綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
 
 5月28日 小百合に会いに 幽玄の森を行く
光兎山966.5m  新潟県関川村  地理院地図は→こちら
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関川村公民館主催「光兎山に登ってヒメサユリを見る会」のサポートです。予報に反して生憎の小雨模様でしたが、ブナの森は霧に煙り幽玄の気配濃厚でした。稜線には、お目当てのヒメサユリがピンクの可愛い蕾の姿を見せてくれて、ツツジ咲き緑滴る爽やかな初夏の光兎山です。
渡辺伸栄watanobu 
ヒメサユリに会えるのは行程のずっと先、虚空蔵峰、観音峰の二つの峰を越え三つ目の雷峰の辺りから。そこまでは、霧雨に霞むブナの森の中を進む。光兎山のブナ林は、巨木あり細木あり、不揃いにそれぞれが天を目指す。一途に光を求めるその風情がなんとも好ましい。
お目当てのヒメサユリは中々に現れず。代わって、ブナの木の根元や木立が途切れる尾根道に、色とりどりの初夏の花が次々と現れる。霧雨にしっとりと濡れながら。上から、ツクバネウツギ、イワカガミ、ヤマツツジ、ガクウラジロヨウラク、ウラジロナナカマドとムラサキヤシオ、アズキナシ。生憎の雨天を嘆くまい。山の花の名を覚えれば、うつむき加減の山歩きもまた楽し。
標高800mの雷峰の辺りから、ようやく、お目当てのヒメサユリのお出まし。まだ蕾ながら、すでに色艶よく、開花寸前の姿。昨年の今頃は早々と開花の最中だったのだが、今年は、少々遅れている。まだ色もつかない固い蕾も多い中、この花は、近々の開花を予告している。3日後の登山人は、この花の開花を見たに違いない。
山頂に立つ一行13名は、完全な雲中人となった。最年少は小2、最年長は?。霧の中、表情は定かでないが、皆それぞれに満足感に浸っている。麓から見上げた時のあの三角錐の頂点に今、自分が立っているのだと感慨ひとしおの面持ちで。
山頂から下山して、ヨ平戻ノ頭まで来た頃、雲が上がって下界が見えてきた。ナナカマドの花の向こうに、女川と荒川の合流点が見え、高坪山塊と朴坂山塊に挟まれた狹戸の先に越後平野の北端と日本海の海岸線が見え、歓声が上がる。皆、雲上人よりは天上人になりたいのだ。
雷峰に登り返す斜面の途中で、振り返ると、雲が晴れて光兎山の山頂がくっきりと現れていた。あそこが本当に山頂なのかと訝る登山人。あそこまで行ってきたことが信じられないふう。ホラ、山頂の鳥居が見えるでしょ、と言うとエッと驚く。何んとなくそんな気がしない?と言うと、ホントだ、そんな気がすると納得顔。心を飛ばせば、見えないものも見えるのだ。
カッパを脱いだり着たりして、下りもまた緑滴るブナの森を通る。ズボンの裾をドロンコにしながら、時に尻餅をついたりして。

光兎山は標高1000m足らずで、登山口との標高差は770mくらい、低山の登山と思われがちだが、とんでもない。途中に峰が4つもありアップダウン激しく、累積標高はほぼ1500m、沿面距離も往復で約13㎞。侮ることのできない山なのである。だから、下山も、下るだけではなく、疲れた足での登り返しが各峰ごとに待っている。
なかなか一筋縄ではいかない難儀な山ではあるが、それだけに、魅力たっぷりの山でもある。雷峰までは、鬱蒼としたブナの森、雷峰から先は低木の稜線もあり、山頂付近は樹林帯を抜けた高山稜線歩きの様相。変化に富み、ヒメサユリはじめ季節の花々が咲き誇る。時期によっては、山頂に雌雄のギフチョウが乱舞する。
各峰の名称が示すように、山岳信仰の古い歴史をもつ山でもある。虚空蔵峰の正式名称は奥山で、越後国中世史に名高い奥山荘発祥の地との説が関川村史に載っている。
これほどの山を日本山岳会が、なぜ、日本三百名山に入れなかったのかと、つい不満を呈したいほどの山なのである。
 
<コースとタイム> 千刈集落発6:27-6:37千刈登山口6:43-7:37分岐7:47-8:22虚空蔵峰8:32-8:53観音峰9:00-9:49雷峰10:02-10:30ヨ平戻の頭-11:06山頂12:03-12:41ヨ平戻の頭12:54-13:13雷峰13:31-14:16観音峰14:31-14:51虚空蔵峰14:55-15:24分岐15:31-16:08登山口-16:16千刈集落着
詳しい様子はYouTubeにUPしてあります→こちら
 
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