八ヶ岳 '14.6.29
  山歩紀行 2015

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります

白山 '14.7.21
 
    2015年7月26・27日 花と大展望の鳳凰三山縦走
   第1日目 広河原~白鳳峠~高嶺~地蔵ヶ岳~鳳凰小屋
高嶺2779.1m 地蔵岳2764m  山梨県南アルプス市・北杜市 

15:45 賽ノ河原から下山時に振り返ったオベリスク、まさに自然の造形美

<第1日目のコースとタイム>
広河原テント場発4:50-5:14白鳳峠登山口-9:29白鳳峠10:12-12:17高嶺12:23-14:32赤抜沢ノ頭-14:44賽ノ河原-15:10地蔵岳オベリスク15:23-賽ノ河原15:45-16:24鳳凰小屋テント場

4:56 広河原から見上げた、朝日に輝く北岳バットレス

沢山の花々、大展望の景色などなど、YouTubeにUPしてあります。
  → こちらから どうぞ。


仙丈ケ岳の翌日は、いよいよ鳳凰三山縦走です。

前日に同じく夜中2時半に起床、テントの中で炊事・朝食。
テント撤収と荷詰めの作業が加わった分昨日より遅く、4時50分出発。
最初の目標ポイント白鳳峠へは、登山口から標高差約900m。
林道からいきなりの急登で、まるで崖に登りつく様、ストックが普段の長さの半分で足りるほど。
この登り、テント泊の荷を背負っては、コースタイムは殆ど無理。それでも最初の1時間の休憩でGPSは1800mを示していたから、300m1時間のペースでは登っている。
ただし、急ぐ必要のない日程。休憩をとりつつ、花と眺望を楽しみながら進む。
登山口に向う林道で、すでに様々な花に出会ったが、急斜面に登りついても、花々は絶えない。
とりわけ、レンゲショウマ。
一昨年の北岳行で、広河原山荘から入ってすぐに一度見たきりの花。だから、今回で2度目。
UnqさんとYoumyさんは初めてということで、特にUnqさんは、少々興奮気味。確かに、興奮するだけの風情ある花だとは思うが。
白鳳峠を越えて高嶺の稜線になれば眺望は抜群。
八ヶ岳の驚くほどに広大な裾野の端から端まで見えて、更には、蓼科山、霧ヶ峰の車山、白馬の後立山と眺望は広がり、もちろん、北岳、甲斐駒、仙丈は常に見えているし、やがて地蔵のオベリスクが見え、観音岳に続く白い稜線などが見えてくると、もはや、急ぐなどというもったいないことはできようもない。
とりわけ、八ヶ岳は去年登った際には曇天で眺望は効かず、今日のような光景はまったく拝めなかったから、2年分の眺望をまとめて味わっているようなもの。
山容はもちろん良かったが、霞棚引くような薄雲の下に透かして見える裾野も良かった。
まるで空を飛んで眺め下ろしているような気分。稜線を歩きながら、ずっと八ヶ岳とその裾野を見ていた。
もっとも、白鳳峠から高嶺への稜線は標高差300mだが、ここも結構きつい登りで、両手使いの岩壁もある。
夜叉神峠入口の駐車場で、係員が、鳳凰三山縦走は夜叉神からの方が楽で、広河原からはきつい、と言っていたのはこのことかもしれない。
ただし、テント泊の大荷物を背負ったら、この急下りは逆にきついし危なかろう。
だから今回のコース選定は正解。
話は翌日のことになるが、薬師岳から夜叉神駐車場までは、長く緩やかに下るから、爪先が痛くて困ったが、ここを登りに使ったら、それこそ、重き荷を背負い長き道を行くが如しで、それはそれできつかったにちがいない。
だから、やっぱり今回のコース選定は正解だったということになる。
そもそも、Unqさんは、小屋泊まりの軽荷でここを縦走するのは堕落だと思っているようだ。

さて、高嶺でたっぷり眺望を楽しんで、地蔵岳に向う。
オベリスクが目の前に見えているのに、直行できず、道は赤抜沢ノ頭を迂回しているのだが、その辺りから、風景が変わる。
鳳凰三山を象徴するあの白い峰が続くのだ。
一昨年北岳から見たとき、一瞬、夏なのに雪が降ったかと見まがったほどの白い峰だ。
花崗岩が風化して真っ白になっていて、その下に崩れた白砂が積もっている。それが雪の正体だった。
その白い岩の下に、これまたどういうわけかピンクを濃くした紅色のビランジがそこかしこに咲いている。
そのきれいなこと。白い山肌に合わせたような色。
それにしても、一昨年、北岳でみたタカネビランジは薄桃がかった白い花だったはず。
だからこれはタカネビランジではなくオオビランジではないかと疑った。が、Unqさんは、イヤイヤこれこそ正真正銘タカネビランジと言い張る。
で、またいつもの言い合いが始まったと、Youmyさんが割って中に入る。
賽ノ河原からの下りのことだ。
Youmyさん大発見。白っぽいビランジを見つけて、花びら4枚。赤いビランジは花びら5枚。だから白花のと赤花のと、種類が違うと。
これで論争決着、Youmyさんにアイス5個。
でもUnqさん、簡単には引下がらない。人一倍の大荷物を背にしたまま屈んで精密観察。
白い花びらが1枚散っただけのこと。もともとどちらも同じ5枚で同じ花。アイス5個没収。
帰宅して図鑑を調べて分かった。何のことはない、北岳のタカネビランジは白い色をしているのだそうだ。
シロバナタカネビランジというのあるそうだが、北岳のは、ピンクでも白味が強いのだそうだ。
北岳の白いのも良かったが、鳳凰の紅色のも、実にいい。
驚いたのはもうひとつ、ハクサンシャクナゲ。色鮮やかなのだ。
シロバナにピンクの筋、内側上弁の薄緑。まことにはっきりとしている。
周囲の景色が白いと、本来白い花も、必死になって色を出すのだろうか。気持ちは分かるような気がするが、さて。
さてさて、本日のメーンの目標は何と言っても、あの有名なオベリスク。
遠くからも目立つ尖塔だが、近づくと、何とも威容で偉容で異様。大迫力の岩の造形。
神が積み上げたか、はたまた、宇宙人の創作か、自然にできたとはとても思われない。
大体、どうなれば、こんな形が自然に作られるというのか。
もっとも話は前後するが、白鳳峠への途中斜面にゴーロという場所があって、岩がゴロゴロ、異様な地形が広がっていた。
部分的には、まるで焼走りの様でもあるのだが、火山岩ではなく、どう見ても縞模様のある堆積岩。その一つ一つが、河原の礫のように角が削れて丸くなっている。
これなども、どうしてこんなふうになったのか、考えても分からない、不思議な造形だ。
地学の素養無き者があれこれ素人推測したところでどうにもならない。不思議は不思議のままにしておくのがいい。
オベリスクもそうだ。
不思議のまま畏敬の念を払っておくことにしよう。
と思いつつも、とにかく岩があればまずは登ってみたいと思うのがクライマーの端くれだ。
3人で、その岩に取り付いた。
どこまで登れるのか。
尖塔の最先端にはロープが取り付けてあるのが見えた。
この尖塔に、石を結んだロープを投げ上げて割れ目に食い込ませ、初めて登ったのは、明治37年、かのウエストンだとハンドブックに書いてあった。
まさかその時のロープのままということはないだろうが、あのロープ、どうやってあの先端に固定してあるのか、引っ張っても大丈夫なのか、手はロープを頼りにするとして足を掛ける所はあるのか、などなど不安は消えない。
誰か登っている人でもいれば、心強く後に続くのだが、あいにく、誰もいない。
元気な若者が二人、我等より先に岩に取り付いたのだが、上まで行かず、早々に諦めて下って行ったらしい。
もう一枚の大岩を登れば、そのロープの下端に手が届く岩の上に立てる、という所まで登ってみたものの、そこから先は、下りの危険度を考えて諦めた。
立ち入り禁止にもなっていないし、注意の看板もないところを見ると、そんなに大事故は起きていないのだろう。
一昨年北岳で、Haseさんが言っていたのだが、若い頃ここに登って転げ落ちたことがあるとか。
そのときは、あのてっぺんから落ちた話かと思ったが、来てみれば、多分そんなことはないだろう。
あそこから落ちたのなら、今ごろは・・・ま、そんなことを言っても、今更どうでもいいことだ。

もう既に行動開始以来11時間が経っている。
心は充実でパンパン。身は疲れ果ててクタクタ。
今日の終点、鳳凰小屋へ、40分かけて300m下ったのだが、その長いこと。
沢を挟んで対岸に、明日登り返さなければならない斜面が見える。
Unqさんは、300mの登り返しは1時間分、何の大したことがあるものかとおっしゃるのだが、私には、明日のあの急斜面の登り返しに半日はかかるのではないかと思ったほど。
疲労は人間を悲観的にする。
テントを張って、缶ビールを飲んだら、もう飯は喉を通らない気分。衆議一決、夕食はビールとつまみだけにして、もう一缶。
あとは、寝袋にもぐりこんでバタンキュー。
睡魔に襲われながら、この疲労が抜けなかったら、明日は、もしかしたら青木鉱泉へ下ってタクシーで迂回などと最悪事態もよぎったが、あっという間に熟睡。
朝いつものように2時半起床、なんと疲れはすっかり抜けていた。

続きは、第2日目で。

5:14 白鳳峠入口 意外にもネットの中へ、そこは殆ど崖面 

7:17 2年ぶりに見たレンゲショウマ  何とも優しい色形 

7:30 白鳳峠への道は急登の連続、鉄梯子もほほ垂直

10:17 白鳳峠を越えれば高嶺への稜線、眺望は抜群 八ヶ岳

11:43 北岳、登山口の広河原が足元直下に

12:03 高嶺の山頂尾根に上がる岩場もほぼ垂直

12:13 岩峰に立てば、遮るものなき大眺望 

12:23 本日の最高点、高嶺山頂でしばしの憩い

12:48 高嶺を下る、左端にオベリスク、右は観音岳

13:30 タカネビランジ、色の鮮やかさにびっくり

13:41 ハクサンシャクナゲ こちらも驚くばかりの容色

14:44 賽ノ河原、下界に甲府の盆地が広がる 

14:45 賽ノ河原から見上げたオベリスク、天指す尖塔

14:55 近づけば、岩の塊、大迫力 

15:04 とにかく岩があれば登りたくなるのがクライマー魂

15:14 ウヒャ~、この高さ!! さすがのクライマーも・・・

頭の上にロープが・・・

でも、大事をとって、ここまで

15:33 地蔵ヶ岳からの甲斐駒ヶ岳

15:52 鳳凰小屋へ下る
 名残惜しく何度も何度もオベリスクを振り返りつつ
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