山の記 2020
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11月1日(日)  晩秋の二王子山頂 大展望
二王子岳1420.1m 新潟県新発田市 地理院地図は→こちら
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この日の予報が滅法良くて、急遽二王子岳へ。Ibu少年は9歳ながら立派な阿賀北山岳会隊員。期せずして最年少隊員と最年長隊員が、最強隊員2名と同行することになった。登り始めはまだ緑の混じる樹林、登るにつれて紅葉の色が増し、500mを越えると枯葉色に変わり、1000mではすっかり葉を落として冬枯れの木立。この時期ならではの季節の垂直変化を体感できた。山頂稜線に出れば、快晴というわけでもないのに、360度の大展望。眼前に横たわる飯豊連峰は端から端まで手に取るよう。北遠くに朝日連峰が全貌を晒し、その向こうには月山。そして、下山の頃には鳥海まで姿を露わにしてくれた。南を見れば、遠くに特徴ある双耳峰、あれは尾瀬の燧ケ岳。その右方に越後駒と中ノ岳がくっきり。やや手前に越後白山、粟ヶ岳、守門岳。那須連山も日光の山々も見えているはずだが、際立った特徴なく識別は難しい。日本海には朧ながら佐渡島に粟島。足下には我が関川村の盆地、光兎山、鷲ヶ巣山、その延長線上に鳥海山。ぐるりと360度、何度回っても見飽きない光景。飯豊の稜線上には、杁小屋、頼母木小屋、御西小屋が見えて、手招きしていた。飯豊縦走、来年こそはと思いが募る。
 渡辺伸栄watanobu
朝7時の登山口駐車場はすでに満車状態で、駐車は最奥部。それでも、その後も続々と車がやってくるのだから驚いた。どうやら絶好の日に当たったらしい。今朝6時に我家へ迎えに回ってくれたから、Ibu少年の起床は多分5時くらいだろうか。長~い一日になるぞ。
一王子の休憩を過ぎて、ここは標高800m付近。もう500mも高度を上げた。黄色く色づいたブナ林の葉を透かして朝日が林床まで届いてきた。温もり始めた朝の空気を胸いっぱいに吸い込む少年。
油こぼしを難なく登り切って山頂に続く稜線に出れば、大きな池塘。水泳に通うIbu少年、水にはことのほか興味があるようで暫し留まって動かない。じっと水面を見る。いや、水中に何かを見つけたのかも。山頂がすぐそこに見えている。
振り返れば眼下に新潟平野と海岸線、角田と弥彦、日本海に微かに佐渡島が見えている。残雪期にここの稜線上をスキーで下ってから、もう5年になる。この先の窪みで右折して油こぼしの坂へ向かうべきところを、勢い余って直進し、あの峰の先端まで行って下ってしまった。Unqさんに呼び止められて、ほうほうの態で戻ったが、あのまま下ったら大変なことになるところだった。終生忘れられない苦くも痛快な思い出の場所。
山頂に到着。登山口から休み休みで4時間ちょっと。ヤマプラの標準タイム4時間とほぼ一緒。山頂は登山者でごった返し。あの車の数だから立錐の余地なしかと思いきや、早く来た人たちがどんどん下りていく。予報では本日の晴天は午前だけ。だからだろう。お陰で、正午ごろにはガラガラ状態になった。風のあたらないブッシュの陰を占めることができて、ゆっくりと山頂時間を過ごす。
山頂の釣鐘は今日外されたらしい。着いた時、山頂の人ごみの中にKさんがいて、我らに気づいてちょっと話し、早々に団体で下って行った。どうやらこの団体が釣鐘を外す行事をしたようだ。混んでいたのはその行事の参加者達だったのかもしれない。山頂が空いたおかげでドローンを上げることができた。
山頂は360度の大パノラマ。すぐ東隣の飯豊連峰、北にはちょっと離れて朝日連峰、西に日本海、粟島、佐渡、南には、遠く尾瀬の燧ケ岳や越後駒に中ノ岳、さらには奥会津の山々や日光、那須の山々も見えているはずなのだがどの山がそれか識別は難しい。ドローンを山頂の周り360度飛行させて、大パノラマの逆撮影。
二王子岳は飯豊連峰の大展望台。指呼の間に連峰の端から端まですべて見える。右端は最高峰大日岳、左端が我らの朳差岳。
8月にテントを張った頼母木小屋。丘の上の一軒家の風情がなんともいい。右端が頼母木山で、イイデリンドウが咲く北端。8月山行では、咲き終わっていて一輪も見られなかった。
8月山行で2日目に立った朳差岳。中央が山頂で、左が前杁、杁小屋がよく見えている。季節になればあそこはお花畑。
二王子から見れば、連峰稜線のずっと向こう側に鎮座する飯豊本山。計画はあったのだが天候整わず、今年も結局、あの頂に立つ機会を失した。来年こそは。
大日岳と本山の間の稜線に目を凝らすと、ポツンと黒い点。ズームで見れば御西岳の避難小屋。本山を経由して大日岳に登るには、あの小屋が頼り。大日には20代の頃に登ったきり。来年こそ。
北方の朝日連峰。右から大朝日岳、中岳、西朝日岳。朝日連峰は、東端の大朝日にも、西端の以東岳にも登ったが、その中間の縦走はしていない。このままでは悔いが残るので、来年こそ。いや飯豊大日縦走が来年なら、こちらは再来年でも。
以東岳の後方に真っ白な月山が顔を出していた。ずっと以前、独りで二王子に登った山頂で北方に真っ白な山が見えて、見知らぬ登山者たちとあれは月山か鳥海かと論じ合ったことがある。ちょうど今頃の季節だった。今なら、あれは月山だとはっきり言える。じゃあ鳥海は?と遠目を凝らして探すのだがなかなか見当たらない。
南方に目をやれば、見知った越後の山々。右手前は五頭や菅名の山塊で、中央が越後白山、その左が粟ヶ岳、さらに左奥に守門岳。4月に雪上を歩いた日本平が守門のずっと手前にあるはずだが、あの平らな黒い影がそうだろうか。
さらに南へ目をやれば、遠く微かに特徴的な双耳峰。方向といい形といい、あれは尾瀬の燧ケ岳。とすれば、その前面に横たわるのは会津駒や会津朝日岳だろうか。
そしてこれは、越後駒ケ岳と中ノ岳。八海山は越後駒の向こうに隠れているのだろうか。この画面にはないが、中ノ岳の左手前に見えたのは荒沢岳ではないだろうか。こんな具合に、二王子の山頂やそこに続く稜線からは360度見飽きることのない大パノラマが展開していたのでした。
1時間半近く山頂で過ごしているうちに、下山の時刻。ドローンもカメラも持たない少年は退屈していたのだろうか、いそいそと山頂を後にするのでした。どうやら、丸坊主のせいで後ろ髪引かれる思いもなかったようです。
山頂でクマザサの葉をいじっていた少年は、この池に笹舟を浮かべて喜んでいた。どうやら、1年前の10月国民文化祭行事で、笹舟つくりをして遊んだのを覚えていてくれたらしいのです。作り方まで覚えていたとは、なんとも嬉しいことではないですか。
間もなく稜線と別れて油こぼしの坂へ、本格的な下りが始まる。というわけで、靴ひもを縛り直してもらっている少年のこの表情。なんとも嬉しそうではありませんか。
と、稜線の上でYoumyさんが、あれ?あの白い山は?と、鳥海山を見つけてくれた。登りにも山頂でも、随分探したのに。今出てきたのだろうか、それとも見ていた位置が違ったのだろうか。とにかく、まぎれもなく鳥海山。あそこまでここから140㎞、こんなに良く見えるとは、すごい日に来た。因みに、燧ケ岳までは106㎞。
改めて手前の山を見てみれば、光兎山と鷲ヶ巣山と鳥海山がほぼ直線上に並ぶ位置にあることが分かった。単独行の秋、二王子山頂から見たのは、確かにあの位置のあの鳥海山だった。あれからもう9年になる。
鳥海を望んだ眼を左にずらせば、関川村の盆地。見慣れた山々。左端が高坪山の山塊。中央部の頭が平らで急傾斜の山が朴坂山。そのずっと右方に大平山の山塊。盆地中央の荒川土手を走れば、いつもこちらが見えている。
Ibu少年、下りも油こぼしの坂を難なくこなして、ピースサイン。9歳最年少ながら、さすがは阿賀北山岳会の会員。弱音はちっとも吐かなかった。
登山口近くの杉林内は、随分薄暗くなっていた。それでも恐れることもなく少年は足取り確かに下山路を辿り、この通り無事下山したのでありました。
あれだけの数の車が全くなくなっていた駐車場。1台残ったUnq車へ向かって、とっとと歩を進める少年ひとり。クマを恐れるふうももなく。
<コースとタイム> 駐車場発7:03-7:10二王子神社登山口7:15-8:39一王子8:43-9:32定高山9:41-10:37油こぼし-11:05三王子-11:32二王子岳山頂12:51-13:49油こぼし-14:41定高山-15:16一王子15:31-16:41駐車場着
ここに上げきれなかった画像はYouTubeにあります。こちら⇒ 
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