綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
10月24日  国引きの神ます三瓶尾花揺れ 
三瓶山(男三瓶山)1125.8m 島根県太田市  地理院地図は→こちら
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前夜Unqさんからメールが入った。「新潟から来たと覚られぬようにしたほうがよい」と。理由は「新潟に名山多いのに、わざわざ島根の山に登りに来るとは、何か拗ねてでもいるのかと訝しがられるだろうから」と。そうなったら、「新潟の山は登り尽くしたので」とでも法螺吹こうかと思ったが、杞憂に終わった。なぜなら、朝早くの駆け足登山、山頂まで誰にも会わずに済んだから。下山途中で、登り始めた3人組とすれ違い、そのあと登山道整備の人と会ったが、挨拶のみで駆け下った。朝寒の季語ピッタリの山頂に独り、出雲・石見を一望しているといかにも神話の国、神々しさが募ってくるばかり。
渡辺伸栄watanobu
前日の石見銀山駆け巡りの途中登った山吹城址本丸跡から西方向に三瓶山が見えた。主峰の男三瓶山の右に子三瓶、孫三瓶が連なっている。標高1200m足らずだが、周りからは際立って目立つ山だ。さすがは、中国地方の名山。出雲・石見に来たからには、こりゃ登らずにはおられまい。
朝6:30キャンプ場のケビンを出発。急ぎ登山なのでOkkaaは留守番して退去の支度。このケビン、1泊12,000円程でバストイレ寝具炊事道具一切つき。楽天で探すホテルの最安値とほぼ同じ額だが、こちらの方がはるかに過ごしやすい。ここを2泊3日のベースキャンプ地にした。初日の夜は台風通過、ケビンで聞く嵐の音もなかなか味わい深かったが、愛車の屋根に落木などなくて、まずは一安心。
ススキ原の先の森の縁に登山口がある。目の前に見上げる三瓶山。ここは主峰直登の急坂コース。それだけに時間は稼げるので駆け足登山にはもってこい。
前々夜の台風通過で、登山道は、紅葉ならぬ青葉の落ち葉が敷き詰められていて、その上を歩くのもなかなか乙な気分ではあった。途中、大木の風倒があり道を塞いでいたのだが、下山時には早くも作業員が入っていて、通りやすく処理されていた。通りすがりに言葉を交わしたが、何処から来たかなどと野暮な質問は一切なかった。上級レベルの人たちだ。
 
西国の山も結構な色づきが始まっていた。この藪の中にサル共がいたらしく、妙に低い音で警戒と威嚇の合図を発していた。渓流のない三瓶山に熊・鹿はいないと看板にあったが、猪はいるらしい。用心のため単独行ではラジオを鳴らす。印籠代わりに持ち上げて音を周囲に流したら、サル共の音が静かになった。通行許可がでたらしい。通るぞ!と大声を掛けて難なく通過。
標高差約550m、1時間半ほどで山頂に着いた。大きな山頂碑が、国引き神話の杭に見えた。正面の山並の中に前日登った山吹城址がある。石見銀山の本体、鉱脈があったという仙山もあの中にある。日本海を通る船からあの山の頂が光って見えて、それで銀鉱脈が発見されたという。残念なことに、ここからは光は見えなかった。三瓶山の山頂は広い草原状態で、ススキの尾花が寒風に揺れているだけだった。
台地状の山頂の端に展望台があって、三瓶山の内側を覗き込むことができる。中央左の緑色の池が火口湖の「室内池」。この池を取り巻いて三瓶6峰が並ぶ。外輪山というより、それぞれが溶岩ドームということらしい。最初の計画では、前日一日使って6峰を二人でゆっくり周回するつもりだったのだが、台風の余波強風で取止めた。今日はゆっくりしていられないので、一人、主峰・男三瓶の山頂ピストン。
 
山頂から、太田市の市街と日本海。この辺りの民家の屋根は赤色の瓦が特徴的。石州瓦といって、釉薬にこの辺り特産の来待石(きまちいし)を使うので赤色になるということらしい。
 
遠くに島根半島。そこへ繋がる砂浜の先、半島の付根当たりが出雲大社。あの半島を綱で引っ張って引き寄せた。砂浜が綱の名残りとか。なにやら、綱を引いた神様のような気分がしてきて壮大な眺めだ。
 
山頂の山座盤では、東方向に伯耆の大山が見えることになっているが、生憎の朝曇り。ただ、その方向には、いくつもの山が重なって、実に神々しい景色に見えた。さすがは神話の国。それで、一句「国引きの三瓶朝寒神々し」
<コースとタイム>  6:45姫逃池登山口-8:10三瓶山山頂8:42-9:40登山口に下山
男三瓶山の山頂には立派な一等三角点があって、そこの標高が1125.8m。ただし、平成3年に国土地理院が、地図に記載された山頂の三角点や標高点が必ずしもその山の最高点ではないことから、全国主な山の山頂標高を調査して発表していることが、最近分かった。できるだけ最高点の高さを明示することにしたということだ。で、それによると、男三瓶山の山頂標高は1126mとなっていて、山頂碑の標示はそうなっていた。
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