八ヶ岳 '14.6.29
  山歩紀行 2015

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります

白山 '14.7.21
 
    2015年7月26・27日 花と大展望の鳳凰三山縦走
   第2日目 鳳凰小屋~観音岳~薬師岳~夜叉神峠
観音岳2840.7m 薬師岳2780m  山梨県南アルプス市・北杜市 

6:33 観音ヶ岳から、薄い雲海の下に、海の底のように下界が見えて、とにかく絶景!!
  左に八ヶ岳、右は瑞牆・金峰・国師、甲武信は見えているか、それとも陰か
  中央は荒船山か、妙義はどうだろう  八ヶ岳の後ろは浅間山のはず
  山頂での山座同定も、登山の大きな楽しみで、帰宅してから地図でまた楽しむ 

<第2日目のコースとタイム>
鳳凰小屋テント場4:30発ー5:41稜線に合流-6:33観音ヶ岳6:54-7:26薬師ヶ岳7:37-7:51薬師小屋-9:00南御室小屋9:30ー10:07苺平-11:31杖立峠-12:46夜叉神峠12:50-13:35夜叉神峠駐車場。

4:51 急登の林間に朝陽が射し込み、ホッと一息


Unqさんのブログ「鳳凰三山」を、 →こちらから ご覧ください。

YouTubeのスライドショーは,
 → こちらから どうぞ。

この日も、2時半に起床。
食欲はやはりない。高カロリーの行動食を間断なく食べているので、そう心配はしていないが、朝食は無理して食べることにした。
例の山用アルファ米、こいつが食欲を失わせる元凶なのだが、今朝は熱湯を多く入れて粥状にし、さらに梅干味を練り込んで、何とか半分強は腹に詰めた。

テントを撤収して4時半前には出立。すぐに梯子場あり、シラビソ林の山腹を急登する。
1時間10分で地蔵岳からの縦走稜線道に合流。標高差300m、ほぼコースタイムだ。
昨日はバテ気味で悲観したのが、一晩熟睡すれば元気は回復だ。
が、それだけではない。実は、今朝の荷詰めでYoumyさん、共同荷の私の持ち分を黙って自分のザックに詰め込んでくれていたのだ。そういった配慮のお蔭も多分にあった。

それにしても、Youmyさんの体力たるやただ者ではない。
下山した後のことだが、刈安の町へ下りて格安の市営浴場に入った。そこの入口は2階にあって、普通の家屋の2倍はあろうかというその階段を、私はおろか、さすがのUnqさんですら、やっとやっとで足を運び上げたのに、なんとYoumyさんはといえば、トントントントンと軽やかに駆け上がったものだ。どうも、身体の作りが違うのではと、Unqさんと思わず顔を見合わせてしまった。
そういうUnqさんにしたって、人一倍の大荷物を背負ってくれていたのだから、長い下りの負担は相当のものだったはずだ。

そういった、二人の温かい配慮のお蔭で何とか3日連続の山行を完遂できたというわけなのだが、それで話は終ってしまうので、元に戻すと。

鳳凰三山を結ぶ主稜線に出てしまえば、そこは昨日以上の絶景の連続だった。

まず、雲海がよかった。
八ヶ岳の裾野の上は薄雲で、レースを透かしたように下界が見える。
昔、佐渡のとびっきり澄んだ海で泳いだことがある。ずっと下の深い海底の岩や藻や貝が小さく見えて、空に浮いたら、下界はこんなふうに見えるのかと思ったものだ。
あのときの感じを思い出した。
空に浮いて、薄雲の下の下界を見ているような気分。
もしかしたら、人間は空を飛べないがために、高い山や塔に登って、その気分を味わいたいと思うのだろうか。それは、人間の本源的で潜在的な欲望なのかもしれない。
な~んて、哲学的なことをチラリと考えた。
数日後のことになるが、ある会合で、なぜリタイア後に山に登る人が多いのかと迫ってくる人がいて、ここぞとばかりに、鳳凰山で得た哲学を披露したら、そりゃぁ屁理屈だろーと一蹴されてしまった。
やっぱり、そこに山があるからサ、でやめておけばよかった。

それはさておき、雲海は、八ヶ岳から南に離れるほど濃くなって、富士山は、その濃い雲海に見事に浮かんでいたし、三ツ峠山、雲取が遥か微かに雲海から頭を出していた。瑞牆・金峰・甲武信の山塊は、海に浮かぶ船のようにも見えた。

それに、行く手右には、常に北岳が、間ノ岳と農鳥を従え、でーんと大きく構えて、鳳凰三山を見守っているよう。
後ろには、あの威容の甲斐駒。なぜ来なかったかと、叱られているような気もしてくる。

富士の右隣で、雲から顔を出しているのは櫛形山だろうとUnqさんが言う。花の百名山だとも。
帰宅して地図を見ると、その先に薄く見えていたのが日蓮の身延山ということになるだろうか。RWで登ったあの山頂から、北岳が正面に見えたものだ。
そういえば三ツ峠の山頂で、凍えながら日の出と富士を見たのも懐かしい。

と、そんな具合で、これまで登った山、今後多分登るだろう山、いつ登るかは分からない山、どれもまったくワクワクさせる山たちがずらりと並んでいた。
富士にまだ登っていないのも、気がかりといえば気がかりだ。

今回のように、白馬・雪倉・朝日のつもりが、思いもよらずこうやって鳳凰三山に来ているのだから、あの山々にだって、いつか必ず行くことになるだろう。

昨日は無理だと思った300mも、一歩一歩歩いていれば、必ず登り着くことができる。
山も一つ一つ登っていれば、いつかは未知の山にも登る日がやって来る。
千里の道も、一歩から。一つ一つ、確実にだ。

夜叉神峠まで下ってきた頃、高い峰には雲がかかり始めていた。
週間予報も、晴天は今日まで。
4日間、ずっと好天に恵まれた。
本当にありがたかった。

この4日間も、食って出して只管歩いて感動して眠る、単純行動の繰り返しだった。
山の行動原理は単純だ。だから、いい。
リタイア組に登山人が多いのは、現役時代、人間社会の複雑さに辟易としたせいかもしれない。
一蹴した彼の仁は、まだまだうんざりするほどは人間社会の複雑さに触れてはいないのだろう。
それを言っておくべきだったか。
単純系の疲労は心地よさを伴うが、複雑系の疲労は困憊に至るのだ。

さて最後に、 沢山お世話になった同行のUnqさんYoumyさんはもちろんのこと、突然の不都合で急遽参加取止めとなったKeynさんからは美味しい食料をいただいたし、4日間も山行放浪をさせてくれたOkkaa、そして、この絶好天、諸々のことに感謝、感謝、大感謝。
とにかくとにかく、素晴しいの一言に尽きる、今回の山行でした。
ありがとうございました。

5:58 観音岳への稜線に出れば、昨日からずっとのこの絶景

6:00 そして、この花タカネビランジも、昨日からずっと一緒

6:15 振り返れば甲斐駒と地蔵オベリスクの間に北アルプス 

6:22 オベリスクの先は後立山連峰、白馬も見える

6:23 甲斐駒の先には穂高連峰、槍ヶ岳もくっきり

6:33 そして、雲海の富士 その左下は三ツ峠山

6:33 朝陽の方角に瑞牆・金峰・国師の三峰、甲武信はその陰か

6:39 観音ヶ岳山頂 鳳凰三山の主峰 2840.7m

6:41 賑わう山頂で、Unqさんも感無量の態

6:52 空に浮かんで澄んだ海の底を眺める気分、これは絶景

7:04 薬師に向う、富士の右は櫛形山か、その先に身延山 

7:07 ずっと一緒の北岳、間ノ岳・農鳥を従えて

7:33 薬師ヶ岳山頂で遊ぶ子、何とも贅沢な遊び場

7:38 立ち去り難くも、後ろ髪引かれながら薬師を下る

7:59 薬師小屋を過ぎて、最後の岩登りを楽しんだYoumyさん

8:12 稜線歩きはここが最後、眺望を惜しむUnqさん

10:06 苺平 南御室小屋からここまでは緩やかな登り道

10:37 木の間が空いて、北岳に最後のご挨拶 アリガトー

12:46 夜叉神峠、荒ぶる神を祀り鎮めたところとか
  高い峰には雲、天候は下り坂、4日間の絶好天に感謝です
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