綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
 
 7月15日~17日 万尺の 巨峰居並び 揃い踏み
塩見岳3052m 長野県大鹿村・伊那市 静岡県葵区  地理院地図は→こちら
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南アの塩見岳は遠い山です。日本一高い峠といわれる三伏峠にテント2泊して贅沢な山旅でした。近づけば、さすがは三千メートル超の威風堂々たる岩の山、そして、周りには富士、北岳はじめ万尺超級の高山巨峰がずらりの壮観、その上、山頂岩壁にも途中の登山道にも高山の花々が咲き揃い、登山人引きも切らない人気の山でした。
渡辺伸栄watanobu 
塩見岳の山頂稜線。3047.3mの二等三角点がある西峰から最高所の東峰に向かう道。塩見岳は、下からはそのようには見えないが上がってみれば双耳峰で、西峰の奥に最高点3052mの東峰がある。三角点は三角測量の都合の良い場所に据えたもので、必ずしもその山の最高点とは限らない。地理院の地図では、山によっては二つの標高を併記している場合もあるが、塩見岳のように三角点の標高だけを記載している場合があるから注意が必要だ。我らの塩見岳初登頂を祝福してくれたのだろう、富士山が雲を払って現れた。自己中心過ぎるが、真実有難かった。
そういった次第で、最高点の東峰で登頂記念撮影。せっかく苦労して登った山なら最高所に立たなくてはと、最も高い岩の上に立った。さすがに歳を考慮して万歳は控えたが、気分はバンザーイだ。バックに見えるのは荒川三山、通称荒川岳。その後方には赤石岳、聖岳、光岳などの南ア南部の名山が続く。まだ見ぬ山、一度は行ってみたい山、念ずれば通じるか。
時間的には前後するが、塩見小屋から山頂へ向かう道。その間には最大の難所、天狗岩の巻き道がある。巻き道と言っても横に伝う道ではなく、天狗岩の稜線に上がらないだけで、岩の壁を登り上がる道だ。覆いかぶさる程の絶壁の下をへつったり、大岩の僅かな窪みを探ってようやく手掛かり足掛かりを見つけたりと、悪戦苦闘、ときに渋滞ができるほど。ヘルメットを持って来るべきだった。
それでも岩壁のあちこちに、様々な高山の花たちが咲き競っていて、岩場の緊張を癒してくれる。今年は何処の山でも、高山の花は遅れているようで、定番の花たちに出会う機会がほとんどなかったから、今季初めてという花が多かった。
 
まさに天空のお花畑 足を止めない人はいない
 
ミヤマオダマキ 色鮮やかで岩壁に鮮烈なアクセント 
 
 イワベンケイ 最も色の柔らかい時期
 
塩見小屋から天狗岩の下へ続く斜面の道に ミヤマキンバイ
山頂へ向かう前、塩見小屋手前稜線の眺望。右端・農鳥岳、その左に大きく間ノ岳、その左に頭が見える北岳、中央奥少し雲がかかり始めた甲斐駒、その左方・仙丈ケ岳。名山巨峰がずらりと並んで壮観圧巻。そして、目の前には塩見山頂へ続く天狗岩の岩稜。あそこをどうやって乗り越えるのかと、そちらの方が気になって視線を向ける。
朝、三伏山から見た中央アルプス、木曽駒、空木の名山が連なる。その右奥遠く微かに雪の残る山が見えた。あれは多分乗鞍。そこからずっと右方にも雪の残る遠い幽かな山、あれはきっと穂高連峰の一部。今立っているのは赤石山脈、目の前が木曽山脈、その右方奥に微かに見えたのは飛騨山脈、合わせて日本アルプス。去年歩いた栂海新道を通って遠く日本海に繋がる峰々を思い、感慨一入。
三伏山から見た塩見岳。南アの中では頭抜けた高さではないが周りに高山がなく屹立している。それに、岩のがっしりとした威容であたりを圧する迫力がある。麓の伊那谷を高速で走っていても、南アの山並の中で目立ってすぐに識別できる。もっとも、それができるようになったのも登った山だからだ。一度でも登れば山は自分のものになる。 
第1日目の三伏峠へ向かう登山道には、手づくり感満載の桟道が何か所もあった。丸太を番線で結んだだけの空中に張り出した道。丸太が朽ちるとその上から次の丸太を継ぎ足していった跡。怖い気もするが、どこか味わいがあって、山自体の風格を醸し出している。
 
三伏峠へ向かう道の斜面一面にオサバグサの花が咲いていた。白い小さな花がびっしりと一面に。3年前の八ヶ岳で初めて一株見て、去年、田代山で群れが見られるというのでわざわざ登山道の奥まで見に行ってきた花。それが、惜しげもなく群れ咲いていて、通る人がだれも見向きもしないふう。この辺りでは珍しくもなんともない花と思われているのだろうか。葉だけ見ればシダ類かと思うし、花一つ一つを見れば、葉とは釣り合いが取れないほど綺麗で整っている。
機織り機の、経糸を通すための櫛の歯のような部品を筬(おさ)と呼ぶのだそうで、この草の葉の形が筬に似ているからつけられた名だという。確かに葉の溝は櫛の歯のように見えなくもない。しかし、織機の筬は長い物差し型の櫛のような形をしていて、この葉のようなカーブはしていない。しかも、両面でもない。どうも、植物の名というのは、納得のいかないものが多い。
 
話は前後しているが、こちらが西峰にあった「御料局三角点」。初めて見たのでネットで調べてみたら、明治になって、旧幕府領などが皇室御料となったのを管理するための測量点とのこと。山林局の「主三角点」もそうだが、三角点が陸軍測量部のそれに一本化される以前のもので、明治時代の測量遺物が思わぬところに残っていたのが、三角点マニアには面白かった。国有林測量の主三角点は各地の山に残っているが、御料局三角点があるのは南アルプスなどに限られているらしい。
<コースとタイム>
第1日目 (P1・P2とも満車)P3駐車場発11:05-11:25ゲート11:39-12:25鳥倉登山口12:32-15:20水場-16:40三伏峠小屋-16:45テント場(テント場も満杯状態)
第2日目 テント場発6:20-6:35三伏山-7:35本谷山7:45 -11:30塩見岳西峰11:35-11:40東峰11:45-11:50西峰12:20-13:16塩見小屋-15:57テント場着
第3日目 テント場発6:20-7:08水場-8:43鳥倉登山口-9:25ゲート着(高速先行のIさんがP3からP1へ車を回送してくれたお蔭でその先の車道歩きを免れた)
 
ここで紹介しきれなかった高山の花々や行程中の詳しい様子などを
YouTubeにUPしてあります。→こちら
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