2015.7.27鳳凰三山
  山歩紀行 2016

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります
 
2015.9.21栂海新道へ
 
   2016年8月21・22日 別山 花の稜線から振り返れば白山の偉容
別山 2399.3m  石川県白山市・岐阜県白川村・高山市   

22日 9:21 御舎利山の手前2330m付近から 振り返れば白山の偉容  雲湧く霊峰にただ見入るばかり 

 9:00 花の稜線道 左方2342mのピークを左に巻いて行く 正面に見えるのが御舎利山、別山はその陰

 7:44 油坂の頭を過ぎて広い稜線、この先、大屏風の狭い稜線を通って目の前2276mのピークへ登る 

<1日目>別当出合11:30-12:17中飯場12:35-14:17甚之助小屋14:52-
15:16南龍道分岐-15:58南龍ヶ馬場ロッジ16:08-16:26南龍ケ馬場テント場
<2日目>テント場6:07-6:37赤谷沢渡渉-7:16油坂の頭7:26-9:34御舎利山分岐
-9:54別山山頂10:15-10:30御舎利山11:00-12:21チブリ小屋12:37-16:27市ノ瀬

ここに載せきれなかった画像、特に高山の花々など多数、YouTubeにUPしてあります。
→こちらから
どうぞご覧ください。



あの白山に対面して別山あり

南龍ヶ馬場にテント泊して白山山頂に登った、2年前のこと。

あのとき、エコーライン(登山道の一つ)の途中から、対面する別山の長い峰がよく見えて、次に機会があったら、あの峰を歩いてみたいと思ったものだ。
登った白山は、変化に富んだ大きな山だった。
もし、対面する別山からこちらを見られれば、大白山の全容がより確かに分かるのではないか。
そんなふうに思ったものだ。

前回の甲斐駒と仙丈で、谷を挟む二つの山に登り、対面する山から互いを見ると、それぞれの全容がより確かに見て取れた。
だから、機会があったらぜひ別山にと思っていた。


例によっての天気探し

今回の年度当初予定は、北穂・奥穂・前穂。
しかし、前回見送った、裏銀座の縦走を実現したい。
Unqさんは4日分の食糧をどっさり購入して配ってくれた。しかも、1食ごとに仕分けして袋に詰めて。
気合を入れて準備したが、またまた天気予報が芳しくない。それに、メンバーのスケジュールに少々不都合も生じた。
それで、急遽、21日・22日の二日間で行ける範囲で、予報を探りまくることになった。
22日が全国的によくない。ただ、富山と石川だけ、◎と出た。
立山か薬師か、それとも別山か。

出発の日の朝、例によって、車中でスマホ検索。
最近、Unqさんがスマホ経に帰依したのだが、それがどうしたわけか、すっかり私の手に馴染んで、車中の天気予報探索では欠かせない、助手席のアイテムとなっている。
22日の富山は×に悪化していた。
そんな中、石川だけは変わらず◎。

ならば、念願の別山だ。
帰りのことも考えず、6時間の長駆をものともせず、Unq車は一路、登山口の市ノ瀬へ。

とまあ、こんなふうに書くと、いつも行き当たりばったりの無計画登山のように聞こえるかも知れない。
が、もちろん、我らがリーダーにそんな心配は無用。
いつも無数の引き出しがあって、その中には、各山のコース、タイム、難易度が仕舞い込まれている。
スマホ予報に従い、最適の引き出しを開ける。
無計画どころか、最も無難な極安全策なのだ。


三度目の砂防新道
  二度目の南龍ヶ馬場


市ノ瀬からバスで別当出合。
そこから砂防新道。この道は、これで3度目。
最初は2011年の単独行。次が、2年前の2014年、山岳会3人行。
3度目ともなれば慣れた道。
とは言え、今回は、少々夜風邪を引いていて体調は不全。
鼻水を垂らし、喉を引き攣らせながら、どうにか南龍ヶ馬場に到着。
2年前の幕営地、やはり懐かしい。
あの時、この広大な野営場はテント族で満杯だった。が、この日は数張でガラガラ。
静かな野営地で早々に寝袋入り。

ただ、時々、くしゃみやら咳き込みやらで、同行の皆さんには迷惑を及ぼしてしまったに違いない。
もっとも、少し離れた隣に張られた若い子たちの大型テントから闇夜に響いた高イビキほどではなかったと思っているのだが。


2日目
テントを畳んで別山へ向かう


私の体調を気遣って、Youmyさんが、私の担ぐべきフライヤーを黙って自分のザックに詰め込んでいた。
さりげなく、夜露を受けて昨日より重くなっているから最若手の自分が、と言う。
頭を垂れて、厚意に甘んじた。
2日目のコースは、急登、アップダウンの稜線行。正直本当に助かった。

いつも、テント泊の大荷を背負って縦走などと自慢げにしているが、ナニ、実は、こうやって若い衆の温かい心づかいがあってのことなのだ。
いつも、いつも、ありがたいことだ。
素直な気持ちで感謝しなければならないことなのだ。
ただ、小声で打ち明ければ、少々弱気の虫も出る。
これが、もし齢を気遣ってのことならば、若い衆とのテント泊はそろそろリタイアすべきかもなどと。
Okkaaがこれを聞けば、今頃分かったの?若い人に迷惑かけているのだから、即刻止めなさい。などとのたまうこと間違いないのだ。
だから、以上のことは、あくまでも小声小声。

ま、それはさておきだ。
2日目の別山行は、絶景の連続。
素晴らしい山歩となった。
以下、絶景の数々。

その1
ケビン裏の湿原から見上げた白山

別山への登山道は、野営場のケビン群の裏手を通る。そこは、意外にも大湿原。

火山が成因の白山とは、とても思えない。緑に覆われた柔らかな白山が横たわっている。
しかも、東真横からの朝日を受けて、彫深く陰影を鮮やかにして。
なんとも、立ち去り難い。
湿原の花の盛りの時期なら、おそらく、そこから動くことはできなかっただろう。

その2
油坂から見る南龍ヶ馬場と白山

湿原の先へ進むと、道は、赤谷の沢筋へ標高差80mほど降下。
谷底の沢を渡渉して、油坂の急尾根に登りつく。
ジグザクの急坂を登り標高を上げて行くにつれて、足下に野営場が広がり、目を上げれば、白山の山頂部が見えてくる。

最底辺に、野営場のケビン。
中間に、なだらかで大きな白山の山腹。
その上部に、少し傾斜して広がる広大な平地、室堂の赤い屋根。
最上部には、広い平地の上にちょこんと乗っかった山頂部の赤い岩肌。御前峰の石堂まで見えた。
その最上部を雲が流れる。
何とも動的な景色。構図。
油坂のつらさなど、たちどころに消えてしまった。

その3
油坂の頭から続く長い稜線

そこは、池塘あり、花園あり、足すくむ断崖あり、雲湧き下界は雲海

油坂の頭から別山山頂まで、約2.5㎞ほどの長さの稜線が続く。
天空二千メートル超の雲上山歩道。
所により、広い台地のような稜線あり。窪地には池塘が散らばり、とりどりの花が涼風にそよぐ、別天地。
かと思えば、大屏風と呼ばれる切れ落ちた断崖の道もあり。
恐々通る崩壊ザレ場のヘリに、タカネマツムシソウ。
思いのほかに変化に富んだ稜線の道、飽きることがない。
そして、下界は雲。
足の下を孫悟空の雲が流れ、遠く金沢・福井は雲の大海。
いやはや、天空の別世界に遊ぶ思い。

その4
天空の稜線から眺めた白山の偉容

稜線の道は、アップダウンを繰り返しながら、徐々に高度を上げていく。
ときどき、歩みを止めて振り返る。
歩いた稜線の道、その先に、白山。
高度2300mを超えれば、白山南面の全容が顕わになる。

ズームで見れば、過去2回のルートが手に取るように見える。
1回目の、甚之助小屋から、黒ボコ岩の道。弥陀ヶ原、室堂。
あの時は、2日目が大雨で、山頂に登らず一人びしょ濡れで同じ道を下ったのだった。
2回目の、エコーラインの道もくっきり見える。弥陀ヶ原にテント荷を置いて、室堂、御前峰へ。そこの、クロユリの大群には驚かされた。
お池めぐりのあと、弥陀ヶ原に戻ってテント荷を背負い直し、観光新道へ。長い長い下山路は、登りの砂防新道と違って、花の豊富な道だった。

などと、一つ一つを思い出しながら、白山の偉容。見飽きることがない。
下から雲が湧いていく。おおらかで厳かで、すべからく山はかくありたいと思わせる、見事な山容だ。

その5
別山からの眺望

別山山頂につく頃には、白山にも周囲にも、かなり雲が湧きだしていた。
その雲の中をよく見れば、雲海に浮かぶ長いシルエットは、穂高連峰。その右方に山続きの乗鞍。
さらにその右、少し離れて独立するのは、あの御嶽山。激動は収まり、山頂部を除いて規制は解除されつつあるという。それでも、まだ灰の中に眠る人々がいる。思わず合掌。

山頂の真下には、南へ下る尾根一筋。三ノ峰、二ノ峰、一ノ峰と続く南縦走路。
ここは、古の美濃禅定道。白山信仰の由緒ある道。
三ノ峰の上に小屋が見えた。

別山のすぐ隣に御舎利山。
そこから急降下するチブリ尾根。
チブリとは、本来は千振と書いたらしい。
チブリの小屋の赤い屋根が小さくポツンと見える。
チブリ尾根と柳谷を挟んだ向こう側が、別当出合からの白山の道。
向こうは火山が成り立ち。
こちらは、堆積隆起が成り立ち。
全く性格の異なる山が、谷を挟んで並び立っているのも面白い。
だから、白山の上部は荒々しい岩が目立ち、別山の峰は、どこか嫋やか。
それだからか、チブリ尾根の下山路には、二枚貝や巻貝の化石らしい石がゴロゴロしていた。

その6
下山路で出逢った水場とカツラの大木

チブリ尾根の水場は、標高1250m位まで下山しなければ、ない。
テント場から担いだ水は、900mlのエバニュー2本。
ちょうど、その水場までで飲み干した。
だが、その水場の水が最悪。チョロチョロで薄濁り水。
背に腹は代えられずで、そんな水を200ml ほど、やっと汲んだ。
これであと1時間半、我慢して降るしかない。
ただ、地図では、そこからおよそ高度で80mほど下った所にもう1ヵ所水場があることになっている。
探し探し下った。
道の脇のそれらしき流れは皆細く弱く、濁っている。
100mほど降って、これはもう諦めるしかないと思っていた矢先、なんと、滾々と音を立てて流れる水が、突然現れたから、皆ビックリ仰天。
大木の根元の岩の間から、水が湧きだし流れていた。
その水の冷たくて美味いこと。
これを手取川の源流水と言わずしてなんと言おう。
助かった‼とばかり、さっきの濁り水は捨てて、900mlの2本を満タンにした。
帰宅してから、持ち帰った1本分で例によってコーヒーを沸かしたが、惜しいことながら、信濃川の源流水ほどの味は出なかった。
本流の本家本元源流水と、支流のそのまた支沢の湧水との、格の違いとあれば、これまたやむをえまい。

それはともかく、現地では、その湧水のお陰で元気百倍。
水場から150mほど降ると、これまた突然、道を塞ぐばかりの巨大なカツラの木に出逢った。
株立の老大木。
里にあれば、天然記念物間違いなしの代物。
だが、それらしき表示は全くない。

下山して、市ノ瀬の白山温泉で入浴して、湯上りに涼んでいたら、一枚の張り紙が目についた。
カツラの大木番付。
なんと、石川県白峰村の大カツラが、東張出横綱の位置に大書してあった。
さっき見てきた、あの大カツラだ。

地中から湧き出す尽きぬ水、地から這い上がり天覆う巨木。
これら下山路の絶景で、別山行の感激を締めくくることにしよう。

別山、印象に残るいい山でした。

それにしても、それにしても。
帰宅は日付の代わる頃。
特別効果(高価)のメガシャキを頼りに、長駆、ハンドルを握り続けたUnqさんに感謝です。

下山して翌日、早速診療所へ。
看護師さん「あら、いつもそんなガラ声でした?」
私「いやいや、いつもはとってもいい声ですよ!?」
先生「どれどれ、あっひどい、喉が真っ赤‼」
処方の薬を飲んだら、3日後にはほぼ全快。ランニングも再開しました。
同行の皆さん、大変ご心配をかけました。ありがとうございました。

21日11:33 テント泊荷でパンパンのザックを担ぎ別当出合の吊り橋を渡る

アキギリ 我が家の山林にキバナはあるが、この色はない

12:17 中飯場 白山は大賑わい それに引替え翌日の別山は静かな山だった

フジアザミ 日本最大級のアザミとか

シロバナオヤマリンドウ  オヤマリンドウの白花種

15:41 南龍ヶ馬場野営場 広い広いテント場 右端にケビン数棟

上の画像の右に続く  中央に明日登りつく油坂の頭と直登の道が見える

22日4:49 山の朝は早い 月明りのテント場で朝食

6:01 山の端に朝日が出る頃、すでにテントは撤収して出立

6:20 ケビン裏の湿原から朝の白山 山頂の御前峰までよく見えた

6:23 これから登る油坂の頭 一旦谷底まで降りて左の尾根を登り上る

7:02 油坂の頭まであと少し、振り返ると雲走る白山山頂、その真下にケビン

オオヒョウタンボク  瑞々しい朱色が目を引いた

7:43 油坂の頭を過ぎて稜線に出れば、この景色

正面右が御舎利山 目的地の別山はその陰

7:49 大屏風の尾根 切れ落ちた稜線のガレを慎重に渡る

ほっと目を和ますのは崖っぷちに咲く タカネマツムシソウ

8:02 危険地帯を抜けて、来た道を振り返ると白山の雄姿、御前峰、室堂

8:58 稜線は花の園 撮影の手が止まらない

9:10 雲に浮かぶあの姿は、右・御嶽山と左・乗鞍岳では

9:12 ようやく別山が見えた 正面御舎利山、その左奥が別山

オヤマリンドウのはずだが、花びらの先っちょだけ開いていて??

9:53 別山の山頂 「べつざん」とも「べっさん」とも 白山別山が正式名称とも

山頂に続く左稜線は三ノ峰・古来の美濃禅定道、信仰の道

あれは大キレットでは 穂高連峰 今回当初予定の奥穂・北穂が呼んでいる

11:02 御舎利山からチブリ小屋へ標高差約500mを一気に急降下

15;17 標高1150m付近、大木の根元から滾々と湧き出す水、助かった‼

15:29 標高1100m付近 圧倒されるほどのカツラの大木

16:26 前日満車だった駐車場、下山して見れば我らの貸し切り
    ― ページのTOPへ ―