綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
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8月18・19・20日 感動の 劔見たさに 鹿島槍 
第3日目 三日目の 山のご褒美 大展望
爺ヶ岳南峰2660m 富山県立山町・長野県大町市  地理院地図は→こちら
 
最終日は雨の中を下山する覚悟でいた。が、前夜の予報で、明日の天候は回復するらしい。明朝、運よく晴れていたら、早出してもう一度爺ヶ岳へピストンし、その後戻って、テントを畳み下山しようと決めた。
その夜も、初日の夜同様満天の星、大町の夜景。2日目はこれに騙されたが、さて3日目は・・・起きてみると昨朝とは違った空。上空に雲なし。これはどうやら昨日の願いが通じて、奇跡が起こったらしい。登山人はいつも、自己中心にそう思うのでした。
第1・2日目(爺ヶ岳~鹿島槍)は→こちら
渡辺伸栄watanobu
4:56 テント内で朝食をとり、出支度をして山荘の近くまで来てみると、眼前にこの景色。朝の日を受ける針ノ木岳と雪渓。この山、2週前に剱からも別山からも目にし、雲に浮かぶ姿を何枚も写真に撮った山。昨日は雲から出たり隠れたりしていたのが、今朝はくっきり。これなら、剱も鹿島槍も存分に見れるに違いない。
山荘の前に人だかり。皆の見る方向に目をやると、この絶景。雲海の彼方に、紛れもなく富士山。ここから富士が見えるのか。後で地図を見れば、松本盆地、諏訪湖、甲府盆地と低地が繋がって富士まで一直線だと分かって納得。富士の右は南アルプス。尖がっているのは甲斐駒や仙丈だろうか。左側は八ヶ岳に違いない。
こうなれば、高度を上げて一刻も早く剱の見える場所に行きたい。息を切らせて稜線に上がれば、見えた‼剱だ。絶景の連続。右に剱岳、中央に別山、その左に真砂岳と立山の三峰が並ぶ。つい2週前歩いた峰々が、朝日を受けて連なっていた。その前景に山荘、その色といい配置といい、絶妙の景色。
そして、昨日登った鹿島槍も。特徴ある双耳峰。昨日は全く見えなかった奥の北峰があまりにも離れていて、あれはもしかしたら別の山で五龍岳かと勘違いしたほど。
昨日はガスで全体像が全く分からなかった。が、今日は、山頂に続く稜線が一目瞭然。山頂南峰のすぐ下に黒く布引山、その下に稜線が続いて中央辺りにテント場、その右に下がって冷池山荘、そこからさらに下がった鞍部が冷乗越。そこから右へ上がる稜線が爺ヶ岳の北峰に続く。昨日歩いた長い稜線の道。あの稜線にあれだけの花々が咲き乱れているとは、こればかりは行ってみなければ絶対に見られない。
写真を拡大して見ると、テント場に色とりどりのテント一つ一つが写っていた。が、当然のこと、花は写ってはいなかった。
剱をズームで撮った。
左の低い小ピークが一服剱、その右急傾斜の稜線を上がって前剱。その先、切れ落ちて鉄の一本橋を渡った谷、その少し先の小鞍部が前劔の門、そこから上がっていく稜線のピークが平蔵の頭、一旦小鞍部の平蔵のコルに下って、山頂へ繋がる岩壁に取付く。左側の縦に長い岩の影の辺りがカニのタテバイ。と、2週前の剱登頂ルートを目で辿る。
あの時は、必死で岩につかまり鎖を手繰った。目の前のことに精一杯で、自分が一体どのような場面の中に位置づいているのか、全体像が今一つ掴めていなかった。今、こうやって、離れた所から眺めて、あの時の自分の置かれた状況を改めて客観的に辿ることができた。
意外だったのは前剱。あの時は、小型の剱岳が前衛として立っていたような気がしていたが、こうやって真横から見ると、平蔵の頭に繋がる平らな稜線の端に見える。山はいつも見る角度によって姿を変える。そこがまた面白いのだが。
それにしても、こうやって見ると剱はやはり岩の大殿堂。あそこによくも登ったものだと、自画自賛。
右端に針ノ木岳、その左の大きな山は蓮華岳。この山も立山の別山から見た。爺ヶ岳への高度を上げると、蓮華岳の左方遠くに特徴のある山塊が見えた。方角と形から、あれはどうも穂高連峰。
 
ズームで見れば紛れもなく、右端に槍ヶ岳。中央部は北穂、奥穂、左端は前穂。槍には登ったし、前穂の奥の西穂にも登ったが、肝心の中心部に、私はまだ登っていない。こうやって見てみれば、やはり登らずにはいられない。山が呼んでいる。手招きが見える。
爺ヶ岳南峰に上がる登山人。朝日は爺ヶ岳の向こう側から射している。あの頂に上がれば、どんな景色が見えるのだろう。山の景色はすぐに変わる。雲が湧きガスが立ち込めれば、一瞬のうちに眺望はアウト。だから、気が急く。あのてっぺんまで駆け上がりたい気分で急行した。
南峰頂上に上がった。先に来た人々が感動の態で立ち尽くしていた。それもそのはず、360度の大展望。まずは、剱から立山までの山々。真ん中が別山で、あのたわんだ稜線をほんのちょっとだが駆けてみたのは、今となっては貴重な思い出。
立山から左方向へ目を移す。中心の鋭鋒が針ノ木岳。そのすぐ右の特徴ある形は名前も面白いスバリ岳、その右に長い稜線が赤沢岳へ続く。スバリ岳の右奥の大きな山は薬師岳。この山も、立山からよく見えていた。当初予定の雲ノ平は薬師岳のさらに奥になる。針ノ木岳の左方奥に見えるのは烏帽子岳や野口五郎岳に繋がる山のどれかだろう。裏銀座の山行も度々計画に上がっているが、まだ実現していない。いずれ、行くことになるだろうか。なかなか遠い山だ。
 
更に左へ目を移せば、富士山の方面。富士は、肉眼では見えないくらいに薄れているが、ズームではまだ見えた。南アルプスの山並はまだ微かに見える。その隣、右端の山並は中央アルプスだろう。八ヶ岳は雲がかかり始め消えかけている。
更に目を左へ。正面に太陽。大雲海に浮かぶ二つの島は、右が浅間山で左が四阿山。浅間の山頂には、立ち上る噴煙が見える。
 
さらに左へ。鹿島槍ヶ岳。山頂南峰と北峰の間の吊り尾根が長い。五龍岳は結局見えない位置にある。昨日、五龍と北峰の間にあるという八峰キレットを通るという登山人もいたようだ。いつか、五龍に登って、その難所を見てみたいものだ。
爺岳南峰の頂上で感動するYoumyさんの後方、雲に浮かぶのは飯縄、高妻、火打などの山塊。来月の予定は高妻山なので、今度はそこから爺ヶ岳、鹿島槍、五龍そして八峰キレットが見れるかもしれない。
それはともあれ、奇跡のお陰で今回山行随一の写真が撮れた。
 
360度左回りに回って、剱に戻った。最後にオートシャッターで、山頂記念撮影。もちろん、バックは剱。薄暗い中テントを出たから、頭にはヘッドランプ。感動とシャッターが忙しく、それを外すのさえ忘れていた。
爺岳南峰の頂に1時間強居座った。もうそろそろ下山の時刻。眼下の山荘の裏のテント場まで戻る。その道も、剱・立山と対面しながら下る道なのだから、ここで見納めではない。それはそうなのだが、でも、頂から対面する剱はまた格別のものがある。じっと見ていると涙が滲んでくる。2週前のあの感動がよみがえるのだ。多分、立ち尽くすUnqさんも同じ思いだったと思う。望外の奇跡に、只々感謝。 
<コースとタイム>
第3日目;テント場発4:52-4:54種池小屋5:02-5:57爺ヶ岳南峰7:10-7:52テント場(テント撤収)8:23-8:24種池小屋8:30-11:14柏原新道登山口11:17-11:24第2P
 ここで紹介しきれなかった鹿島槍稜線の花々や最終日の大展望を
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