槍の穂先3180m '13.8.2
  山歩紀行 2014
 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを綴ってみました

飯豊・石転び沢雪渓 '13.6.16
 
    2014年6月12日 雲中幻想のブナ林を歩く鋸山  
鋸山 765.1m  新潟県長岡市  

12:12 山頂近く、麓からは鋸の歯のように見える凹凸の稜線、そこは雲中幻想のブナ林

<今回のコース>
10:09登山口駐車場発-11:44花立峠-12:25山頂13:30-13:50花立峠-15:10登山口下山

10:09 若々しい足取りで緑滴る登山道に踏入る一行


昔、麓の街に5年も暮らし、朝な夕なに眺めた鋸山、ついぞ登る機会がないまま、四半世紀が過ぎた。

この日は、一年に一度の同期の会合。幹事役の中越の諸氏がこの山の登山を計画に入れてくれた。

いわば同期の登山クラブ。

メンバーは8名。
夜の懇親会は30名ほどだが、山に登る人は年々減っている。
だから、この登山クラブ、いつまで続くのか心配もある。


が、参加したメンバーの意気は盛ん。
いかにも梅雨らしい曇天で、麓から見る鋸山は、完全に雲に隠れていた。
あの中に入れば、雨に違いない。
そんな状況にもかかわらず、たとえ雨の中に入っても、そんなことは苦にもしない面々ばかり。

登山口で坦々と靴を履き替え、荷を担ぎ、特段意気込むわけでもなく、静かに淡々として登山道に入っていく。
その足取りは軽く、若々しい。
「よっこいしょ!」な~んて、誰も言わない。


登山道に入ってしばらくして、誰かが、誰にということもなく尋ねた。
「この花、なんて花だっけ?」

どこにでもある花だ、珍しくもない花。だが、名前が出てこない。

「こんな、ありふれた花の名を聞かないでよ!!」
と内心思いながら、出てこないのを焦る。

「う~ん、何だっけ? 確か、蛇の名がついたような。 ウワバミソウ?ちがうな。マムシグサ?ちがうちがう。だめだ、出てこない!!」

すると、また別の誰かが言う。
「こんなとき、Mさんがいれば、即座に回答が出るんだけどなー。」

Mさんとは、Murandoさんのことだ。
毎年、同期の登山クラブを楽しみにしていたはずのMurandoさん、気の毒に今回は業務多忙につき欠場とのこと。

う~ん、参った。今日くらいはMurandoさんの代わりを務めるいいチャンスと秘かに思っていたのに。
出だしのこの花で、すっかり信頼を失った。
以後、誰も花の名を尋ねない。



さて、下山時、当然同じところに同じその花は咲いていた。

「ヘビ・・・ウワバミ・・・そうだ!! ウツボだ。海のヘビだ!! お~い、この花、ウツボグサだよ。」

と言ったところで、最早だれも関心を示さない。
あれから4時間は経っている。訊ねたその人ですら、忘れているのだ。

花の名も、人の名も、出てくるまで何時間もかかる。
大汗かいて山頂まで行って引き返した頃には、訊ねたことさえ忘れている人もいる。
そんな高齢者の集団が山道を黙々と歩いた。

濃い雲の中の山道、いかにも幻想的な光景。記憶も思考もすべて幻想の中だったような気がしてくる。


そういえば、雲の下まで下山して、ようやく眺められた長岡の市街。あの街で暮らした四半世紀前のできごとも、幻想だったのだろうか。

夢幻の如くなり・・・か。


下山して、その夜宴会して、翌朝のこと。

登山クラブのH氏が部屋にやって来て曰く。
「いやー、夢の中にあんたが出てきて、もっとホンネを吐けとガンガン迫られて、いや、参ったよ。」

夢の中では、まだ若かった頃の熱い気持ちのままでいられる。

それもまた、
夢幻の如くなり・・・か。

宴会で、一年ぶりにあったN氏は言う。
「笹川流れで会ったのは、つい昨日だったような気がするな。」
笹川流れから、ちょうど一年になる。一年が一日だ。

速い!!

夢幻の如く、時間が超スピードで過ぎていく。
速いだけに、変化は少ない。
その分だけ、老いは進まない。
だから、皆、変らずに元気だ。
一年前とちっとも変っていない。

そう考えれば、速いことは悪いことではない。

それどころか、K氏など、去年の山道は覚束ない足取りだったのに、今回は、シャキッとして軽快に歩いている。

時間が一定速度を超えると逆向進行するというのは、確か、相対性原理の大法則だったはず。

我が同期の諸氏は、どうも、その大法則に則って動いているようだ。

時間は超スピードで流れていく。大法則下、我等の時間は動かず、ときに逆向き進行したりして。
全ては考え方ひとつ。ならば勉めて、前向きに都合よく考えたい。
人間所詮、自分の都合というシャボン玉の中で生きているのだから。


とまれ、中越の皆さん、お世話になりました。次回、中越でお世話になるときは、古希越えですなー。ハァ~・・・

クリンソウ  登山道沿いに、どなたか植え込んだようだ

11:31 緑のトンネルを抜ければ稜線、少しは楽になる 

11:35 鋸山山頂は濃い雲の中
 梅雨時ならではの山の雰囲気 

11:44 カンゾウ咲く花立峠
 ここは旧栃尾半蔵金と長岡を結んだ古道

11:59 雲中幻想のブナ林は、湿度100%

 ウラジロヨウラク   ガクがないのは今季初めて

13:01 鋸山山頂で憩う  立派な一等三角点があった

クルマバツクバネソウ? 違うみたいです
 まだ若いのではっきりしない

14:24 400mまで下がると
 ようやく雲の下に出て長岡市街が見えた

ハナショウブ これも植えたものだろうか
 路肩に数多く咲いていた

ナルコユリ 花の先の裾がフレアのように広がり始めている

15:00 緑に染まりそうな谷間、細い木橋を渡る

ウツボグサ  突然訊ねられるとこの名前がすぐに出てこない
   
 ウツギ  卯の花、ホトトギス鳴き夏は来ぬ
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