2015.7.27鳳凰三山
  山歩紀行 2016

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります
 
2015.9.21栂海新道へ
 
   2016年4月9日 いばらやぶ漕いで登ってあの峰へ 湯蔵山
  元光兎 717m  湯蔵山 726.4m  新潟県関川村      

湯蔵山から戻って元光兎の山頂で憩いのひととき 女川の谷を挟んで正面に光兎山と頭巾山

後日撮影 国道113号切手橋から眺めた峰 三角点山 元光兎 湯蔵山

松平登山口発5:50-8:50三角点山-10:15元光兎10:30-11:10湯蔵山11:30-12:15元光兎13:50-15:05三角点山-18:00登山口着

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全編苦し紛れの七五調にしてみました。ぜひどうぞ!


我家の辺りから、荒川の対岸に湯蔵川の谷が見えて、その谷の奥に極変哲もない形だが、山が一つ見えている。
小さい頃から見てきた風景で、何となくだが、あの山の頂きに立ったらどんな景色が見えるのだろうと思ったり、あんな谷奥の遠い山まで、どうやったら行けるのだろうなどと、漠然と思って来た。
ある程度の年になってからだと思うが、いつの頃からか、その谷奥に見える山が湯蔵山だと思い込んできた。

その山が、実は湯蔵山ではなく元光兎という名の山だと知ったのは、山に登り始めたここ10年内のことだ。
実際の湯蔵山は、元光兎の右にあって、我家の辺りからは前の山に隠れて見えないのだった。が、国道113号関川バイパスのコメリの辺りから見れば、湯蔵川の谷奥に実に堂々と居座っている山が湯蔵山だということも、分かってきてはいた。
それに、昨春、光兎山に登った折、たまたま山頂で出会った関川村の村長さんから、対岸の湯蔵、元光兎、三角点の山並みを地図と照合しながら教えてもらう機会があって、それで山名と現地と地図が頭の中で確実に一致したのだった。


ところで、阿賀北山岳会では、毎年の登山計画を立てる際、一人一ヶ所だけ希望の山を取り上げてもらえることになっている。
そこで、湯蔵山を希望したい気もあるにはあるのだが、しかし、それで持ち札の一票を使ってしまうことになるのが、少々もったいない。穂高、後立山、南アルプス・・・と、行きたい山は山ほどある。
こんな近くの湯蔵山で、貴重な一票を使い切るのは、何ともいたましい。と思っていたら、なんと、Kazuさんが湯蔵山を希望してくれた。以前、会で湯蔵を目指したが、元光兎でタイムアウト、撤退したのだとか。だから、今回、リベンジしたいのだと言う。
僥倖にも、そんなこんなで、
幼時から見上げた峰の頂へ
ということになったのだった。

先月、下見を兼ねて途中の三角点山まで往復した。
そのときは雪の冬道だったが、今回はもう雪はなく、夏道を探して辿った。
ところが、どうも夏道の跡が薄い。微かな痕跡もやがて藪の中に完全に消えてしまった。
方向は前回歩いて分かっているので、ヤブを漕いでしゃにむに進んだのだが、サルトリイバラとタラノキの棘が凄まじく、やむなく夏道を辿るのは諦め、斜面に登りついて尾根の上の冬道に出ることにした。

その斜面でKeynさんがストックを1本落とし、皆で探したが見つからず、帰りにまた探すことにして先を急いだ。
尾根の冬道もヤブ漕ぎだが、棘や荊がない分、多少は歩きやすい。
暫く冬道を進むと、突然、刈り払われた上等の夏道に合流した。
あの荊藪の中に消えた夏道が、どこでこんな立派な道に復活したのか。
その謎は、下りに夏道を辿って暴くことにして、ここはまた、先を急ぐことにした。

で、話は、下山のときのストック探しのことになる。
登りで夏道と合流した地点から、冬道を辿り戻ってストックを探すか。しかし、それだと突然現れた整備道を辿ることができず、謎を暴くことはできなくなる。
そこで、整備道を辿って下り、ストックを落とした辺りで一旦藪に入り、斜面を下から登り直して探すことにした。斜面の物探しは、上からよりも下から見上げた方が探しやすい。
ということで、整備された夏道を下り、途中、この辺りで斜面を登ったのだがと思われる箇所で、藪に漕ぎ入ったのだった。
結果、落としたストックは、斜面の途中で見事、Unqさんが見つけて無事回収できた。
何しろ、尋常な登山道での出来事ではない。ヤブを散々漕ぎ回っての雑木の生い茂った斜面でのことだ。奇跡的としか言いようのない感じだった。
Unqさんの動物的勘と小生のGPSが相まっての為せる技だと思っている。いやいや、Keynさんの人徳の為せる技なのかもしれない。
何せ、落としたことにさえ気づいていなかった手鏡まで、同じ藪の下で見つかり、持ち主の手に戻ったのだから。人徳は一挙両得を生んだのだった。
ストック探しの現場は、ルート図の標高100m辺り、軌跡が入り乱れている箇所になる。

得した話が、もう一つある。
まったく偶然なのだが、ストックを探すために荷を置いた辺りで、Unqさんが、整備された道が実は林道に繋がっていて、そこには、三角点山登山道を示す案内看板が立っていることを発見した。
結果的に判明したことは、我らがヤブ漕ぎで辿った夏道は既に廃道となっていたのであって、そこよりずっと上の林道の終点近くから、刈り払われた上等の登山道が始まっていたのだということ。
ただし、そのことを知っているのは一部の人たちのようで、我等の持っている登山地図には、まだ、廃道となった夏道が記されている。それに、地理院の2万5千分地図でも、林道はそこまで延びてはいないし、登山道は廃道のそれが記されてある。
ルート図で、下りの軌跡が北方へ迂回して遠回りしているのは、看板の地点から林道を歩いたことを示している。
以上のことは、よくよく考えれば、得したことになるのかどうか、多少疑問でもあるが、とりあえず今後登る人のために記した。


さて、話は、三角点山から先のことに戻る。
三角点山から先は、昔の登山道らしい痕跡が多少あったようだが、整備はされてないらしい。
だから、今回は残雪期を選んだ。
念のため簡易アイゼンとワカンを背負ったが、登り下りともまったく必要なく、固くしまった雪上歩きは快適だった。

元光兎の山頂からの展望は最高だった。
女川の谷を挟んで光兎山と頭巾山が並んでいる。この二つの山を真横から間近に見るのは、もちろん初めてだ。
これまで、光兎山は独立峰だとばかり思ってきたが、実は二つの山は連山だった。
となれば、いずれ、なんとしても頭巾山に登ってみたいと思う。
UnqさんとKazuさんは、ずっと以前、頭巾に登ろうとして途中でリタイアしていると言う。
ならばと、来年のKazuさんの持ち札一票、頭巾にしてほしいとお願いし、特製の山頂アイスシャーベットを差し上げた。おっと、これは選挙違反かもしれない。

元光兎から湯蔵山へは、大きな鞍部が切れ落ちている。
村発行の山岳渓流地図には、この鞍部に「四ツ坂」と記されている。
ここは、古の山越え出羽街道の通った所、多分だが「四ツ坂越え」などと呼ばれていたのではないだろうか。
今は亡き前会長横山征平さんに生前聞いたのだが、湯蔵山にはその昔の茶屋の跡が残っているとか。四ツ坂越えの旅人には欠かせない茶屋だったに違いない。
湯蔵山の山頂は積雪で、地表に残る痕跡を探しようもなかったし、以前、Unqさんが担ぎ上げたという山頂表示板すら見当たらなかった。
ただ、山頂から女川の谷の上流部を眺め、この先遥か、羽越国境の蕨峠につづく山街道が、峰へ沢へと縫うように続いていた時代を想像するばかりだった。

この出羽街道の始点は、麓の関川村小和田集落。そこには、江戸時代、街道監視の番所が置かれたという。
今から7年前のことになるが、小和田集落から古の街道を辿り三角点山へ登ったことがある。
その翌年は、この街道の終点、山形県の小国町舟渡から県境の蕨峠付近まで歩いた。
そして、今回、三角点山から湯蔵山までの古道を辿った。
だから、旧出羽古道の残すところは湯蔵山から蕨峠までの山岳部ということになる。果たしてそこを歩く機会があるかどうか。頭巾山に登るよりも難度は高いだろう。

せめて、今回、湯蔵山から蕨峠方向の山と谷を眺め、往時を偲んで帰途に着いた。

標高500m付近から上は残雪、そこから下は、早春の芽吹き、山の花、実に快適な山歩の季節を堪能した一日だった。それに、元光兎山頂の眺望を楽しみながらの饗宴、まことに贅沢なお座敷だった。

頂きに憩う人々天空人

夏道が消え、サルトリイバラとタラノキの藪をかき分け難行苦行

顔を引っ掻かれたイバラの藪で、ユキツバキ

冬道の藪で難渋した後、ようやく夏道が現れてイワウチワを眺めて歩く

元光兎の山頂から見ると、光兎山と頭巾山は繋がった連山に見える

元光兎から120mほど下る四つ坂という名の難儀な鞍部 湯蔵川の源流部

最低鞍部から120m登り返すと湯蔵山の頂がある

湯蔵山の山頂部は広くなだらかな稜線が続く 気持ちのよいブナの森

本日の目的地、湯蔵山々頂 木立で眺望はあまりよくない それに寒風

湯蔵山々頂から女川の源流部を見る 正面の辺りが蕨峠のはず

早々に元光兎へ引き返し、眺望日溜りの山頂でいつもの如く饗宴の庭

登りの背の荷をお腹に詰め替えて元光兎を下る ここはどうやら二重山稜

三角点山の山頂から歩いてきた湯蔵・元光兎の稜線を振返ると感慨一入

我家から見えるということは我家が見えるということ 当り前だがなぜか嬉しい

前回Junjyさん命名のダイオウイカの木 「え?」と本人覚えてないふう

なんともやわらかいヤマモミジの芽吹き 今だけの風情

この時期の里山を彩るのはイワウチワ 白花もいいし薄紅の花もいい

朝よりも山肌の緑が増えていた あそこまで歩いたことに只々感歎
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