京都のMargoの運動会に行くことにして、Okkaaが白山スーパー林道を通ってみたいと言う。
ならば、白山に登ってみなくてはということで、初めての単独登山ということになった。Okkaaは白峰の温泉ホテルで骨休め。
いつもの山行きは、Haseさんの企画に身を委ね、自分でコースやタイムを設定することなどないのだが、今回だけは違った。事前に情報を集め、地図とにらめっこしてコースや日程を決めた。
やってみて、山行きの楽しみはプランニングにもあることが理解できた。
29日、別当出合の駐車場にたどり着いたのが昼11時、大急ぎで身支度と昼食を終えて、別当出合センター前までの階段山道を駆け上がるように昇って、登山口1260mを出発したのが11時30分。
ほぼ予定通りの進行で、階段道を駆け上ったその勢いのまま、吊橋を渡り山道を快調に進む。
中飯場1520mに着いたのが12時10分。ガイドマップの標準タイムより10分早い。
初めての単独行、安定したペースを保つべきことをすっかり忘れていた。そのつけは、後からしっかりと回ってきた。
自分では張り切って調子が上がったように思うのだが、後でのHaseさんによると、つい寂しくてペースが上がるものらしい。
 
 白山スーパー林道から、目指す白山の麗姿      別当出合の登山口 まだ紅葉には早い 
これまでの山歩きで、「ハクサン」の冠名のついた花々をたくさん目にしてきた。その高山植物の本場についに来ることができた。が、しかし、この季節、花はほとんどない。紅葉もまだ早い。しかも平日、登山者は極端に少ない。確かに寂しさひとしおの感はあった。
それでも、いくつかの花や実が目を楽しませてくれた。
秋の空は、澄んでどこまでも青く、赤い実をより赤く見せてくれていた。
それらのものたちと同じように、自分も、自然の中のひとつのものとして存在しているように感じられて、単独行もいいものだとこのときは思った。 
 
選んだルートは砂防新道。名の如く、砂防工事が進行中で、資材運搬のヘリが登山道横の甚之助谷上空をひっきりなしに行き来している。爆音で情緒にやや欠けるのが難点だが、室堂までの最短コースとなっている。
黒ボコ岩直下の急坂を登り切れば、室堂はもう近い。
その急坂で、右足の筋肉が悲鳴を上げた。ハイペースのつけがここで回ってきたのだった。
坂の上から山ガールの一団が下りてきた。ここで「大丈夫ですか?」などと、声をかけられたらたまらない。ましてや万が一にも「ヘリを呼びましょうか?」などと決して思われてはならない。だから、笑顔を作って、「先にどうぞ」などと道を譲ったふりをした。
本当は動けなかったのだ。
しばらくすると右足の引き攣りもやや収まって、振り向くとミヤマキンポウゲの花があった。それをカメラに収めようと無理な姿勢をとったら、今度は左足の筋肉が悲鳴を上げた。
で、やむを得ず、マッサージと塩とスポーツドリンクで25分ほどの大休止をとった。
休止中、2時間ほど前にHaseさんから入っていたメールを開けた。
こう書いてあった。
「一人はね、寂しいし、心細いし、だからとばすのよね。これで足の痙攣が始まると一人来たことを後悔するわけよ。」
予言、大アタリ!! 一人、大爆笑した。見渡す範囲に人っ子一人いなかった、よかった。
キンポウゲの花とHaseさんのメールのお陰で、疲労は吹き飛んだ。人間、苦しいときは笑うに限る。
 
黒ボコ岩 ここの登りがきつい  
回復はしたものの、また足に来るか?という不安は残る。
弥陀ヶ原の平らな木道を恐る恐る、足の筋肉をあやすように、ゆっくりゆっくり進んだ。
誰もいない。
この辺り、花の時期であれば、「ハクサン何々」が群れなすのだろう。もう一度、その時期に絶対来たいと思った。
それにしても、さみしい原っぱ。独りトボトボと行く。
「どうしようもない私が歩いていく」 確か山頭火の句だったような。目的地はもう近い。 

 弥陀ヶ原から山頂(御前峰)
ようやく、室堂到着。14時20分。ガイドマップの標準タイムにプラス50分。
時間的には、一休みして山頂(御前峰)へ登る余裕はあったので、ほぼ計画どおりの進行だった。
が、想定外の筋肉疲労を考慮して、本日の山頂登拝は取り止め、明早朝に予定した。
この日は、センターとなりの避難小屋「白山荘」で自炊宿泊とした。
小屋はガラガラ、1パーティと自分のみ。8月の西穂高の6畳11人泊とは大違い。
雲が湧く山の夕景は、いつ見ても神秘的だ。Margoに「じいちゃん、また雲の上だよー」と写メを送った。
暗くなってからは、ウイスキーを片手に手の届くような星空を眺め、ゆったりとした時間を過ごした。
それにしても、山頂のこの時期、冷え込みは厳しかった。冬用のキルティングジャケットが役立った。 
 
白山室堂ビジターセンター                 御嶽山だとセンターの人が教えてくれた
 
夜半に天候が急転した。朝の視界は10mを切っていた。天気予報は、北陸地方の内陸はこれから雷雨の恐れありと告げている。
足を止められて、Okkaaをいつまでも温泉に待たせるわけにはいかないし、何よりも、Margoの運動会に間に合わなかったら、それこそ本末転倒だ。
頂上への登拝は諦めて、早々に下山した。
花の時期、Haseさんを案内して、必ずもう一度来ることにして。
下山路は、観光新道を下る予定でいたが、センターの人に尋ねると、来た道が安全だと言うことで砂防新道を独りトボトボと下った。
悪天のせいで、ヘリも飛ばず、降りしきる雨の音と、その雨が滝となって流れ下る音だけ。
カッパ頼りの雨中行だが、それはそれで自然の中に溶け込んだような、妙な安定感のある山下りではあった。
一方で、荒れがひどくなる前に下山したいという急く気持ちもあるのだが、焦りとか不安とかではない、不思議な安定感と言えばよいか。
自然の中にとっぷりと包み込まれたような。雨も温かかった。 
 
  30日朝、雨の白山室堂                 登山道から別当谷へ滝となって流れ落ちる雨水
途中、妙なものを見た。30センチを超えるかという巨大ミミズだ。
ミミズは主に土を食べているはずだが、何を食べると、こんなに大きくなるのだろう?
白山の土は特別な栄養が含まれるのか?
などと思いながら下っていると、なんと、大ミミズに食らいついている巨大ミミズに出合った。
食らいつかれた方は逃れようとして必死の様態、あまりにもザマザマしくて、カメラに収める気もしなかった。
すさまじい生物界の実態を見たような気がした。
自然界に溶け込んだようなあの安定感と、その自然界の一様態に慄きいっている自分、矛盾以外の何ものでもない。
ともあれ、無事下山して、Margoの運動会にも十分に間に合った。
初めての単独登山、なかなかに奥行きのある味わい深い山歩きとなった。 
< つけたし>・・・・・とは言え、こちらが本命なのですが 
翌10月1日のMargoの運動会は、見事に晴れました。
親バカならぬ爺バカと言われるのだが、鼓隊のドラム、組体操、涙が出るほど立派にできた。
(後ろ向きばかりですみません。雰囲気だけでも汲み取っていただければと・・・・)
よちよち歩きのときから5年間、ここまで育ててもらった保育園の皆様には、頭の下がる思いで一杯です。

そんなこんなで、運動会の動画と写真を編集するのに手間取って、白山登山のUPが遅れに遅れた次第です。
    
白山 2702m ( 室堂2450m 石川県 ) 
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 2011年9月29~30日 白山 単独行