山歩紀行

朝日連峰  以東岳 1771.4M     山形県鶴岡市・新潟県村上市 
人と交わり、草木と交わり、山気と交わる、そんな山歩きの楽しみを綴ってみた
 (リンクメニューの
Sは、スキー)
2012年9月8日~9日 朝日連峰 以東岳  天空の散歩道を行く



 先月末のこと、山の大先達Y氏が、不慮の滑落事故で昨日急逝という朝刊の記事を驚愕の思いで見た
 しばらくして、朳差岳方面から飛来するヘリの爆音、ご遺体搬送のヘリではと思い、路上に佇立し呆然として見上げた
 「歩くのがやめられねんさ、これは病気だね」と口癖のように笑っていた氏の声が、ヘリの爆音の間から聞こえたような気がした
 大先達の残した足跡の万分の一でも辿ってみたい・・・・、山歩きは続く

 今回は、朝日連峰以東岳
 村上市から胎内市にかけての海岸砂丘上から遠望する朝日連峰は、魅了される山容だ
 右端に大朝日岳、左端に以東岳、いずれも三角錐の屹立した山で
 特に雪山のときには、神々しささえ覚える、そんな山だ

 昨夏は、その大朝日岳に立った
 今回は、以東岳
 朝日連峰の両端から、ご来光を仰ごうとの魂胆だ
 同行は、あの槍ヶ岳のてっぺんに立った、岳人Haseと岳人Honjunの二人
 前回の飯豊連峰と同じ顔ぶれ

 
7:50 泡滝登山口発

この日、登山口は賑わっていた

小学生の一団が、大鳥池まで行くという
「自然塾」の旗が立っていて
日帰りの自然体験教室らしい

十数キロの荷を担いで一歩一歩登る我らを  
小学生の数グループが軽々と追越していく
母子で汗ふき汗ふき歩く姿も好ましかった

釣竿を担いだ若者の一団も追越していった
幻の怪魚タキタロウ狙いだろうか
 

ツリフネソウ 

吊橋を喜ぶ岳人二人
大鳥池までの登山道は
よく整備されていて、
しっかりとした吊橋、鬱蒼としたブナ林
大小様々な滝、山野草の花々
あくまでも透き通った谷川の水・・・

自然教室には最適な道に見えた

山腹から湧き出す清涼な水が
この上なく冷たくておいしい
水の豊かなブナの森をゆく

キツリフネ 

11:00 大鳥池に到着
大鳥池は、登山口に増して賑わっていた

タキタロウ小屋の管理人氏が
今日の以東岳山頂の小屋は満員だと言う
高校山岳部がこれから登るのだそうだ
避難小屋だから、人が入りきらない場合は
荷物は外に出してもらうことになると
高校の引率者にそう言い渡していた

心優しき我ら熟年組は、遠慮することにした
急遽、これから以東岳を往復して、
大鳥池に戻ってタキタロウ小屋に泊を決定

山頂のご来光は諦めた
腹ごしらえをして  11:35 大鳥池発

大鳥池で釣りを楽しむ人たち 

大鳥池の向うに目指す以東岳 
登りは、オツボ峰経由の稜線歩きを選んだ

三角峰に登りつくまでの尾根道は
傾斜が結構きついのだが、
我ら三人、高校生の集団やら若者やらを
スイスイと追抜いて行く

荷物を小屋に置いて軽身のせいもあるが
先頭に立つHaseさんの速いこと
日暮れ前には戻らなければと、頭の中で
コースタイムを計算していたらしい

いつもののんびりゆったり登山は豹変した 

登山道にオオカメノキの実
  目指す以東岳

稜線上、中央やや右に四角形の以東小屋
小屋の左側、木の葉のちょうど向うが
以東岳山頂
なだらかな丘のように見える

それにしても、以東岳は不思議な山だ
村上市から胎内市にかけての海岸砂丘あたりから見える
あの屹立した三角錐はどこにもない

穏やかでなだらかな山なみ、全く別の山に見える
 

稜線に出れば、そこはお花畑  イワショウブ 

ミヤマリンドウ 

ミヤマアキノキリンソウ 

天空の散歩道・・・・この稜線上を右端の以東小屋まで歩く 

13:20 三角峰を越えた水場の稜線から、遠くに月山 
 
ミヤマキンバイ

ミヤマコゴメグサ 
 
ウメバチソウ

ハクサンイチゲ 
 
タカネマツムシソウ

オヤマリンドウ  今が最盛期
 
ヒナウスユキソウ 花は終わっていた

14:00 オツボ峰 歩いてきた三角峰方面を振り返る 左下に大鳥池 
 
オヤマリンドウの遥か向うに大朝日岳

以東岳山頂に人が一人、その下方に以東小屋
山頂まで、あと一息

15:07 以東岳山頂 大鳥池が熊の敷物の形に見える
左側の二こぶラクダの山が摩耶山だとHaseさんが言う 

以東岳山頂から 遠くに鷲ヶ巣山と光兎山ではなかろうか 
 
大朝日岳へ続く縦走路 意外となだらかに見える

歩いてきた天空の散歩道を振り返る 
15:30には以東小屋に着いて
小屋の前のベンチに座って、ビールで喉を潤した

このビール、Honjunさんが山頂まで担いできた500ml 一缶
よく冷えていた
三人で回し飲み
そのうまかったこと

しかし、のんびりしてはいられない
日没までには、大鳥池の小屋に帰り着かなければならない
それに、夕立がいつかかるか分からない

とにかく急ごう、すぐに下山だ
帰りは直登コースを選んだ 

直登コースを急ぎ下る 右上に小さく岳人二人 
 
何とか日暮れ前に大鳥池まで下った 池の夕景
 
ヤマトリカブト さすがにストロボをたかないと写らない暗さにはなっていた
17:40 大鳥池のタキタロウ小屋に到着
管理人氏が、申し訳なさそうにしつつ無事の帰還を喜んでくれた
ヘッドランプも用意して登ったが、使う必要もなく
Haseさんのほぼ計算どおりのタイムで往復できた

これまで、若者に追越されても追越すことなど稀な我ら
今回ばかりは、まじめなピークハンターに大変身
やればできるもんだと、三人で大笑い

それにしても、こんな急ぎ働きは今回限りに願いたい
やっぱり、山歩きは、のんびりゆっくりがいい

暗くなって、小屋の外で、またまたビールで乾杯
岳人に敬意を表して不肖私が担いできた500ml 3本
まだ、ギンギンに冷えていた

ウインナーとエリンギをコンロであぶりながら、ささやかな祝宴
空は満天の星
うーん、やめられない 
 
早朝の以東岳と大鳥池
夜中に、雷と雨があったようだが
タキタロウ小屋はガラガラでゆっくり寝られた 

心優しく、高校生たちに譲ったのも事実だが
なーに本当は、定員オーバーの山小屋で
寝返りもママならずの状態で寝ることから
絶対に逃れたかったというのも事実

世の中、事実は幾通りもある 
 
出立前に記念撮影

オトギリソウ この花の横顔が好きだ 

棘がなかったので  タムラソウ
 
図鑑で引き当てると キバナアキギリ では
  この花の名前が分からない(右と左)
水が滴り落ちる岩場に密生していた
ダイモンジソウの葉に似ているが
花が違う

と、下山して2日後、Yoko長老に話したら、
さすがは専門家
即座に、なら、ユキノシタの仲間を探せと、
分厚い図鑑を出してくれた

一番似ているのは、フキユキノシタ 
 
   ゆっくり朝食を食べて 7:25 小屋を出立
途中、野の花を眺めたり
滝の冷気で涼んだりしながら

10:20 泡滝登山口に帰着

それにしても、水の豊かなブナの森の道でした
帰路は、大鳥集落のタキタロウ館で、おばさんから、だだっちゃ豆をいただいたり
そのおばさんから教えてもらった、カタクリ温泉「ぼんぼ」で、ゆっくりお湯に浸かったりして
とっても余裕のある一日でした

今回も運転のHaseさんに感謝です
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