槍の穂先3180m '13.8.2
  山歩紀行 2014
 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを綴ってみました

飯豊・石転び沢雪渓 '13.6.16
 
    2014年10月20日  西国の雄・石鎚山は修験の山
         石鎚山 弥山1972m 天狗岳1982m   愛媛県西条市 

11:30 山頂稜線に出ると石鎚山南側の斜面が目に飛び込んできた、そこは色鮮やかな絶景

<この日のコース>
8:30 RW山頂成就駅発-8:57成就社-9:17八丁(鞍部)-9:56試しの鎖-10:22夜明峠-10:34一の鎖-10:52二の鎖-11:24三の鎖-11:32弥山山頂12:03-12:20天狗岳山頂-12:38弥山山頂12:43-13:02土小屋分岐-13:18夜明峠-14:00八丁(鞍部)-14:22成就社-14:39RW山頂駅着

8:39 落葉折敷くブナ林のリフト分岐点、
Okkaaはリフトで展望台へ


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石鎚山は、天童荒太の「永遠の仔」で、鍵となる事件の舞台だった。読んだのはもう15年も前のことだが、神の山、霊峰、西日本最高峰と書かれていたのが、事件の起きた険しい岩場の描写と共に印象に残っている。

その石鎚山に、Okkaaのリクエストに応えた四国巡りの途中で、登ることにした。

前夜は、麓近くのキャンプ場「石鎚ふれあいの里」で2人用ケビンを借りた。
バス・トイレ付き、寝具、炊事用具、暖房と至りつくせりで料金は2900円、これは安い。


そこを早朝出立し、石鎚山登山ロープウェーの始発に乗る。
Okkaaはさらにリフトに乗り継いで展望台へ上がり、気ままに山中をうろつく予定。

当方は、既定のコースを山頂目指す。

この日は月曜日、山中は森閑とし、たまに登山人に会うくらい。成就社の土産物店も開店休業の様子。聞こえるのは、折り敷く落ち葉を踏締める自分の足音くらい。

試しの鎖に出た。
試しとあるから、試してみるだけにした。
数メートル登って引き下がったが、下りの方が恐かった。
間の悪いことに、引き下がっている途中に、若者数人がやって来て、「止めましたか」などと笑っている。

後のことになるが、この一団とは天狗岳でも会った。
同じ笑顔で、「試しの鎖で止めた人ですね」などと言う。
こっちはむきになって、「でも、一と二の鎖は登ったよ」などと言ったが、どうも聞いていないようで、
「下り用の鎖を登ったら楽でしたよ」などと言う。

そのことを私に伝えたかったのであって、決して、止めたことを笑っているのではなかった。
この一団とは、天狗岳の行き来ずっと一緒だったが、人を嘲笑するような人品の劣る若者たちではなかった。
どこの山でも、会う若者たちは人柄がいい。どうしてだろうかと、いつも思う。


ともあれ、このままでは、関川クライミングクラブの名折れ、顔が立たない。

一の鎖に出た。
勿論、今度は、ザックのベルトを締め直し、一眼レフは腰のバックに納め、気合を入れて登った。
岩は垂直に近い。足場は無い所の方が多く、その時は、鎖の輪に足を掛ける。

何とか登り切ったが、スリルは満点。次の鎖は、さてどうしよう。
などと思って歩いている間に、二の鎖に出た。

頭とは別に、体の方は何の躊躇もなく鎖を握り岩に足を掛けていた。
しかし、二の鎖は長い。下から終点は見えない。その上、これまでの鎖と違って、繋ぎの丸い輪は小さく、代わりに鐙のような三角の鉄がぶら下がっているが、それも、たまにしかない。

登りついてみたものの、中間くらいで、足場を失った。

さて、どうなる?恐怖心が涌いてくる。こりゃ、まずい。
このままでは身体が強張って、いずれ力が抜ける。
ロープクライミングなら、テンションと叫んで、命綱を張ってもらうところだが、ここでは、どうにもならない。

3日前の晩、21kmマラソンを走ったとMargoに自慢したら、「じーちゃん、無茶すんなよ」と一蹴された。そのMargoの顔とセリフが胸をよぎった。
無茶だったかな?

とにかく恐怖心を振り払うことだ。
こんなところで落ちるはずがない。登れないような所だったら、一般に開放しているはずがない。だから、大丈夫、大丈夫。
自分に呪いを掛ける。

と、不思議なもので、恐怖心が和らぐと、足場も見つかる。
何とかかんとか、登り切った。

登り切って、登山道に這い上がったら、迂回路を上がってきた若い女性が、さも尊敬の眼差しを向けて、「鎖場から来たんですか」とおっしゃる。
当方、真顔になって、「恐かった。とてもお勧めできません。」
すると、彼女破顔一笑、とっておきのゆる顔になって
「勧められても、行きません。」


かなりの緊張を強いられて疲れた。三の鎖は果たして登れるか。
とは言え、彼女のように素直に迂回路に回れるか。クライミングクラブに顔向けできないぞ、こりゃ。

などと悩み悩み歩いていたら、その三の鎖に出た。
なんと、工事中で閉鎖の看板。
助かった!!
後で、山頂から三の鎖を覗いて見たら、かなりの長さ。勿論垂直。手こずっただろうな。
天佑とはこのことだ。


さて、山頂。ここは弥山。
もう一つの山頂は、天狗岳。
弥山の先に鋭い岩峰が切立っている。そこが天狗岳。

そこに登っている人影皆無。
山頂にいる人々も誰も行く気配がない。

どうしよう。まずは、様子見しながら腹ごしらえ。

しばらくすると、ツアーらしい一団が上がってきた。
ガイド氏は、危険だから天狗岳には案内したくないと言う。メンバー数人が、計画書に天狗岳が入っていると言い張る。
協議の結果、希望者だけ連れて行くということになった様子。

しめた、チャンスだ。
大急ぎでザックにコンロなどを戻して、天狗岳行きの支度をした。
すると、それまで山頂にいた人々も同様に動き出した。

何のことはない、皆、様子見をしていたのだ。

弥山から天狗岳への道は、険しかった。

とりわけ、天狗岳山頂間近の岩盤の上は、切れ落ちた断崖絶壁で、這って下を眺め、そのまま四つん這いで進む。

そんなとき、山頂から下ってきた人が、その絶壁の岩盤上を立ったまま歩いて通り過ぎていった。

それを見て、「よくも歩けるもんだ」と感歎の声を上げていると、近くにいたガイド氏が、こともなげに
「なに、この絶壁を下から岩登りで上がってくる人だっているよ」と、おっしゃる。

それを聞いたら、こんな所で四つん這いになっていたのでは、クライミングクラブの名折れだ。顔向けできない。と意を決して、立ち上がった。
大丈夫、大丈夫、皆歩いている場所だ。
またまた、例のお呪い。

岩の上を歩いた。やればできるじゃない。

そういえば、屋根の雪下ろしもそうだ。恐いのは初めだけ。慣れればなんともなくなる。

「永遠の仔」では、この岩盤上に立った男が突き落とされるのだ。
ひとたまりもない、クワバラ、クワバラ。

もう一つ。その作品では、確か、この岩場で主人公の少女がブロッケン現象を見る場面があったように記憶している。

ガスが濃くなってきたし、その上、午後からは晴れるとの予報で、もしかしたらと、淡い期待もあったのだが、それは叶わなかった。
いかにもブロッケンの出そうな場所、少々残念だっったが、長居は無用。
例の気持ちのいい青年たちと一緒に弥山山頂へ戻った。


とういような状況で、石鎚山は紛れもなく修験の山、スリル満点。
関川クライミングクラブの一員としては、日頃の練習を生かした実践の場ともなりました。

9:11 八丁坂途中、山頂へ行かない人のための遥拝所

9:59 試しの鎖  途中まで試しに登ってシャッターを切った

10:06 岩山の紅葉が見頃

10:40 一の鎖  登り切って振返ると次の人が登ってくる

10:56 二の鎖 ここは正直恐かった

11:11 二の鎖をどうにか登り切った 下を覗くとゾッ

11:32 弥山山頂 月曜で静か、土日は超満員だったとか

11:36 弥山山頂の石鎚神社前から見た天狗岳

12:03 弥山山頂を鎖を伝って下り、天狗岳へ向う

天狗岳へのヤセ尾根
 
断崖絶壁の上を歩く人

四つん這いになって、こわごわ垂直断崖の下を覗くと・・・

目が眩むほどの下に歩いてきた登山道、遙かに成就社も見える

12:23 天狗岳山頂に立つ
  周りはガスで、弥山山頂も見えない

12:36 天狗岳から戻り、鎖を伝って弥山山頂に攀じ登る

12:38 戻ってみると、山頂はガスっていても結構賑わっていた

13:19 夜明峠まで下ると、山頂のガスが晴れて全容が顕わに

天狗岳  左端に山頂の石碑、その右に覗いた岩壁も見える

弥山 石鎚神社の鳥居が見える  右の建物は頂上山荘

14:02 八丁坂途中で、
もう一度木の間から見える石鎚山を振返った

14:20 成就社近く、落葉の道はひっそりと静かな道

14:37 RW山頂駅近くから、
四国山地の山々 遠くの尖峰は沓掛山

14:41 RWのゴンドラの中から 四国の紅葉
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