2015.7.27鳳凰三山
  山歩紀行 2016

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります
 
2015.9.21栂海新道へ
 
   2016年7月17日 日本一の信濃川367㎞の源・甲武信ヶ岳
甲武信ヶ岳2475m 三宝山2483.5m  長野県川上村・山梨県山梨市・埼玉県秩父市   

9:46 大河信濃川の源流はいよいよ細く 水源地(源流点)まであと100mほど

源流点 ここから367㎞の水の旅が始まる 地中から音もなくしみ出ているその水の冷たくておいしかったこと

毛木平登山口駐車場発6:50-8:30ナメ滝-9:50信濃川水源地10:10-10:28分岐
-11:00甲武信ヶ岳山頂11:37-12:09三宝山-12:47尻岩-15:08十文字小屋15:15
-16:37登山口着


動画をYouTubeにUPしました。
→こちらから どうぞご覧ください。



甲武信ヶ岳は、ずっと以前からの憧れの山の一つだ。

最早30年近くも昔のことになる。
信濃川が滔々と流れる長岡市に5年暮らした。その大河の源が、遥か300㎞も遡った甲武信ヶ岳にあると、その当時、聞いた。

甲武信ヶ岳。
その名が、まずいい。
甲州・武州・信州の三国境であることから名付けられた山名だと知ってもなお、何となくコブシの花咲く山のようで、あるいはまた、頑固一徹の古武士をイメージするようで、とにかく響きの良さに惹かれた。

その山頂直下に、大河信濃川の水源地があるという。
正確には源流点というらしいが、とにかく367㎞日本一の長さの川の始点。一体全体、どんなふうに始まっているものか。
いつか必ずこの目で見てみたいものと思ってきた。

さらに言えば、源流の村、長野県川上村は高原レタスの一大産地。
河岸段丘上の畑地へ、その上方の源流支流の沢水を引き込み、スプリンクラーで散水してレタスを栽培しているのだと、当時、村の関係者から話を聞く機会があった。
源流の水が長岡市まで流れ下り、源流の水で育ったレタスが長岡市まで運ばれていた。
当時から、因縁を感じていたものだ。

元気なうちに、必ず一度は行ってみようとは思いつつも、名高く魅力ある山は数多く、甲武信ヶ岳の優先順位が繰り上がることは、中々なかった。

その想いが、今回期せずして実現した。
3連休山行の当初目的地は甲斐駒だった。
昨年、北沢峠にテン泊して、仙丈に登り鳳凰三山を縦走して、結局目の前の甲斐駒は見送った。
あの摩利支天の岩峰に怖気ついたわけでは決してないのだが、悔いは残っていた。
だから、今回は甲斐駒優先。
ところが、残念なことに、予報が最悪。
3日間とも比較的好条件なのは秩父山地の金峰・瑞牆・甲武信。ただし中日の2日目は、雨が降る可能性ありとの予報。

北沢峠で雨に遭ったら身動きできないが、廻目平ならどのようにも臨機応変対応出来るというリーダーの判断で、中日に甲武信、3日目に金峰となった。

お陰で、私にとっては願ってもない30年来の念願の甲武信ヶ岳行が実現した。
念ずれば通ず、とはこのことか。

まず、川上村のレタス栽培の現場を見ることができた。
畑一面の白いマルチで、雪でも降ったかと見紛う景色。
段丘上には、豊富な水量でスプリンクラーが稼働中だった。
スプリンクラーが行きわたらない畑も多いのだろうか、水タンクを積んだ散水車がひっきりなしに行き来していた。
早朝の畑は、収穫と出荷の真っ最中。相当の人手が頼りなのだろう、外国人も沢山働いていた。
テン泊の食事で、Youmyさんが現地産レタスをサラダにしてくれた。さすが本場もの、歯触りよく、実においしかった。

そして、水源地へ。
川上村の村内を流れる千曲川は、情けないくらいの只の川になっていた。
これが信濃川のなれの果てかと言ったら、それは言い方が逆だろうと皆から笑われた。
村内の平坦部を流れる何の変哲もない只の川が、いったん山に挟まれた沢部に入ると、様相は一変する。
さすが、源流。
水は、あくまでも清く、流れの石は苔生し、爽やかに音を奏でて流れ下る。
これこそ、源流。

水は徐々に細くなり、ついに源流点。
流れはピタリと行き止まり、その「点」の先に水はない。
その「点」はといえば、差し渡し30センチほどの透き通った水のたまり。
湧き出しているようには見えないが、そのたまりから下へ水が細く流れているところを見ると、地中からしみ出すように湧いているに違いない。
1mほど下方を見ると、たまりからのか細い流れは、意外なほど水量を増している。つまり、源流点の下の各所からわずかずつ水がしみ出して、集まっているのだ。
それらのしみ出し箇所の最上部が源流点というわけだ。

その「点」のたまりの水をすくって飲んでみた。
冷たさといい、うまさといい、天下一品。
30年来の想い入れもあって、何杯も何杯も、腹いっぱいになるまで飲んだ。後先も考えずに。

源流点までは、川沿いに登る。だから、道は比較的緩やかだ。
そして、どこの山でもそうだが、沢伝いに登れは、その後には必ず尾根筋に出るための急登が待っている。
ここも例外ではなかった。
水を飲みすぎた重い腹を抱えての急登は、実につらい。
重さだけではない。
血液が急に薄められて、酸素運搬能力が低下するのだからたまらない。
最近では滅多に頼らなくなったストックを2本出し、それに身を委ねながら何とか這い上がった。

息を切らせて稜線に上がれば、眺望は一気に開け、雲海の上に富士が見えた。
もっとも、この日は、3日間の中でも天候は谷間の日。雲が多く、それほどの眺望が効かなかった。とは言え、雨が降っても文句の言えない日。一日中晴れてくれたのは僥倖としか言いようがない。

展望以外で、稜線で待っていたのは、花。
甲武信ヶ岳は、実は、コブシの山ではなくてシャクナゲの名山だった。
ハクサンシャクナゲがまだ咲き残っていてくれた。
去年、鳳凰三山でみた花と同じで、この辺りのハクサンシャクナゲは、白花に入った緑とピンクの筋の色が鮮やかだ。木も大きく、花の房も大きい。
最盛期には、さぞかし見事な花の山になるのだろうと想像できた。

と、まあ、このようにして、想い入れ深い甲武信ヶ岳の山頂に、多少息を切らせつつですが、立つことができたのでありました。

あ、源流点の水のこと。
ペットボトル2本を満水にして、担いで登った。
1本は、山行中の飲料用。もう1本は、言うまでもなくOkkaaへの土産。
急坂尾根のきつさには、計1ℓの水の重さも、もちろんあったのですが。

帰宅した翌朝、早速、貴重なその水でコーヒーを沸かしてOkkaaに振る舞った。
味は・・・、もちろん天下一品でしたね。ウン‼

6:24 毛木平へ向かう途中 川上村の高原レタス、朝の収穫・出荷に大わらわ

7:23 信濃川(千曲川)の源流に沿って、道は淡々と遡る

8:32 ナメ滝 大岩盤の上を源流の水が滑り下る、その清涼感は一級品

9:36 苔生す流れ、水はあくまでも清く

9:53 千曲川信濃川水源地標 367㎞の始点に立って大感動

10:43 水源地からは急登、稜線に出ると視界が開け、かすかに富士の姿

11:00 甲武信ヶ岳山頂 人気の山のこの賑わい

念願の甲武信ヶ岳に登頂して、またまた大感動

山頂から、中央遠くに明日登る金峰山 左に国師ヶ岳 瑞牆山は右稜線の陰か

12:12 三宝山山頂 甲武信ヶ岳より高く埼玉県最高峰 一等三角点設置

13:03 尻岩を過ぎて 折り重なった岩が何個も連なり、まるで将棋倒し

14:27 ハクサンシャクナゲの咲く大山、その先の特徴ある岩山は両神山か

大山の稜線から、眼下に川上村 白ビニルのレタス畑が光って見える

14:38 難所の連続、ここを通過すれば、まもなく十文字小屋

15:37 カラマツ林の急斜面、九十九の道をトレランよろしく駆け下る

16:29 サルオガセのハンモック 間もなく朝の登山道と合流してフィニッシュ
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