綿野舞 watanobu 山歩紀行 2010.5.1 光兎山
 標高966.3m  新潟県関川村    
 
 
毎年この時期、Hikaさんが光兎登山の案内を寄こしてくれていた。
そのHikaさんが、この前年の冬、病魔に襲われて帰らぬ人となって、この日、追悼登山をHaseさんが呼びかけてくれた。

前年の夏、木曽駒に登ったとき、Hikaさんからメールがあって、「雨で残念でしたね。今度、晴れ男の私が一緒します」などと書かれていた。
あの頃すでに体調不良だったようだが、回復してもう一度木曽駒に立つ気力は持っていた。
そのことを思うと残念でたまらない。


Hikaさんが好きだったこの時期の光兎山、今回登って、改めてその素晴らしさに魅せられた。

ブナ林がいい。
光兎のブナの木は、みなまっすぐに伸びていて気持ちがいいのだが、残雪の中の白肌もいいし、萌え出した柔らかい緑の林も実にいい。

残雪に陽光が当たる山頂の山肌もよかった。
雷峰の上で、地元のSさんから、山の名の元になった兎の雪形が、そのときはもうすでに形は崩れていたのだが、どの沢のどの向きにどのように見えるかということについて、丁寧な説明があって、一同、想像心を働かせながら聞き入ったものだった。

そして、この時期の早春の花花。
林の床には、オオバキスミレ、ショウジョウバカマ、シュンラン、エンレイソウ。
イワウチワの群生には、しばらく見とれてしまったし、カタクリは、里山に咲くものとは色が違うように感じた。
頭の上には、マンサク、タムシバ、ヤマザクラ。


Hikaさんの案内をもらって光兎山に登ったのは、過去1度くらいだったろうか。この日のような残雪や花は印象に残っていない。もっと暑かったような気がする。とにかく辛い登りだった。

それが、この年は雪消が遅かったのだろうか、それとも、以前に登ったのは、もう少し遅かったのだろうか、判然としないが、
Hikaさんの愛した光兎の素晴らしさを、遅ればせながら、この日、分からせてもらったようだった。


Hikaさんには、光兎山以外にも、摩耶山、新保岳などに連れて行ってもらった。
その当時は、夏は鮎釣りに忙しくて、折角の案内に応じたことは少なかったのだが、少ないだけに、麻耶山も新保岳も印象深く残っている。
今はもう、木曽駒にも一緒に行けなくなってしまった。


ここのところ、Fさん、Y大先達、Hikaさんと、過去の山歩紀行は亡き人の思い出話が続いている。
Unqさんがブログに、いい人は生を全うできないのかなどと書いていた。みんな、いい人だった。山に登る人は、基本的にみないい人だ。残る人たち、生を全うしよう。

                2013.12.16記
 
 
 
 
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