綿野舞(watanobu)の山歩紀行2016
 11月20日 迦葉山(かしょうざん) 1322.4m 群馬県沼田市  

迦葉山々頂から晩秋の北関東展望
 正面に低く、三角のトンガリは戸神山 その右前方、なだらかに山裾を流すのは子持山
 子持山の遥か先、微かに両神や雲取などの奥秩父の連山か
 その青い連山の山の端に、よく目を凝らすと富士山の白い頭が光っていた
 子持山の右は榛名山で、画面左端、木立の陰になっているのが赤城山

岩峰・和尚台の割れ目に攀じ入る胎内潜り
 前回の戸隠山に引き続いての岩壁クサリ登り  戸隠山の怖さを思えば、この程度は何のその
 とは言え、油断は禁物  足がかりを確かめながら、慎重に慎重に
 登山の教則本には、こんな場合、クサリには全力をかけず頼り切らずにとあるのだが
 どうしてどうして、そんなことは言っていられない クサリこそが命綱
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群馬の山は隣の芝生

11月の新潟県は、時雨れて曇天の日が多い。
この日も、全国的には晴れなのに、なぜか新潟県だけ雨マーク。
こんなときは、迷わず、秋晴れの関東へ。
温かい陽光の下、乾いた落ち葉を踏み分けて歩く群馬の山。
この時ばかりは、まさに「隣の芝生」。

迦葉山は、天狗で名高い。
登山口のある弥勒寺は、天狗に縁があるとかで日本一の大天狗の面が飾ってある。
開山は、延暦寺の慈覚大師。
我が関川村の名峰・光兎山の開山と同じ人物。
この御方、全国各地の山を開いたことになっている。
多分、現代の平たい言い方をすれば名義貸しだろうとは、以前、どこかの山の山歩紀行で書いたような気がする。


 
クサリを攀じり胎内往復

それはともかく、光兎山もそうだが、山岳信仰の修験場だけにそう簡単な山ではない。
とりわけ、和尚台という名の岩峰の胎内潜りときたら、そんじょそこらの胎内巡りとはわけが違う。

何しろ、胎内の入り口の穴に辿り着くまでが、一苦労。
長いクサリを伝って、垂直の岩壁を攀じ登る。
穴の入り口で、また一苦労。
人一人がやっとの岩穴を、これまたクサリを頼りに這い上る。

こんな難所を誰もが通れるわけがないから、もちろん、和尚台の岩峰の下を巻いて安全な道が通っている。
ガイドブックには、胎内を潜った先は、その巻道と合流すると書いてあった。
それで、ザックを背負って胎内に侵入したのだが、岩穴は、ザックが引っかかって進めないほどの狭さ。
何とか穴を抜け出して反対側の岩場に出てみれば、そこはまたクサリ場の岩登り。
そして、絶景。

さて、巻道への合流箇所を探すのだが、どうにも見つからない。
一ヶ所だけ、ロープが垂らしてあって、そこから岩場を下れば巻道と合流できそうなのだが、何しろ、そのロープときたら、色あせて、いつの物やら信頼感がまるで持てない代物。
仕方なく、来た道を戻ることになって、結局は、胎内を往復してしまった。
一度潜って生まれ変わり、もう一度潜ったら、さてさてどうなるのだ?


 
野点ならぬ山点で一服

久しぶりに、お茶の師匠が同行した。
野外で茶を点てればすべて野点なのかもしれないが、折角の山頂の一服、あえて、山点(やまだて)と言いたい。
師匠、登山用に軽いお茶碗を用意して、高級抹茶と一式背負ってきた。
手際よく茶筅を振るって、
「どうぞ、一服召し上がれ」
「結構なお手前で」
などと、実に美味。
群馬の山の乾いた落ち葉の上で、何とも優雅なひととき。
無風、陽射し温かくブナの幹を照らす山上の茶席。

一服の後、ブナ美林の散策。
山頂の先、白樺湿原までのなだらかに起伏した尾根道には、嫋やかに伸びたブナの林。
もちろん、ブナの美林は我が越後の山こそ本場なのだが、この時季の乾いた林は、好ましさ一入。
それに、関東の山の木は、いじけがなくてどこか素直に感じる。
多分これは、この時季だけの雪国人のひが目なのだろう。
なぜと言えば、春になって潤いに満ちた越後の山を見れば、群馬の山など、もう隣の芝生でもなんでもなくなるのだから。

それにしてもだ。
帰途に着いて、関越道の国境トンネルを出たとたんの変わりようときたら。
関東の青空は一転、越後は雨雲に被われた暗黒の世界。
う~ん、この時季だけは、越後は辛い。

  
後日談

今日(11月24日)、TVが騒いでいる。
なんでも、54年ぶりに、11月の都心に初雪が降ったのだそうだ。
大人は大慌てだが、関東の子どもは喜んでいるだろうか。
ま、たまには、こんなこともあろうさ。

54年前といえば、あの三八豪雪。
と言っても、覚えている人は国民の極少数派。
季節外れの初雪の反動が、どうか、裏日本に来ませぬように。
クワバラクワバラ


弥勒寺境内 発8:50-9:30和尚台・胎内潜り10:10-10:43迦葉山々頂12:00-12:30白樺湿原-13:05山頂-13:33和尚台-13:51弥勒寺に下山

8:17 弥勒寺への車道から
岩の鋭峰が和尚台、その左に迦葉山の山頂

9:28 見上げるばかりの巨岩・和尚台

胎内潜りは、割れ目に沿ってクサリを攀じ登り
中腹の穴に潜り込む

胎内入口、人一人がやっとの隙間

穴の中もクサリを頼りに這い上がる
腕力だけが頼り

9:45 胎内を抜け出したその先は
岩峰の上へクサリ場が続く

9:49 胎内を抜けて、岩上からの絶景
正面に赤城山 右下に戸神山

10:00 胎内からの脱出 腕力頼りの垂直岩壁

10:49 迦葉山の山頂で 登頂記念撮影

山頂から、ズームで富士の白峰  一番手前が子持山

長閑な山頂の一服
山で点てる茶席だから山点(やまだて)

12:20 山頂から白樺湿原へ続く尾根のブナ林
なかなかの美林

12:30 白樺湿原とは名ばかりか
目立ったのはブナにヤドリギ 

12:40 温かく午後の陽射し込むブナ美林
      
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