槍の穂先3180m '13.8.2
  山歩紀行 2014
 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを綴ってみました

飯豊・石転び沢雪渓 '13.6.16
 
    2014年5月4日~6日 GW連休の三日間は谷川連峰山巡り
    第1日目 谷川岳1977m  第2日目 三国山1636.4m  第3日目 白毛門1720m

  第3日目・・・残雪の白毛門 緊張と快感と感動の山
  白毛門 1720m  群馬県みなかみ町 

11:17 残雪の急斜面を登る頂上アタック隊  「ピッケルをもっと深く!!」「アイゼンをしっかり効かして!!」 ときどき、Unq隊長の鋭い声が飛ぶ・・・・雪面に緊張が走る・・・・しかし、二人の顔は見えない

<5/6のルート> 7:15土合登山口-8:35標高1154m付近-10:15標高1484m松ノ木沢の頭-12:07山頂13:00-14:40松ノ木沢の頭-17:30登山口下山

登山口にある谷川連峰馬蹄形縦走の案内看板 最鞍部が清水峠
  1日目と3日目で、馬蹄形の両端を登ることになる
  中間の清水峠は、三国峠と並ぶ中世関東往還の要所
  いつの日か、ぜひ立って見たい所、馬蹄形縦走に憧れた
YouTubeは、こちらから
Unqさんのブログは、
こちらから

白毛門は、シラガモンと読む。珍しい山名だ。
山頂直下にジジ岩、ババ岩という巨岩が門のように立っていて、その門の間から望まれる山頂が、雪の季節、白い毛の顔か頭に見えるところからついた名だ。
と、前夜、ベースキャンプでJunjyさんがガイドブックを読み上げてくれた。
地図で分かるように、登山口から尾根筋を一直線に登る。只管登る。
その尾根道に、シャクナゲが咲き誇っていて、これは思わぬご褒美だった。
それに、タムシバが意外なほどに沢山の花をつけていて、目を楽しませてくれた。
2日前の谷川岳では、花の咲く高度はRWで駆け上がったのだから、今日は完全なご褒美だ。
などと余裕のあったのは松ノ木沢の頭まで。
Youmyさんは、ここで待機すると言う。
その先に行ってみて分かったのだが、山頂までの間、男3人でYoumyさんの危険察知能力というか直観力に、改めて感じ入ったものだった。

Unqさんは、チェスト・ハーネスというのだろうか、ロープをハーネスのようにしてJunjyさんをビレイすることにした。
それを見て、私など単純に、「ウォ、格好いい、TVのグレートサミッツみたいだ」などと言ってシャッターを切っていたりしたのだが、後で聞くと、Unqさんはそれどころでなかったらしい。
これほどの難斜面だと分かっていたら来なかったとブログに書いてあったところを見ると、いかに無事この斜面を登り、下りきるかで頭が一杯だったに違いない。

確かに、その難斜面に差しかかったときは、さすがの私も正直恐かった。
しかし、その緊張感がまた何とも言えず快いのだから、しょうがない。何やら、子どもの頃、悪友と山の崖斜面を登ったときのことが蘇る。
下りはもっと恐い。
恐いと思うから恐いので、恐いとは思わないで、緊張感を楽しむ。
勿論、神経を最大に尖らして、絶対の安全を確保しつつだ。
少年の冒険、老年の冒険、根は一つ。やっていることは、幾つになっても変わりがない。
緊張と、その後に来る達成感、安堵感、これは日常ではもう味わえなくなった。
だから山なのかもしれない。
もっとも、横浜から来たという同年代の単独者は、アイゼンは履いていたがピッケルは使わずストックで、同じ斜面を一歩一歩登り、下りていった。
馬蹄形縦走をしてきたらしい若者数人も難なく下っていったようだ。
グリセードかシリセードか、そんな痕跡も残っていた。
待機していたYoumyさんの話では、滑りすぎたらしく少し青ざめ顔の若者もいたようだとのことだったが。
巻機山からテント泊で縦走して来たという女性の一行も、大きなザックを背負って、その斜面を一歩一歩下っていた。
気のせいか、泣きそうな表情に見えた人も中にはいたようだが、それでも皆、気をつけながら無事下っていった。
だから、とんでもないほどに危険な斜面というわけではない。
それほど大袈裟に冒険を吹聴すべきでもなさそうだ。
もちろん、油断はできない。一歩間違えば山はいつも命が懸かっている。だから緊張する。
緊張して全身の神経を尖らせて安全を確保する。
それが山に登るということだ。

好んで危険に身を曝しているわけではなく、危険を避け身を守るために、身体と心と神経をフルに駆使しているのだ。
下りで、雪面がそこで一度途切れるという残雪の端の最後のステップに片足を掛け、体重をかけた拍子に、そのステップが崩れ、滑った。
即座にピッケルのブレードを雪面に押し込んだ。
それで、滑りは止まった。
ほとんど無意識の行動だったが、2日前の谷川岳で、シリセードでピッケルの制動を練習しておいた効果だったと思う。
一つ一つが経験になる。
小さな失敗を沢山積むことが致命的な失敗を起こさないことに通じるというのが、確か、失敗学の法則だったはずだ。

緊張・快感・感動、白毛門、行って見ていい山だった。

山頂から続く笠ヶ岳、朝日岳への稜線も好ましかった。その先は、巻機山に繋がるし、分岐すれば清水峠を通って湯檜曽川対岸に回り谷川岳までの馬蹄形縦走が完成する。
そそられる山道だ。
とりわけ、前日に三国峠に立ったからには、清水峠にはぜひ立ってみたい。
上杉軍団の主流上田衆の本拠坂戸城の麓を通る清水街道、今は車道すらない道。
その街道が越える峠、往時の旅人が見た風景をこの目で見てみたい。想いはふくらむ。
登れば登るほど、行きたい山が増えていく。さて、どうすっぺ。
人間の欲望は、きりがないものですな。

ところで、今回も愉快なエピソードが残った。
巻機縦走の一団が下ってくるので、雪面を外れた岩場で待機して、行き違ったときのことだ。
Junjyさんはいつもの如く、「気をつけてね。滑ると危ないよ。」などと、彼女たちに気さくに声をかけていた。FriendlyJunjyの面目躍如の場面だ。
しかし、繋いだロープを握りながらUnqさんは違和感を感じて、その傍らに立っていたらしい。
後で聞いたのだが、ここまで上がってくるまでのJunjyさんに、そんな余裕など絶対になかったはずだ。なのに、どこか練達者のような感じで声を掛けている。
それがどうにも奇妙だったというのだ。
その奇妙さ感をどう解説したらいいか、長い付き合いの私にもほとんど不可能事。
ま、全ては無事に下山してからの笑い話になったのだから、それはそれでよしとしましょうや。
何はともあれ、このようにして、GW3日間の山三昧は、無事に終ったのでした。
実に充実した三山巡りでした。
計画運行の全てを賄ったUnqさん、そしてYoumyさん、Junjyさん、楽しい山旅3日間、本当にありがとうございました。

7:30 やわらかいブナのミドリを味わう余裕のないほどの急登

尾根道に咲き誇るシャクナゲは、想定外のご褒美

8:35 1100mを越えた辺り、桧などの大木・古木が多い

大木の根の陰に咲いていたヤマナシの花
 危うく見逃すところだった

常に対岸に見えている谷川岳は
 登るにつれて迫力を増していく

10:07 1480m付近からジジ岩・ババ岩の門柱と山頂を望む

Youmyさんは松ノ木沢の頭1480mで待機
 男3人で山頂にアタック

白毛門山頂から稜線が続く笠ヶ岳、朝日岳
  その先が馬蹄形縦走路

山頂に立つUnqさん、その先遙か尾瀬の燧ケ岳か

谷川岳と一ノ倉沢の迫力
 あの絶壁を登るとは想像がつかない

下りはもっと恐い
   ここから先は撮影の余裕なく、一時中断

14:43 松ノ木沢の頭で無事合流
  待機して望遠で見ていたYoumyさんの方が、
  当事者よりももっと恐かったらしい

下山のこのミドリには、緊張で磨り減った神経を
どれだけ癒されたことか
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