八ヶ岳 '14.6.29
  山歩紀行 2015

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります

白山 '14.7.21
 
    2015年3月7日  葡萄鼻山山頂からスキー・スノボ滑降
             葡萄鼻山 798.3m  新潟県関川村
                         ↑ 山名クリックで、地図表示 

13:05 山頂稜線から滑降直前  後に立烏帽子692mの頂、その先下界は我家の辺り

<この日のコース>
大石ダム発6:45-7:20林道分岐7:35-9:25梁山泊9:47-10:46山頂稜線-11:10葡萄鼻山山頂12:46-12:54山頂稜線端13:06-13:42梁山泊-15:24林道分岐15:41-16:21大石ダム着

6:41 大石ダム 湖面は凍結・積雪で真っ白


  行程中の各地点の様子は
  YouTubeに画像があります。

   →こちら からどうぞ。


この日の天気予報は、最悪だった。3日前までは全国的に雨。
「奇跡が起きたら葡萄鼻でも行きましょうか」と、Unqさんからの気のないメール。
葡萄鼻山は、我家からいつも見ている山。その特徴ある形の山に、いつか登ってみたいと思っていた。だが、登山道はないという。
だから、雪のある時に登ってみたいと、希望をUnqさんに伝えてあった。

そして、奇跡は起きた。
2日前には予報は曇りに変わり、前日には晴れマークまでついた。

しかし時既に遅く、他の会員諸氏は悪天予報を受容れていたらしい。前日のUnqさんのメールには、「二人だけだから、スキーを持って行ってみますか」とあった。

もちろん、二つ返事を打った。

山スキーは昨年3月の蔵王熊野岳単独行以来だ。
あの時の醍醐味をその後散々に吹聴しておいたから、Unqさん、今日の日を秘かに期しながら一シーズン虎の穴に入り込んでスノボ訓練を重ねたのに違いない。


スキーやスノボを担いで山小屋「梁山泊」に着いた頃、葡萄鼻山一帯を我庭にしているTさんが、我等の後から上がってきた。見るとショートの山スキーを履いている。

「昨日、電話をもらったから様子を見に来たのさ」などと冗談を言いながら、「もう少し先までトレースをつけておくから」と、先行してくれた。重荷の我等と違って、シールを貼った短スキーの登りの速いこと。
やがて、ブナの木々の間を器用に滑り降りてきて、「急斜面の下までトレースをつけておいたから」と言い、颯爽と滑り下って行った。

その急斜面、Unqさんは、昨年の白毛門を思い出したというくらいの急傾斜で、スノーシューの前爪を雪面にくい込ませてやっとの思いで登り上がったほど。
帰宅してからカシミールで断面図を作ってみたら、最大斜度は30度あった。
登っている最中は、この斜面をどうやって滑り下るか、そればかり考えていた。
何しろ、ブナ林の中なのだから。予め万一の場合用にヘルメットを用意しては来たのだが、木との衝突事態はなんとしても避けねばならない。


さて、山頂稜線に上がって眺めた景色は最高のものだった。
光兎山、朳差岳、二王子岳、大境山、慣れ親しんだ山々が白く輝いていた。
目の下には、関川村の盆地が広がり、荒川に架かる温泉橋の袂近くが我家の辺りだ。
そこをバックに何枚も写真を撮ってもらった。

帰宅してから二階に上がって、葡萄鼻山を眺めてみた。あの山の稜線に立つことができた。長い間の念願が叶ったと思った。
しかも、山スキーなどという予期せぬ形で。


さて、その山スキーだが、ブナ林の急斜面滑降は、スリル満点、爽快無比。

途中、雪面に隠れたブッシュにスキー板を引っ掛けて転倒したら、斜面を二、三回転。見かねたUnqさんがスノボを脱いで、外れたスキーを取りに斜面を数メートル登ってくれた。
雪は軟らかく、転んでも爽快。
木々の間を縫って滑るのは、なお痛快。

Unqさんは、木の葉返しとやらの技で狭い木々の間を下る。
こちらは、斜滑降大回りターン。

ブナ林と、その下部のダケカンバ林を滑り抜け、小屋近くの緩斜面に出てホッと一息。窪地にはまって尻餅を着いたついでに、しばし、雪上に仰向けになり、空を見上げた。
そのときの、空の青さと雲の形と、梢の膨らみかけた冬芽と。
なんとも言いようのないきれいさだった。山に包み込まれる気分というのは、こういうのを言うのだろうか。

願わくは花の下にて春死なん、と言ったのは西行だったが、雪の上、膨らみかけた木の芽の下、というのも悪くはない。

梁山泊から下は、杉林の中、緩斜面をこれまた快適に滑り降った。かなり余裕も出て、Unqさんのボード滑りを撮影することもできた。

ブナ林急斜面の滑降も撮影しておくべきだった。残念なことをした。初体験で、それほどの気持ちの余裕なく、今思えば、それもまたやむなしか。

難所は、その後に待っていた。
杉の木立は、若杉の林に変るのだが、そこはもはや、林間の滑りは出来ない。
なんとなれば、若い杉は下枝が繁り、それが雪面に垂下がり、林間には立ち入ることすら出来ない。だから、登山道になっている狭い隙間を下るのだが、その雪面がまた凹凸激しくて、ボーゲンや横滑りでどうにか下るのだが、凹地にはまれば、腰を取られてすってんころりん。
そこから立ち上がるのが、これまた至難の業。
ストックに全力をかけて立ち上がるその労力たるや、登りの労力の比ではなく、これで残る体力の殆どを使い尽くしてしまった。

ほうほうの態で若杉の林を抜ければ、林道に出る。
傾斜の緩い林道だから、あとの下山は楽勝と思いきや、とんでもないことが待っていた。

雪面の幅が狭い上に、雪質がとにかく重い。それに、傾斜が緩いとはいえ長く続く林道のこと、当方のゲレンデスキーでは、うっかりするとスピードが出すぎる。

で、やむなくボーゲンで制御するのだが、重い雪のボーゲンは、太腿も尻も腰も、もうパンパン。
思うように制御できなくなって、スキーは勝手に沢筋に向って行こうとする。やむなく尻で制動。
事無きを得たものの、そこから立ち上がるのに一大苦労。

林道出合いまで戻って、スキーやスノボを外し、スノーシューに履き替える頃には、もうヘタヘタ。
さすがのUnqさんも、「これだけヘタヘタになったのは、去年の鷲ヶ巣以来かな~」

思えば、こんなに転んだのも、子どもの頃のスキー以来のような気がする。
そういえば、あの頃、スキーといえば今のようなゲレンデなどなく、専ら山でのスキーだった。

童心に帰れたから、だから、ヘタヘタになっても爽快だったのだ。
いい年こいてと笑われそうなのだが、ホントにホントにオモシロカッタ~!!

どうやら、山スキー虎の穴に、はまってしまったらしい。

9:35 梁山泊前 後から追ってきたTさんと記念撮影

この辺りはTさんの庭 途中までトレースをつけてもらった

9:54 標高550m辺りのダケカンバ林は珍しいとのこと

10:05 ダケカンバ林の上部にブナ林が広がる

10:20 山頂稜線直下の急斜面手前までトレースをつけてくれたTさんは、ショートスキーで苦もなく林間を滑り下って帰って行った 

10:40 山頂稜線への急斜面を登る カシミールで調べると最大斜度は30度 下りにここをどう滑り降りるか、そのことだけを考えていた

10:46 Unqさんが山頂稜線に登り上がった

10:49 山頂稜線から我家の辺りの眺望 光兎山が白く輝いていた

10:51 山頂稜線から、右に朳差岳、左に大境山 

11:10 葡萄鼻山山頂に立つ 後方下界は我家の辺り 

11:18 二人の山頂 後は、尾根伝いに行けるという大境山

13:01 山頂稜線にシュプールを描いてポーズ 

13:06 いよいよ大滑降!!  眺望の見納め、緊張のひととき 

滑降途中は撮影の余裕無く、どうにか山小屋近くの緩斜面まで下り、ホッとして見上げた空のきれいだったこと!! 13:38

14:03 梁山泊から続く杉林内を気持ちよく滑り下るスノボのUnqさん 

16:11 狭くて重い雪の林道下りには随分手こずったが、マンサクが開花していて、へとへとになった身を慰めてくれた

16:59 帰宅してから我家の2階から撮った葡萄鼻山
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