2015.7.27鳳凰三山
  山歩紀行 2016

 人と交わり、草木と交わり、山気と交わり
それら一瞬の表情を写真で切り取る楽しみも広がって
単独行もいいし、仲間とならなおいい
そんな山歩きの楽しみを今年も綴ります
 
2015.9.21栂海新道へ
 
   2016年9月3日 秋田駒ケ岳 そこは天空の弥陀浄土
秋田駒ケ岳 (男女岳)1637.1m  秋田県仙北市   

14:12 男岳(おだけ)山頂1623mから、眼下に光る田沢湖

13:46 標高1530mの山上に広がる阿弥陀池と秋田駒ケ岳最高峰・男女岳(おなめだけ)

アルパこまくさ10:39発バス~八合目発11:13-11:44片倉岳展望台11:51-12:24
阿弥陀池13:06-13:23男女岳13:35-14:11男岳14:25-15:10片倉岳展望台-
15:29八合目15:50発バス~16:15アルパこまくさ



低気圧を逃れて北上

今回も、晴天域を探しに探し、ついに一路北上となった。

台風12号の影響か、西から晴天域は狭まり、当初予定の高妻山は、日替わり予想の状態。
不確実性大。
安全確実性を旨とする我らが山岳会、向かうは晴天確率の最も高い、東北の山。

例によって、車中スマホで天気検索。
頼りにするは、
Webサイト
「てんきとくらす」の「高原・山」

全国各地の山が網羅されていて、実に頼りがいがある。
このサイトのお陰で、これまで、雨合羽をザックから出したことがないほど。
それによると、秋田駒は、初日午後、山頂の天気状況はA、麓も晴れ。
翌日午前になると、山頂はAだが、麓は曇りとなっている。
迷うことなく、初日は秋田駒へ。

まずは、バンガローの鍵を預かれば、下山が多少遅くなっても安心と、ベースキャンプの田沢湖畔へ直行。
潟前山森林公園キャンプ場から見た田沢湖と対岸の秋田駒の姿に、一同、登る前から大感動。

田沢湖にドライブで来たのは、もう相当昔のこと。
あの頃は、山に関心がなかったからだろう、秋田駒の印象が全くない。
八幡平の自動車道を突っ走ったのに、山頂の駐車場で休んだだけで、すぐ近くの山頂にさえ行っていない。
今思えば、もったいないことをした。


山上の弥陀浄土

それはさておき、すぐに秋田駒山麓のアルパこまくさ駐車場へ。
ここで、バスに乗り換え、30分ほどで八合目に到着。
ここは標高1300mほど。
山上の阿弥陀池は1530mだから、標高差230mのなだらかな山道を1時間ちょっと歩くだけ。
Okkaaは隊列を離れ、独りゆっくりと山歩を楽しむ。
我らは、一足先に阿弥陀池に到着して、しばしの休息。
さてさて趣深い風景かな。ここは、さながら天空の浄土。

藤原頼通は、大金を投じて宇治に平等院を建て、この世に浄土を体現したという。
しかし、大金をかけるまでもなく、高山に上がれば浄土を思わせる霊地は多い。
月山に白山に、立山に、吾妻山に・・・弥陀ヶ原、阿弥陀池、浄土平・・・。
死後の霊は下北の恐山に集まるとか言われるが、あんなおどろおどろしいところはごめんだ。
私だったら、ここ秋田駒山上に途中降下する。
こんな穏やかな青空の下で、の~んびりとここで空中を漂えたら、どれほどの心地よさか分からない。
その上、花の季節だったりしようものなら、ここは、天空の楽園に違いない。
もっとも、Ike会長さんやUnqさんが以前来たとき、花盛りではあったものの、ここは強風が吹きまくっていたとか。
地形を見れば、たしかに風の吹き抜ける構造だ。
そんなときは、月山の弥陀ヶ原にとどまろうか。
もっと近く、朳差の長者平だっていい。もしかしたら、長者平は浄土平が訛って伝わったのかもしれないぞ。
そこも風が強そうだったら、天気を調べて、白山の弥陀ヶ原に遠出したっていい・・・。

おいおい、何の話だ。
それでは、今の我らそのままではないか?
もしかしたら、現世の我らも頼道と変わらず、生きながら浄土探しの旅を繰り返しているのかも?

などと、妄想を巡らせながら、池の傍らで昼食をとって、やおら最高所の男女岳へ登る。


男岳の眺望


山頂で、暫し眺望を楽しんだ後、阿弥陀池に下って、次は、男岳へ。
男岳は、すり鉢山の男女岳と違い、岩の稜線をもった変化のある山。
その岩稜の北側(阿弥陀池と反対の側)は、ユーミン谷と呼ばれる深いカール状の窪地。
花で名高い秋田駒の中でも、チングルマが群生するという有名な場所。
今回は、花の時期は外れているので、その谷には降りず、まずは男岳の山頂稜線を歩く。
素晴らしい眺望。
西を見れば、眼下に光る田沢湖。
その左方、南に遠く和賀岳と真昼山地の山々。
和賀岳は、今は盛岡に住む古い友人F君の生地・旧沢内村の山。
何年か前、仙台神室の山頂で、宮城の山人から、東北の山なら和賀岳へと勧められた山。
まだ見ぬ山だったが、こうやって目の前に眺めてみれば、行ってみたいと思いは募る。
いつか登ってみたい。きっと、登る日が来るだろう。

目を北に転じれば、一目でわかる八幡平。
その左方に、離れた双こぶがなだらかにつながった特徴ある山。
あれが森吉山だと言う。
何度か、聞いたことのある山名。
明日登るのは、あの山でどうだろう。

実は、明日は、すぐ隣の乳頭山が候補にあがっていた。
秋田駒から見る乳頭山は、別名の烏帽子岳がふさわしい形に見えた。

駒から乳頭山へ、縦走ルートが通じている。
秋田駒へは、多分、花の盛りの時期に再訪するだろう。
そのときに乳頭山の縦走ルートを辿るのも悪くない。
この時期に、この山系二山は、なにかもったいない気もする。

などと、もろもろ思いを巡らせて、初日の夜のバンガローで、二日目は森吉山へとなった。
もちろん、決定には、スマホ情報も大いに貢献した。
何しろ、明日の乳頭山は雲多く、森吉山は快晴と出たのだから。
もっとも、この決定の裏には、森吉ならゴンドラがあって、Okkaaでも楽に山頂まで行けるだろうとの、Ike会長さんとUnqさんの温かい読みも込められていたのだった。

おっと、話は先に進みすぎた。
男山稜線からの眺望。
東方面は雲多く、岩手山も隠れていたが、早池峰らしき山影は見えたようだ。
下山時、片倉岳展望台を過ぎた辺りで、雲の間から、一瞬岩手山の山頂が顔を見せてくれた。
去年登った山、さすがに、挨拶をせずにはおられなかったのだろう。

以前Unqさんたちが来たとき、ガスの中で秋田駒の全容は、ほとんど見えなかったとのことで、そのとき同行していた、今は亡き前会長のYさんに、この山の全体像を見せたかったと、しみじみ言う。
いやいや、大先達のYさんのこと、とっくに天空を飛んで、この山の弥陀浄土にもやってきているに違いない。
今頃、空の高みから、オメサンガタ、イマゴロヤッテキタンダカネなどと、笑いながら眺めているような気が、私にはする。
多分、私もそうするだろうから。

ともあれ、山は一度では分からない。いい山は、何度でも行くべきだ。
とはいえ、行きたい山はどんどん増えて、二度目に行きたい山もどんどん増えて、さてどうすっぺえ・・・。


田沢湖といえば辰子姫

下山して、キャンプ場に戻る際、そのすぐ下の湖岸に立つ、たつこ像を見に行った。
驚いたことに、像の周囲には、説明看板らしいものを探しても、一切ない。
土産店があり、見物客も結構来ているというのにだ。
像の隣に建つ神社には説明看板があったことからすると、たつこ像も辰子姫伝説も、つまりは、説明の必要もないほどに、、よく知られているということなのだろうか。

翌日の長い帰路の途中、例のUnqスマホで検索してみた。
出た出た。たつこ像も辰子姫伝説も、詳細に分かった。
なるほど、もしかしたら、解説はスマホでどうぞということか。

ゴテゴテと説明看板を立て並べてある観光地は、それだけで時代遅れを自己表明しているに等しい。
ということになる。

もはや、知識の大共有化時代。
かつては20万、30万出して買ったコンピュータだが、今は、8万程度で買える。
しかも、ポケットに入る大きさで。
持ち運び自在。
圏外でさえなければ、山の上でも移動中でも、どこでも検索できる。

かつての、新聞を読み本を読むのが、一部の限られた人だった時代、知識を右から左に横流しし、切り売りすることにも意味があった。
しかし、現代はもうその必要はない。
あの本にこう書いてある、この本にはこう書いてあると、得意げに披露したところで、その程度の知識は、8万円のコンピュータ(スマホのこと)から、たちどころに引き出せる。
せめて、知識と知識をつなぎ合わせ、自分なりの新たな価値づけをするのでなければ、他人に発信する意味はない。
肝に銘じべきと。






花の時期を外れても
多く目についたのは、
ウメバチソウ、ウゴアザミ、エゾオヤマリンドウ、

それに、このオクトリカブト

9:49 田沢湖畔の潟前山森林公園キャンプ場 対岸に秋田駒 

11:09 秋田駒八合目 バスでここ(1300m)まで来れる登り易いコース

11:44 片倉岳展望台(赤土の広場)標高1440m 眺望が開け眼下に田沢湖

12:24 阿弥陀池 天空に広がる弥陀の浄土 右は横岳

13:24 秋田駒最高峰・男女(おなめ)岳山頂1637.1m 左に男岳1623m

13:45 阿弥陀池まで降って、正面の男岳へ向かう

14:01 男岳に登り始めた稜線上  分岐から右は花で名高いムーミン谷

ウゴアザミとムーミン谷、その先に丸いお椀のような小岳

14:07 男岳山頂への稜線  左奥は、和賀岳か 

14:13 男岳山頂から北方遠望 幽かに森吉山 その右奥は八甲田か

男岳山頂から南方を遠望  あれは和賀岳か、いつか登ってみたい山

14:24 山頂の見納め 右に女岳、中央に小岳、その先に大焼砂

14:31 男岳から眼下の阿弥陀池を目指してを降る 右は横岳

15:11 正面笊森山と湯森山の間の雲から一瞬岩手山 左端は乳頭山

16:20 アルパこまくさのバス停で降車 登ってきた秋田駒がクッキリと

17:10 田沢湖対岸まで戻って、たつこ像
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