綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
 
 4月23日 雪まみれ 童に戻る シリセード
二王子岳1420.1m  新潟県新発田市  地理院地図は→こちら
~山歩紀行目次へ~ 
登山用語でシリセードといえば聞こえはいいのですが、有体に言えば、幼時に遊んだ尻橇(ケツゾリ)のことです。残雪期の二王子岳はシリセードのメッカ。急坂で名高い「油こぼし」を始め、痛快に滑り下れる長くて急な斜面が何か所もあるのです。跳ね返る雪しぶきで、顔どころか全身雪にまみれ、歓声を上げて一気下り。その爽快さ、痛快さ、まさに童心返るのひとときです。
この時期の高山は、下は春、上は冬。二つの季節を行き来して、雪景色と雪遊びを楽しみ、春の花と芽吹きを眺める。なんとも、得した気分になれるのです。
渡辺伸栄watanobu 
 
春と冬の境界に、雑木林の赤い芽吹き。ここから下方は、ミドリ萌え出した春のブナ林。上方は冬芽固い樹々と厚い残雪、冬の世界。が、それでも、柔らかい春の陽射しを受けて、固い針葉樹の杉の葉も柔らかい緑の色に見える。
油こぼしの手前、標高1200mのピークをトラバースする。ここの構図が、この時期のお気に入り。雪の斜面に登山人、その先に五頭山。雪山の雰囲気がよく出ている。今日は雲が低い。
油こぼしを登り切った山頂の稜線は、雲の中に入り、氷点下。昨晩の雨は、高山では雪、樹々の先には凍てついたエビのシッポが張り付いて、まさに冬山の様相。この斜面を2年前はスキーを担いで登り、帰りは爽快に一気に滑った。最高の天然ゲレンデ。
垂れ下がった不思議なエビのシッポ。よくよく見ると、エビのシッポの中心に極細い糸のような繊維がある。木の皮の繊維が剥げて、そこに付いたエビのシッポと一緒に垂れ下がったようだ。何とも妙なアイスツリー。
下山の油こぼしを、待ってましたとばかりにシリセード。下りの登山人が次々と滑り降りる。これを楽しみに来たと言わんばかりに。ズボンのままで尻を着く人も多いが、それでは尻濡れになるので、我らは専用?のビニルシートを使う。これがまたよく滑る。両足にはじかれた雪が顔や腹に当たって雪しぶき、雪まみれ。前が見えないまま、ジャンプ‼ イテ~。
冬から春へ下る。遠くに弥彦・角田の山並と二本海。上空の雲、あれが山頂の高さ。あの雲の中から下界に降りてきた。暖かい下界が恋しいような、凍えた天空が懐かしいような。
シリセードの坂は、次々と現れて4回ほど。どの坂も、急で長い。が、必ず下は窪地になって自然に停止する。谷間にまくれ落ちる心配もなければ、立ち木に激突する心配もない。だから、シリセードのメッカ。無心に遊んだ童に戻れる一瞬。
 
登山口に近づけば、春の山。清流の滝のそばで水しぶきを浴びているのはコシノチャルメラソウ。ここまでの間に、今季初めて会ったのはイワウチワ、ヤマネコノメ、コミヤマカタバミ。それに、紫色の濃いショウジョウバカマ。
 
そして、アズマシロカネソウ。前回(2年前)も見たのだが、その群落は滅びかけていた。盗掘でなければいいのだが。この一叢も、絶対に盗掘などしないでもらいたい。山野草は、自生地で眺めてこその花。
 
<コースとタイム>
二王子神社発6:15-7:25一王子7:35-8:25定高山8:35-10:25山頂(避難小屋)12:05-13:15定高山-13:45一王子13:50-14:55二王子神社着
詳しい様子や花の画像などはYouTubeに→こちら
 
ページのTOPへ