと思ったものだが、今、こうしてこっちの側に立っている。
木曽駒の後方に、あの御嶽山があるはずだが、小仙丈からは、まだ山の陰で見えなかった。
去年、仙丈の山頂からはくっきりと見えたのだが、今年は、山頂に着いた頃には、雲が濃く湧いて見えなかった。

小仙丈からの眺望が続く。
中央アルプスの右方、雲の中に乗鞍、昨夏、Okkaaも入って皆で賑やかに歩いた山。
更にその右方、これまた雲中に浮かぶ穂高連峰。
槍ヶ岳は、雲がかかっているようではっきりしないが、連峰の山並が見えた。
槍の穂先に立ったのも、北岳と同じ3年前、大キレットを恐々覗き込んだことが懐かしい。
連峰左端の西穂高の岩峰を辿ったのは、もう5年も前になる。

本格的に高山に登るようになったのは、その頃からだ。
この6年で、ずい分いろいろな山に登った。
それもこれも、みな、その時々に誘ってくれた山の友がいたからだ。
こうして、大晴天の小仙丈からぐるりと眺めまわしても、登った山々はどこか馴染み深く、親しみを感じる。
山と山友に、感謝の気持ちがわいてくる。
そして、まだ見ぬ山々への憧れが一層強くなる。

穂高連峰の先には、後立山があるはずだが、雲で見えない。
ただ、そのずっと右方に雲湧く中で山塊が見えた。多分、妙高連峰かもしれない。
火打・妙高の燃える紅葉を見たのは3年前。
妙高から右の方面は雲に霞んではっきりしないが、美ヶ原、霧ヶ峰の高原らしき風景がかすかに続き、蓼科山と八ヶ岳連峰がくっきりと現れる。
八ヶ岳の岩峰を歩き、ウルップソウにツクモヅサを初めて見たのも、2年前。

360度、ぐるりと見まわしてきて、甲斐駒に戻った。
こうして、登った山々を数えて見回すというのも、実に気分がいい。
そして、まだ見ぬ山々への想いを募らす。

紺碧の空の小仙丈で大展望を満喫した後、仙丈山頂へ。
去年の仙丈は、半日で降って、昼のバスで広河原へ移動したのだったが、今年の仙丈は、夕刻までに降ればいいのだから、時間はたっぷり。
山頂で2時間も過ごした。

実は昨年、花の仙丈と言われるほどには、花がなく、少々がっかりしたのだが、今回来てみて、それはシカの食害のせいだと知った。
それでも、山頂の後方、大仙丈ヶ岳への道に入ってみると、小群落になってはいたが、様々な高山の花があり、花の仙丈の名残を見ることができた。
たっぷりの時間の賜物。
できれば、山は急ぐものではないと、しみじみ思う。

さて今回は、縦走ザックを担いではきたものの、ベースキャンプにそれは置き、甲斐駒も仙丈も、ピストンアタック用10数リットルの軽ザックで往復。
中身は、水に行動食に、雨具に着替え少々だけ。
重装備の縦走を覚悟していながら、意外にも、何とも軽荷の楽ちん登山となってしまった。

思うに、常の日帰り登山でも、この程度の軽荷でいいのかもしれない。
ガスコンロだの、お湯用の水だの、ついつい余分に担いでしまう。

ただ、困ったのは行動食のこと。
普段は、お湯を沸かしてカップラーメンをよく食べるのだが、今回は、元の計画が大縦走ということで、本来の行動食にした。
つまり、休憩ごとに少しずつ何度も口に入れることのできる食糧。
さて、それにふさわしい食材は何か。
この問題には、縦走登山の毎回、頭を悩ます。
今回は、食パンを担いだ。軽くて日持ちがいい。
がしかし、喉の通りが悪い。
キュウリの塩漬けを挟み、マヨネーズを塗ったらどうかと、やってみた。
悪くはないが、1回ぐらいまで、2度3度とは続かない。
実は、今回の食事計画では、朝食も毎回パン食だったのだ。
食パンのほかに、米菓煎餅も持った。塩味がいい。しかし、これも喉の通りがよくない。結局、パンも煎餅も水で胃の中に流し込むことになる。
そのほか、菓子類、スナック類。これも少量はいいのだが、やがて口の中が甘さでねっとりとなる。

今度の時には、食パンをトーストにして持って行こうかと思っている。
問題は、何を挟むか。いっそ、塩でもふってみるか。

ついでに言うと、テント食。
一番喉の通りがいいのは、麺類。
夏場はソーメンが最高。
飯豊の小屋泊では、カレーうどんも格別よかった。
しかし、テント縦走では、ソーメンは重く、せいぜいインスタントラーメン。
あとは、アルファ米。これも喉の通りがイマイチ。
今回、うどん用の粉末カレーを溶いてα米にかけたら、これはいけた。
それに、赤飯のα米も悪くはなかった。

テント縦走の行動食、テント食、まだまだ研究の余地大いにありだ。

7月31日5:21 谷間から仰ぐ仙丈ヶ岳 朝日を受けて女王様のご機嫌は上々

5:48 ドロノキの大木の道を北沢峠へ向かう

苔の中に奇妙な花 ギンリョウソウとはどうも違うと調べたら シャクジョウソウ

これもまた見落とすほどの小さな花 これもようやく調べて、アリドオシラン

トモエシオガマ 見たのはこの場所だけ

マルバダケブキの群落 この花だけはシカの食害を受けないのだとか

シナノオトギリ 珍しく細いシベにまでピントが合った

ソバナ 仙人の食べ物とか シャジンに似ているのは、どちらもキキョウ科

7:37 大滝ノ頭近くで、樹間に北岳の雄姿出現 この角度だとこのトンガリ

8:12 鋸岳を従えた貴公子の御姿 中央奥に八ヶ岳 左端奥は霧ヶ峰か

8:24 六合目で展望を堪能した後、小仙丈へ向かう登山人たち

8:30 真下の谷底がキャンプ地、テントが見える 貴公子に薄雲

8:54 小仙丈からの遠望 左端に乗鞍 右端に穂高連峰

8:56 富士、北岳、間ノ岳 その右にまだ見ぬ南アの山々が続く(下の画像)

左、間ノ岳、農鳥はその陰、右に塩見岳、赤石岳、聖岳など南アの中核部

10:01 稜線から仙丈山頂を見れば、こぼれ落ちるばかりの人混み

足下を見れば、藪沢カールと仙丈小屋、遠くに木曽駒の中央アルプス

10:30 3033m仙丈ヶ岳の山頂に立つ 女王様はすこぶる上機嫌

山頂に咲くチシマギキョウ 女王様の髪飾り

山頂から少しそれれば、花の仙丈の名残がそこかしこに タカネヒゴダイ

ウサギギクに、ミネウスユキソウ  ミネウスにしては白綿毛が濃い

オンタデ 正体はイタドリだと、マサカ‼

ヨツバシオガマ 高山では定番花

イブキジャコウソウ どの山で会っても相変わらずの香しさ

ミヤママンネングサ 田圃にもあると侮るなかれ、ミヤマが付けばまた別格

巨大羊羹を5等分して行動食、それを腹にしてここで2時間 後ろは山頂

眼前に、去年歩いた鳳凰三山 地蔵・観音・薬師の峰

12:47 雲湧く稜線を降る 正面に伊那盆地(伊那谷、伊那平)と中央アルプス

チングルマ 花もいいし穂もいいし 奴さんの毛槍

13:33 下りは早い 正面に藪沢カールと仙丈小屋 左の稜線が歩いた道

藪沢の渡渉地に タカネグンナイフウロ

カイタカラコウ

クロクモソウ

16:12 長い下りの末、北沢峠キャンプ場入口に到着

8月1日6:29 始発のバスを待つ北沢峠に、咲き始めたクリンソウの群落
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