綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
 
 5月4~6日 ひとすじの 雪道辿り 大朝日
大朝日岳1870.7m  山形県西川町 朝日町 大江町  地理院地図は→こちら
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連休を待って今季初の連泊登山。前回の飯豊連峰頼母木山の対面で手招きしていた朝日連峰の主峰・大朝日岳を目指した2泊3日の山旅です。
第1日目(5月4日)古寺鉱泉登山口から鳥原山を経て鳥原小屋泊
第2日目(5月5日)鳥原小屋に泊荷を置いて、小朝日岳経由で大朝日岳へピストン(往復)、鳥原小屋に戻り泊
第3日目(5月6日)鳥原小屋から古寺鉱泉登山口へ下山

6年ぶりに立った大朝日山頂、そこは360度の大展望。しかも残雪のこの時期、絶景というほかなしの眺望でした。
4月30日の頼母木山と合わせ、まさに、「昨日は飯豊、今日また朝日」の感。ゴールドな連休になりました。
渡辺伸栄watanobu 
1日目(5月4日)14:47 鳥原山から小朝日と大朝日を仰ぐ。雄大な光景に感動。とともに、この荷を背負いあの山坂を越える不安、複雑な心境。

登山口発9:14、停滞予備日を入れて3泊4日分の完全冬装備、その重荷を背負って一歩一歩ゆっくり5時間かけてここまで来た。この後、鳥原山先の展望台まで進み戻って鳥原小屋へ着いたのが15:25。だから、夏道コースタイムの倍、6時間かけたことになる。
当初の計画では、2日目は大朝日小屋泊。西朝日岳まで足を延ばす計画だった。しかし、この重荷ではコースタイムの倍だと8時間。軽荷にすれば鳥原から往復できる時間。それに、3日目の天気予報は良くない。大朝日小屋泊をやめて鳥原小屋からのピストンに変更すれば、3日目は荒れた山頂稜線にいなくて済むし、荒れる前に下山できる。
夜中に深慮遠謀したUnqさんの好判断だった。
2日目(5月5日)7:59 小朝日岳山頂に立って大朝日岳を仰ぎ見るの図
大朝日の象徴Y字雪渓もまだ現れない真っ白な山体。右に中岳、西朝日岳を従えた雄大な山容に見入るばかり。
振り返れば、ルート中ずっと背にしてきた月山。よくよく目を凝らすと月山の左遠方に鳥海山。この後は空が霞んで、鳥海が見えたのはこのときだけ。幸運の一枚。
光兎山をバックに、大朝日岳山頂に立つの図

5:50に鳥原小屋を出、5時間かけて10:52大朝日岳山頂に立った。山頂稜線の向こう側には、鷲ヶ巣山と光兎山が並んで見えた。山形県を月山の側からぐるっと回って来たのだが、山頂に上がってみれば我が故郷が目の前に。鷲ヶ巣と光兎の間の低くなった谷間からは関川村が見えるはず。この日、村上からも朝日連峰がよく見えたとOkkaaが言っていた。
スマホでパノラマ撮影。上は南方向、飯豊、吾妻、蔵王の連峰が遠くに霞んでいる。下は、北方向、葉山(寒河江)、月山と朝日連峰の峰々。
遠く光兎山と頭巾山、その右に鷲ヶ巣山。その中間の谷間越しに関川村の朴坂からは、今立っている大朝日が見える。だから、こちらからも見えるはずと目を凝らすが、霞んで見えない。空気が澄めば、遠く日本海も見えたはず。
特徴的な形の祝瓶山、その先に飯豊連峰。あの峰の中央より少し右方に前月30日に上がった頼母木山がある。あの時は、こちらの朝日連峰はくっきりと見えていて近く感じたのだが、今日の対面は霞んでいてやや遠い。中3日おいて両連峰の主稜に立てた。やはり、あのとき手招きしていたのだ。
すぐ目の前に小朝日岳。大朝日と小朝日の間の尾根は、深い鞍部で切れ落ちている。帰路、あの大鞍部を登り返すかと思うと、ちと辛い。
小朝日の先の尾根続きにあるのが鳥原山。小屋は山の陰にある。遠くに山形盆地と奥羽山脈の山々。左に白く寒河江葉山。あの盆地で来月、東根マラソン大会がある。サクランボの名産地。
大会に備えて走り込んでいるからこそ、UnqさんとYoumyさんについて大朝日まで来れた。だから、山とマラソンはセットだ。そのYoumyさん、下山した翌日には20㎞も走り込んだというからただ者ではない。
山頂直下にあるのが中ツル尾根。朝日鉱泉からの直登ルートで、ここの急坂を6年前の夏、Haseさん、Mikiさんと登った。喘ぎ喘ぎ山頂下の緩斜面にようやく登り上がったとき、突然たくさんの花々が現れて感動したのだった。あのとき、山頂はすでに夕刻で展望は効かなかったが、翌朝の山頂からの日の出は大感動だった。あれから6年、いつかまたと思ってはいたが、ついに再びこの山頂に立てた。連れてきてもらったUnqさんとYoumyさんのお陰だ。
大展望を満喫した後の楽しみは、天然かき氷。このために練乳と氷みつをザックに入れてきた。どうやら、前回の三匹穴で味を占めてしまったようで、残雪期登山の定番になりそうだ。
12:04下山にかかる。いつもそうだが、後ろ髪引かれるとき。が、下らない登山はない。鳥原小屋へ引き返すにはもうタイムリミット。
目の前には大朝日から以東岳へ続く縦走の主稜線。以東岳は日本海側から見ると三角錐の秀麗な山容なのだが、実際は、台形状のデンとした山で、まるで別の山に見えるから不思議だ。
あの以東岳に登ったのは、大朝日の翌年だから5年前。中間の主稜は歩いていない。いつかまた、この主稜線を歩いてみたい。Unqさんに聞こえるように大きな声で唱えた。念ずれば通ず。
 
銀玉水の小鞍部から大朝日小屋の稜線につながる斜面。朝の登りはトレースを辿ってキックステップ、一歩一歩息を切らせて登った道。そこを下りは一気に降りる。なんとももったいない気がしてならないが、そう言ってはいられないのが現実。
朝のことだ。この道を登っていて、どうしたわけか突然「♪君の心へ続く長い一本道♪」と歌が湧いてきて、Unqさんもそれに合わせてくれて、二人で鼻歌で口ずさみながら登った。実を言うと、最初に歌った私のは歌詞が少々違っていたらしい。それに、この歌はチューリップの青春の影だということもUnqさんに教えてもらうまで、分からなかった。なのに、見上げたこの坂の景色で突然湧いてきたのだから、不思議と言えば不思議だ。
 
3日目(5月6日)7:23 二晩お世話になった鳥原小屋を後にした。床のフローリングもピカピカ、トイレもきれいで快適な小屋だった。初日の晩は、大朝日小屋は満員状態だったと聞いたが、この小屋は誰も来ず管理人も不在。9000円で2晩大型バンガローを借り切ったような状態。多分、多くは時間短縮の古寺山コースを選び、ここはメーンルートから外れているのかもしれない。
私はそう思うのだが、二人は別な説を立てる。夜中に、妙な音を聞いたというのだ。食器の鳴るような、ネズミがものをかじるような。それが原因で敬遠されるのかもと。私はいつも白河夜船。
布団一枚に二人寝た西穂高の山荘を思えば、混雑を避けられるのなら理由は何だっていい。
それに、せっかくの山入り、できるだけ長く居られるに越したことはないし、山はゆっくりに限る。
 
この時期のダケカンバは、ことのほか幹の色を輝かせるようだ。西俣ノ峰でも肌色に輝くダケカンバを見たが、ここ鳥原山を下った畑場峰近くの二本のダケカンバの肌の色はまた格別だった。山も木も草も花も、その時々に変化して、見る者の心を揺り動かす。長い一本道の歌が湧き出たのも多分そのせいだ。
 
冬から春に帰還して、イワウチワ咲き乱れる小径を下る。あれだけ残雪の景色に感動したのに、土の道がなぜか嬉しいし、春の花はことのほか愛おしい。まさに花道を通る気分、腕を振り見得を切りながら。
 
そして、ブナのミドリに入る。疲れと緊張をこれほどに癒してくれる色はないように思える瞬間。
実は、鳥原山からの下山路は雪を被って道無しの状態だったのだ。初日はそれでも下山した人がいて何とかそのトレースを探して辿れたのだが、下山の日は、一昨日の我らの足跡さえ融け消え、トレース皆無。目印も全くなし。GPSの軌跡だけを頼りに下って来たのだ。GPSがなければ道迷い必須、だからナビゲーターとしては少々ならず緊張した。
人が通らないから道がないのか、道がないから人が通らないのか。鳥原小屋に人が来ないのは、こんなことも理由なのかもしれない。
 
10:21古寺鉱泉前の咲き始めたばかりの山桜の下で、無事下山の万歳ポーズ。最後の締めに鉱泉で汗を流すつもりでいたのだが、まだ開業前だと断られた。やむを得ず、帰路、大井沢温泉ゆったり館に立ち寄ったのだが、これがまたヌルリとしたいい温泉だった。
なお、古寺登山口までは、長井市からの県道が最短ルートなのだが積雪で規制がかかっているため上山ICから月山ICまで高速道を通った。だいぶ遠回りだが、この時期はやむを得ないのだそうだ。
 
<コースとタイム>
第1日目 古寺鉱泉登山口P発9:14-9:21古寺鉱泉前-12:15畑場峰-14:47鳥原山-14:59鳥原山展望台-15:25鳥原小屋着・泊
第2日目 鳥原小屋発5:50-6:25鳥原山展望台-7:59小朝日岳-10:52大朝日岳12:01-14:03小朝日岳-15:44鳥原小屋着・泊。
第3日目 鳥原小屋発7:23-9:14畑場峰-10:21古寺鉱泉前-10:30駐車場着
詳しい様子はYouTubeにUPしてあります→こちら
 
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