綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
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8月4・5・6日 感動の 劔・立山 三日旅
第1日目 峰越えて 劔見上げる テント場へ
別山乗越2753m 劔沢キャンプ場2530m 富山県立山町 地理院地図は→こちら
 
いつかは劔へ登りたいものと、会の仲間とクライミングを始めたのが4年前。これなら大丈夫とヘルメットを購入したのが3年前。以来毎年計画にあげられながら予定日と天候が合致せず、ここまで来た。この日も、事前の予報は芳しくなかった。当日早朝集合場所で協議、とにかく劔沢のテント場まで行って様子をみようと衆議一決。
で、半日かけて着いた立山は実に微妙な雲行き。もし、夜に雨が降れば岩場は濡れ危険度が増す。雨でなくても、視界不良のガスの中で劔に登ったのでは、折角の劔の甲斐がない。そうなったら潔く撤退もありとの方針で、とりあえずテント設営。その作業中、小雨が来た。さあ、どうなる?と思いきや、幸運に恵まれた。小雨はすぐに上がった。テント内で食事中誰かが叫んだ、「劔が出た‼」。
暫くすると、明日の好天を約すように高い峰の裏側に夕日まで当たっているのだった。
第2日目(劔岳)は→こちら  第3日目(立山縦走)は→こちら
渡辺伸栄watanobu 
11:45 観光客で賑わう室堂ターミナル前の広場で、まずは記念撮影。ここへ来たのは7年前。あの時は立山の峰々がくっきり見えて、そこを目指す登山人を畏敬の眼で見つつ、日本一高所の温泉に浸かり、地獄谷へ降りた手ぶらの観光人だった。こんな重荷を背負って再びここに来るなんて、あの時は思いもしなかった。人生何が起こるか分からない。有難いことに、今回も良い方に転んでいる。
室堂平の花の盛りは少し過ぎたらしいのだが、それでも高山の花々は見事だった。7年前は秋だったから風景が違う。こんな天国のようなところだとは全く思わなかった。正面の雄山の山頂が、時々雲が薄れて顔を出したり隠れたり、実に微妙な雲行き。仮に劔を諦めることになっても、こんな景色を眺めながら劔沢まで歩けるのなら、それはそれで来た甲斐があるというものだ。そんな気がしていた。
12:28 室堂平から雷鳥沢へ下る。山肌の緑と残雪の白とコントラストが見事で見飽きることがない。それに加えて、テント場のテントの色がなんともいい。高山の花咲き乱れ、ここが天国でなかったら、ほかにどこにあるというのか。そんな気がしてきた。
13:31 新室堂乗越に上がった。眼下に雷鳥沢テント場、右に噴煙を上げる地獄谷。7年前はあの谷に降りて硫黄が噴き出す様子など見物できたが、今は有毒ガスのため下降禁止になっている。噴煙の上がる先が、みくりが池温泉。その一段上、中央部に室堂ターミナル。雷鳥沢テント場からここまで標高差約126m。初日の重荷は身に堪えた。が、ここから今日の最高所、劔御前小屋のある別山乗越まであと367mは高度を上げなければならない。天国もなかなか楽ではない。
稜線歩きの途中、ふっとガスが途切れて立山の三峰が姿を現してくれた。左から、富士ノ折立、大汝山、雄山。計画通りにいけば、3日目にあの峰を歩く。一万尺(3000メートル)の天空の路。
重き荷を背負いて長き山坂を進む、徳川家康並みの辛抱度。慰めてくれるのは高山の花々。それがまた、今ではすっかり馴染みになった花たちで、登った山は自分のもの、名を覚えた花も自分のもの。
 
行く手に見えた劔御前小屋が、今日のコース中の最高所2753m。雷鳥沢から493m高度を上げたことになる。休憩を含まない標準タイムで2時間弱のコースを、休憩を含めて3時間かけて登ってきた。スローペースなのが有難い。決して急がない、個々人のペースに合わせてゆっくり、せっかくの山、一期一会を楽しむ。会の方針が有難い。
15:59 劔岳は室堂平の側からは見えない。劔御前小屋の稜線まで上がれば、ようやく見える。が、雲がかかって上部が見えない。小屋の脇で劔の出現を待つ。と、劔の右側の雲が上がって山頂部が半分姿を見せてくれた。すかさず、記念撮影。どうか明日登らせてください、よろしくお願いします。
道々、数多くの花の写真を撮った。中で、この日一番良かったのは小屋を過ぎた辺りの道端に咲いていたこの花、トウヤクリンドウ。今期初お目見え。白骨枯れ木との絶妙のバランスが気に入っている。
劔御前小屋の稜線から反対側の劔沢の谷へ下る。テント場は正面左の尾根に隠れて見えないが、谷の先端に緑の屋根が見えた。あれは登山研修所の夏山基地だという。テント場までは、標高差250mほどの下り。劔はまた厚い雲に隠れた。
16:36 雪渓の先に劔沢キャンプ場が見えた。あと10分くらいで今日の行程は終わる。眼前の巨大な岩壁が劔岳。岩の殿堂。果たしてその全貌を明らかにしてくれるかどうか。
到着してすぐにテント設営、その時に雨が来た。パラパラと大粒。荷と共にテントに逃げ込む。予報通りだ。
予報は、3日間とも午前晴、午後小雨、夜本降り。ただし、初日の夜の本降りだけは、発表時刻によって、出たり消えたり。つまり、この小雨の後どうなるかによって、我らの運命が定まるのだ。こればかりは成り行きに任せるしかない。だから、盛大にビールで乾杯し、これまた盛大に焼肉を食べて、天命を待った。
18:19 そうこうして約1時間強。なんと劔がその全貌を現したのだ。実は、この間にもガスの濃淡は度々変化し、時々劔の山頂らしい険しくも鋭い岩峰が何度か顔を覗かせていて、その都度、劔が出た‼凄い頂だ‼と、テント内で声が飛んでいたのだった。が、こうやって全貌が顕わになると、それまで顔を見せていたのは前劔だったと判明した。本物の頂が出るまでは、前劔の迫力は相当のものだったのだ。いや、こうやって後ろに本物が顕わになってみると、まるで瓜二つ。あの岩峰を越えなければ劔の頂には辿り着けない。う~ん。
19:01 この時刻になると、劔の雲も、周囲の山のガスもみな消えた。おまけに、山の裏側からは夕日まで射して、窪地のテント場にはもう陽は当たらないが、西側の山の端は赤味を帯びていた。どのテントからも人が出てきて、劔の方を向いて立ち尽くしている。明日の好天はまず間違いなし。テント場のテントは百数十張、劔沢小屋も剣山荘も予約で満杯とのこと。一体どの位の人数があの岩山に登りつくのだろう。天気の心配がなくなったら、今度はそんなことが気になりだした。
<コースとタイム>  室堂平発11:50-12:03みくりが池温泉-12:43雷鳥平12:55-13:29新室堂乗越13:37-15:52劔御前小屋16:05-16:50劔沢テント場
ここで紹介しきれなかった風景や花々などを
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