槍の穂先3180m '13.8.2
  山歩紀行 2014
 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを綴ってみました

飯豊・石転び沢雪渓 '13.6.16
 
    2014年10月12日  絶好天の妙高山 富士も見える大展望
        ~2日間で火打・妙高の2峰を巡る山行の第2日目~
           妙高山 北峰2445m 南峰2454m   新潟県妙高市

9:12 歓声飛び交い賑わう妙高山山頂  野尻湖が光り、遙か彼方に苗場山や上越国境の山々

9:23 山頂観望  白馬岳の後立山連峰から槍ヶ岳の穂高連峰まで、北アルプスの全貌

<第2日目のコース>
5:00テント撤収・5:30高谷池ヒュッテ発-6:17茶臼山-6:45黒沢池ヒュッテ7:00-7:21大倉乗越-7:53水場-9:04妙高山山頂10:02-11:33大倉乗越11:39-11:55黒沢池ヒュッテ12:52-13:34分岐13:41-14:47黒沢橋14:54-15:42笹ヶ峰登山口に下山

5:54 茜色の空に後立山連峰、足元は霜


<第2日目>
 YouTubeは、
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朝3時起床、テントの外がいやに明るい。一瞬、街灯かと思ったほど。中天に輝く月明かりだった。星も瞬いている。絶好天の予感。

朝食を済ませ、5時にはテント撤収。高谷池を発つ。
地面は霜が降りて真っ白、木道が滑る。
Unqさんの声に振り返ると、遙か後方、茜色の空に後立山連峰がくっきり。

茶臼山の日陰の西斜面を登って稜線に出ると、東側から朝陽が射して、一面の雲海。中越の山々が浮かび、滝雲が流れている。

米山が頭を出し、その西奥に山二つ、弥彦・角田。その更に西は大佐渡山脈に違いない。小佐渡の山も薄く見える。
ずっと北に見えるのは、新保岳の山塊のはず。なら、光兎山も見えるはずと探したが、これは見つからなかった。

息を飲む感動。ただ佇立して感激するばかり。


茶臼のピークを越えると、黒沢池とヒュッテの特徴ある屋根が見えてきた。

日陰の斜面を下って、ヒュッテに荷を下ろす。
ここからは、軽身で妙高山に向う。

外輪山を登って、大倉乗越で一休み。昨日登った火打山が朝の陽を受けている。

外輪山の火口壁を下り、左手に長助池を見て、日溜りの山腹を歩く。
やがて鞍部を下りきると、水場。冷たくて美味しい。その水を補給。

妙高山に登り付いた斜面は、日陰。冷たい風が吹き下りてくる。両手を使うほどの急斜面ながら、汗はすぐに引っ込む。

息を整えながら、ふと振り返ると、後立山連峰がまた一段とくっきり見えている。
7月に、現地に踏み込んでも全貌を見せてくれなかった白馬岳が、今日は、連峰全体でその全貌を顕わにしてくれている。

感動。本日何回目になるか。


妙高山山頂直下で、下方に光る野尻湖を見た。鏡のような湖の後方には、上州・越後の山々が横に長く雲の上に連なって見える。
暫し見とれているまに、メンバーは既に登頂して、山頂碑の前で記念撮影の準備に入っていた。
場所取りの順番も急ぐのだ。俄に現実社会に戻された。


山頂は、それほどの賑わい。続々と人が上がってくる。
そして、口々に歓声を上げる。

何しろ、360度の大展望。
口を閉ざすことの方が難しい。

早朝から何度か感激を与えてくれた白馬の後立山連峰が、全貌を顕わにしてデーンと横たわっている。
その左方向に、槍ヶ岳。135ミリのズームでアップすると小槍まで見える。
槍の穂高連峰から白馬の後立山連峰まで、北アルプスが端から端まで見えている。


大感動を繰り返しながら、妙高山のもう一つの山頂・南峰妙高大神へ移る。
そこで、さらなる大感動!!


数十年独りで各地の山を巡っていると言う信州在住の山女史に出会った。
この方、大神の岩上に立って誰彼となく説明する。
こんな日は滅多にないと興奮口調で。

正面に、八ヶ岳、その左方に富士山が見えていると言う。
言われてよく見ると、確かに、うっすらと円錐に近い台形状の山影が見える。
見える人と見えない人がいるくらいの、薄い見え方だが、確かに富士の形だ。

新潟県で唯一富士が見えるのは妙高山頂と、聞いてはいたが、これほどの形に見えるとは、素直に驚いた。
帰宅して地図で測ってみると、妙高山から富士山頂まで直線で179km余、その間に、富士を隠す高い山がない。
八ヶ岳と瑞牆山の中間に富士が屹立していることになる。
これはすごい日にめぐり合えた。

件の女史の説明は続く。

槍の穂高連峰が左に途切れるところが乗鞍、その左に見えるのが御嶽山だと。

実は、登りの途中すれ違った下山者が、噴火した山が見えたと言っていた。焼岳のことかと思ったが、Unqさんは御嶽山のことだろうと言う。
御嶽山まで見えるのかと、半信半疑ながら、もしそうだったら、犠牲になられた方々に手を合わせたいと思ってはいた。

その御嶽山が、やはり見えた。噴煙までは確認できなかったが、あの山で、今日のこの山頂のように大勢の登山人が秋の山を満喫して寛いでいたのだろうと思うと胸が痛む。
手を合わせ、御霊安かれと黙祷を捧げた。
今この瞬間も、大勢の関係者が行方不明の人を探して苦闘している。そのことにも頭を下げた。

さて、説明を終えた女史、やおら、聳え立った岩の上にデンと腰を据え、お握りをパクつき始めた。
その威風堂々とした姿、さすが数十年の単独キャリア。本日、初めて人間に感動した。

帰路の後刻談。
このときの女史の姿について、Youmyさんは、食べていたのは大福だった、中にあんこが入っていたのをはっきり見たと言う。Unqさんは、お握りだったと言い張る。米の粒粒まで見たと。
私はといえば、実は、そこまで見ていない。ただ、岩上で片膝立ててパクつくのはお握りが相応しいと、その光景の印象で判断しただけだ。
私は常に印象派。Unqさんは分析派、Youmyさんは観察派。

それはともあれ、この日も後ろ髪を引かれつつ、下山に移った。


帰路の外輪山トラバース道で、Keynさんが滅多にないことカメラを構えている。
見ると、長助池の谷間の山腹が見事な色合いに彩られている。朝とは全く違う表情だ。
日の光の射し方で、こうも色彩が変るものかと驚き、高山での今年の紅葉はこれが見納めかもしれないなどと呟きながらシャッターを切った。


黒沢池ヒュッテに戻って、腹ごしらえして、下山。
荷は重いものの、黒沢岳の裾野の平原を淡々と下る。
あとはこのまま下る一方だなどと言われて安心していたら、途中、黒沢岳の山腹を巻くように登る箇所があった。
登りになるととたんに歩速が落ちる。小学生の家族連れにも先を譲るほど。
だれだ?下るだけだなどと。
ま、山はいつも油断大敵。


黒沢橋まで下山して、そこの紅葉にビックリ。
昨日の朝通ったときとは、全く違った色合い。
橋から先の登山道のブナ林の黄葉も、そうだった。

昨日の登りでは、こんなに感動するほどの色鮮やかさではなかった。

一晩で、これほど紅葉が進んだということか。
それとも、朝と夕の日の射し方の違いか。
あるいはまた、登りの辛さで、周囲を見る余裕がなかったか・・・。


後ろから来た一団の中年を超えたおっさんが、突然、

あーきのゆーひーのてるやまー

などと、大きな声で歌いながら通り過ぎた。
よっぽど気持ちよかったのだろう。分かるなーその気持ち。
我等は誰も歌わなかったが。

歌うどころか、昨日と今日の、この色彩の違いのわけを、ぶつくさぶつくさと述べ合っていたのだから、感性派というよりは、理知派というべきか。


それにしても、最後の最後まで、愉快な感動の一日。

これだけ頻繁に山に入っていても、こんな日に出合えるのは、一年に一度あれば上等、ご褒美以外の何物でもない、などと真に自分中心に考える登山人たちでした。


いつものことながら今回も長駆運転、焼肉亭のIke会長さん、企画引率の上に25キロ超の荷担ぎのUnqさん、そして、これまたいつものことながら、細やかな心配りの食事係りで、食材運搬・調理のKeynさんとYoumyさん、本当にありがとうございました。

山・人共に最高最良の火打・妙高山行でした。

6:02 茶臼山の稜線、朝陽射す雲海に中越の山々
  佐渡も浮かぶ

6:42 黒沢池とヒュッテが見えた 

6:43 茶臼山を下る
  中天に一晩中テントを照らしてくれた月

7:22 外輪山を越える大倉乗越で
  火打山を眺める影法師二つ

7:34 外輪山内壁を進む、行く手の急壁を登ると妙高山頂

9:01 岩場の急登が続く山頂への長い道も、もうすぐ終る

9:04 妙高山山頂・北峰
  先着メンバーは記念撮影準備中

山頂観望
  外輪山とその先に昨日登った火打山 中央に焼山

穂高連峰遠望
   槍ヶ岳、大キレット、穂高の山々がくっきりと見える

もう一つの山頂・南峰妙高大神 その岩上からの大観望

八ヶ岳が見えて、その左中央に富士山がうっすらと見える

望遠で
   こんなに円錐台形状の富士が見えるとは、驚きです

右が乗鞍、左が御嶽山と教えてくれる人がいて、合掌・黙祷

11:05 帰路、長助池と外輪山は
朝とは別の色合いを見せてくれた

12:46 黒沢ヒュッテ前から見た茶臼山

12:59 黒沢岳裾野の湿原を横に見て下る 

13:06 広大な笹原にダケカンバの白が映える下山路 

14:50 黒沢橋から見上げた谷間の絶景

同じく黒沢橋から
  陽射しのせいか、昨日とは全く景色が違う  

14:58 ブナ林の黄葉も今日は一段と輝いている

昨日との違いに感動し、かつ不思議がり、理由を詮索する人
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