綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
 
 6月5日 ハナイカダ ついに発見 笑われて
三吉山574m~葉山687.4m 山形県上山市  地理院地図は→こちら
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東根マラソンの翌日は只管走組恒例の山登りです。山形県三番目の葉山(上山葉山)へ、峰続きの三吉山から登るコース。登り口にはニッコウキスゲの群落あり開花の真っ最中でした。そして、登山道で見つけたのが珍しい植物のハナイカダ。あまりの嬉しさについ素っ頓狂な声を発したのが大失敗、散々嘲笑される羽目になってしまいました。附録に、喰い付かれたダニの処理方法あり。
渡辺伸栄watanobu 
三吉山頂上にある三吉神社への参道鳥居をくぐるとすぐにニッコウキスゲの公園。ちょうど今が開花の時期で、一面真っ黄色。まずは本日のベストショット。
下山してくると金生熊野神社に出る。その前の公園もニッコウキスゲの群落。開花期のちょうどよい時に来れたのは僥倖。
三吉山の山頂神社前は恰好の展望台。いつもR13上山バイパスを通るたびに見上げていた高層マンションが遥か足下に見えていて、自然の山から見たら人造物の高さなど知れたものだと、妙に感心しながら見下ろした。
三吉山から見下ろした上山城と市街。この町に生まれた斎藤茂吉が幼時から見上げて飽きなかったという三吉山。いつもR13を走りながら気にも留めていなかった山だが、これから麓を通るたびに見上げることになるだろう。
登山道に岩の塊がむき出しの箇所があって、岩海と言うのだと知った。甲斐駒にも鳳凰三山の白鳳峠にも似たところがあって、確か、ゴーロとか呼ばれていた。冬に読んだ「山の自然学」に載っていたような気がする。氷河期の名残りで、凍結と融解の繰り返しによって岩石が砕かれた地形だと。図書館で借りた本で、記憶が定かでない。やはり、こういう書物は購入して手元に置くべきなのだろう。 
岩海の周囲の藪もよく見るとゴーロ地形だが、ここだけまだ樹木の侵入が遅れている。岩塊の堆積が深いせいか、地温が高いのか、それとも岩塊がまだ安定していないのか。岩を手に取ってよく見ると結晶が見えたから、火成岩だ。蔵王の山がすぐ近く、元は、そこから流れた溶岩なのか。麓の熊野神社には20万年前の岩海とあった。
 
登山道で見つけたハナイカダの木。園芸種もあるというからそれほど珍しい樹木ではないのだろうが、これまで、山では中々見かけない。葉に花がつく珍しい形態の木。 
毎年この時期になるとハナイカダを探している。最初に見たのが2年前の7月岩手山、その1週間後に米山で見て、それ以来見ていない。しかも、どちらも実になったもので、花は一度も見ていない。先週の光兎山でも探したが見つからない。この日も、中々ないもんだなどとUnqさんと話しながら目を凝らして最後尾を歩いていた。
すると、先頭のOkkaaが、さして探している様子でもなかったのに、道の傍で見つけたのだ。それも、開花中の花を。(上の写真2枚)
これは珍しいと、4人でワイワイ眺めていると、下山してきた人が何事かと寄ってきた。Unqさんが、ハナイカダという植物で葉の主脈から花が出るのが珍しいのだと説明するのだが、フゥ~ンと一瞥して下って行った。地味で目立たない花だから、興味がなければそんなものだ。それにしても、あれほど探しても見つからなかったのを、さりげなくOkkaaに発見されたのは少々口惜しい。せめて他の株をと探すのだが、結局、葉山の山頂に至るまで一株も見られなかった。
下山になっても見落とすまいと目を凝らして下った。すると、あった‼ 蜘蛛の巣がかかった花、これは登りで見た花とは違う‼ そう直感して、思わず「ついに発見‼ ハナイカダ‼」などと素っ頓狂な声を出した。少し離れて先に行っていた3人に聞こえるようにと。引き返してきた3人、まず、Okkaaが低い声で言った。「これ、さっき私が見つけた木でしょう」 確かに、蜘蛛の巣のかかった花の下の葉をよく見ると、さっき見た花がついている。周りを見れば、紛れもなく、登りの時に見た花があった場所だ。
そこからだ、騒ぎとなったのは。
すかさずUnqさんが突っ込みを入れてきた。何を言われたか正確には覚えていないのだが、最初の発見でもないのに、「ついに」とはよく言ったものだとか、よりによって蜘蛛の巣の付いた汚げな花を発見だなどととか、まあ、散々に言われた。Okkaaもこことばかりに何やら同調している。
言われれば言われるほど、一々ご尤もで、我ながら恥ずかしいやら情けないやら。皆が笑えば笑うほど、自分でもどうしようもなく可笑しくなって、腹の筋肉が勝手に痙攣してしまう。そのうちに、笑い過ぎて涙まで出て止まらない。
見かねたYoumyさんが言う。あ~ぁ、泣かせてしまって、Unqさんがあんまり突っ込むもんだから、かわいそうにと。その一言がまた腹筋を痙攣させて、泣き笑い状態で、笑う3人の後を追う。
道々、思い出したようにさっきの話になって、4人でまた笑う。後刻、帰途の車中でも、再三思い出し話になって笑いが起こる。
阿賀北山岳会には、笑いの種になる失敗談は少なくないのだが、今回のハナイカダ事件は多分、スカート忘れ事件やパンツ洗濯事件と並んで三本の指に入る珍事件として語り継がれるに違いない。
どの事件も、いくら嘲笑の対象になっても、誰も怒らない。怒らないどころか、一緒になって愉快に笑う。失敗も笑いに変えてしまう、太っ腹で笑い好きな山岳人の山岳人たるところ。ここで血相を変えて怒るような山岳人はいない。

さて、下山中の話に戻るが、この事件の後、不思議なことに、ハナイカダの木が次々と目に入ってきたのだ。事件前まではあれほど探しても見つからなかったのに。多くは、花が終わって実になっている木(上の写真2枚)。更には、花も実もついていなくても、木と葉を見るだけで識別できるようにさえなった。その目で見ると、登山道には多くの株が生えていた。怪我の功名、ハナイカダの木を見つける目が養われた。
しかし、見たのはすべて雌株。実になっているということは近くに雄花があるはずなのだが、一葉に複数個花がつくという雄株は結局見れなかった。
2日後に五頭連峰宝珠山でも探したのだが、雄花も何も一切見ることができなかった。ハナイカダもやはり、あるところにはあるが、ないところにはない、ということだ。
 
所変われば品変わるとは言うが、ハナイカダだけでなく初めてみる花がいくつかあった。花に詳しいUnqさんも初めてだと言う。写真に撮って、帰宅して図鑑で調べてみた。上のはコゴメウツギ。
 
上左はオトコヨウゾメか。妙な名で覚えられない。花は垂れ下がるのが普通らしいが、初めのうちは立っているものもあるようだ。上右はホタルカズラ。花の中心の模様が特徴的。これらの花も、これまで見たことはないし、2日後の宝珠山にもなかった。 
その翌朝のこと、風呂から上がって汗を拭いているときに気付いた。右肩に見たこともない痣がある。よくよく見ると毛が生えている。なおよくよく見ると蜘蛛の足のように見える。ダニだ。(上左写真)
隣家の専門家が以前、ダニは塩をまぶしてから抜き取ると言っていたのを思い出した。浴場から飛んで帰って、塩を塗った。が、ますます喰い込んでいくようだ。
隣家へ走り込んで、専門家のWさんに見てもらった。塩をまぶすのではなく塩水をかけるのだと言う。塩水を作ってくれて、それをかけながらゆっくりとダニを上下左右に撫でる。と、徐々に足を動かさなくなる。喰いついたままだと抜いた時、頭が皮膚の下に残るから、塩水で弱らせるのだと言う。十分弱ったころを見計らって、皮膚の外に出ているダニの足と腹の辺りをつまみ、一気に、グツッと引っこ抜いでくれた。見事、頭ももげずにきれいな形のダニが抜けてきた。(上右写真)
抜けた傷口に虫刺されの薬を塗って一件落着。その後、暫くかゆみは残ったが腫れなどもなく熱も出なくて、どうやら事なきを得たようだ。
 
<コースとタイム> 登山口駐車場発10:08-10:39見晴台-10:59ハナイカダ発見-11:10岩海-11:24三吉山山頂11:35-12:08急坂ロープ場-12:26葉山山頂(昼食休憩)13:35-14:21三吉山山頂14:32-14:38岩海-15:27金生熊野神社-15:35駐車場着 
詳しい様子はYouTubeにUPしてあります→こちら
 
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