綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
9月9・10日 戸隠の 麓を巡り 高妻へ 
高妻山2353.0m 長野県長野市 新潟県妙高市  地理院地図は→こちら
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昨年肝を冷やした蟻の塔渡りの戸隠山。今回は、その戸隠連峰の最高峰高妻山を目指した。関川村からの日帰りは無理ということで麓のキャンプ場に前泊。折角なので、初日は連峰南西端の一夜山に登ろうとしたが、登山道への途中林道が土砂崩れで通行止め。やむなく戸隠の麓巡り。まずは、その名につられて鬼無里(きなさ)へ。とびっきりのソフトクリームを食べてから大望峠。戸隠の眺望で名高い鏡池。そして、戸隠奥社参拝。そこは名高いパワースポット、Okkaaは何十年も前の帯状疱疹痛がぶり返していたというのに、神域に入った途端すっと消えたと言って、翌日は五地蔵山まで登ることができたのだから、神効おそるべし。
渡辺伸栄watanobu
前泊日(9日)、大望峠からの展望。遠くに、白馬から続く後立山連峰。前回登った鹿島槍と爺ヶ岳を雲間から垣間見た。右に聳える山が、戸隠連峰の南西の端っこで、この日登るつもりだった一夜山1562m。いかにも展望抜群の山らしいが、そこは諦めて、旧鬼無里村(現長野市)の中心地まで行ってみた。一行の一人が「長閑なところだね」などとうっかり感想を漏らしたものだから、「おやおや、どこの都会から来た人の言葉だやら」と、すかさず茶々が入ってしまった。日頃長閑な所に住む人が長閑な他所に感歎しても可笑しいということはないのだが、どこか都会人のセリフのように聞こえたのだろうか。「関川村とおんなじに・・・」と一言添えれば問題なかったのかもしれない。秘境鬼無里の濃厚ソフトを食べて、この峠まで戻ってきた。
次に向かったのが、ここ鏡池。去年、戸隠山の八方睨みからよく見えた池。だから、望遠鏡を出して池の畔から見上げてみた。左端の尖がりが八方睨みでそのすぐ右隣のピークが戸隠の山頂だろう。例の「蟻の塔渡り」を探したが、縦の位置関係のせいか、ナイフリッジは見えなかった。鏡池に、紅葉の戸隠山を映した逆さ戸隠はさぞかし絶景だろうと、想像を巡らせながらカメラを向けた。
鏡池近くの道の端に、杁差岳でしか見たことのなかったハナイカリが咲いていた。高山の笹藪に隠れるようにひっそりと咲く花という印象だったが、どうやらそうでもないらしい。少しイメージが壊れた。
次に行った戸隠奥社の参道の水辺に咲いていたのはシラヒゲソウ。不思議な形の花で名が分からず、歩きスマホで検索したらヒットした。少々年甲斐もなく顰蹙の的になったかななどと、反省しつつ。
ともあれ、どちらも名前の通りの花の形。いや、逆か。形の通りに名付けられた花、実に分かりやすい。花全てかくあれかしと思うが、それは無理か。
高妻登山日(10日)5:28 戸隠キャンプ場内を進む一行。前方に戸隠連峰。左端のピークが九頭龍山だろう。右端がこの日目指す五地蔵山。真ん中の鞍部が一不動で、昨年は戸隠の峰を歩いて一不動から沢伝いに下山した。五地蔵山へも、そのルートが古来の信仰道で鞍部から右へ主稜線を歩く道。が、今回はその道を通らず、五地蔵山の頂へ正面の尾根から直接登り上がる弥勒新道を使う。
5:52 朝日が射し込み始めた弥勒新道を登る。登山口の牧場を歩いているとき黒姫山と飯綱山の間の低い位置から朝日が出始めた。だから、陽の光は水平かそれより低い角度でブナの樹々の間に射し込む。登山道は急傾斜なのだが、木漏れ日のブナ林の雰囲気に、皆いい気持になって登り続けた。この気持ちの良さを求めて山に入るのだから、急傾斜の登りなど誰も意に介さない。もっとも、先頭のUnqさんがペースをグンと落としてくれたから、Okkaaもなんとか五地蔵山まで標高差800mを登れたのだが。
8:29 五地蔵山の頂上へあと30分。去年、一不動から見上げた五地蔵山はダケカンバの目立つ山だった。こうやって山頂近くに来て見ても、ダケカンバの白い木肌が際立つ。中にはシラカバと見分けがつかないほどの白肌の木もあった。木の皮の剥げ方や色を見れば見分けがつくと言われるが、典型的なものは見分けがついても、中間型のようなものがあって、実際にはなかなか難しい。これまたネットで調べると、葉に違いがあって、ダケカンバの葉はやや光沢があるらしい。両方並べて同時に見比べないと、なかなか判別は難しいかもしれない。
 
五地蔵山の登山道から振り返ると、すぐ後ろに飯綱山が良く見えた。左が雲仙寺山1875mで右が飯綱山1917.3m。その手前の稜線に光る小屋の屋根が見えた。あれは飯縄神社の社だろうか。飯綱山は飯縄山とも書く。ところが、この山から直線で15.5㎞南西方向にもう一つ飯縄山1200mがあるから、まことにややこしいことになっている。
9:04 五地蔵山の山頂から、眼前に黒姫山、左遠方に妙高山。途中の登山道では、後ろにいつも飯綱山が見えていた。それが、五地蔵山の頂に近づくと真後ろには黒姫山が来る。登山道の向きの関係で背景の位置がずれることはよくあることだが、時々、勘違いを起こす。
ところで、国土地理院の地図では、一不動からのルートと弥勒新道が合流する「六弥勒」の地点を五地蔵山の頂にしているが、実際は少し違っていて、合流点から一不動ルートを南へ120mほど行ったところに五地蔵山の山頂がある。登山でよく使われる「山と高原地図」では、その辺りは正確に書き表してあるからさすがというべきだろう。
最近は、スマホで地理院地図も高原地図も無料で見れる。通信が途絶えてもキャッシュ(取り込み)しておけば、どこでも見れる。しかも、GPSで現在地も出るし、歩いた軌跡も残せる。充電も予備のバッテリーさえ持っていれば心配ない。ということで、とにかく便利になったものだ。ついでに敷衍すれば、山行の連絡や情報交換もLINEのグループで一発。この便利さは、使っている人でなければ分からない。
高妻山は戸隠連峰の最高峰なのだが、連峰の裏側に位置していて、戸隠の表側からは姿が見えない。五地蔵山の六弥勒に達して初めて、反対側にある高妻山が姿を見せる。深窓の麗人のお出ましいう風情だ。この日は、やや薄いベールをまとって一層麗人風に見えた。Okkaaはここまで頑張って淑女にまみえ、家臣さながらに五地蔵山の山頂から下界を見渡して、満足気に早々下山した。もっとも、六弥勒で我らと別れたから、その後の下山姿までは見ていない。夕刻、バンガローで我らの下山を待っていたことからすると、無事に降りたことは間違いない。
五地蔵山から高妻山へ向かう稜線からは北方に妙高連峰がよく見えた。微かに噴煙の見える焼山、火打から妙高へと続く長い稜線。あの稜線を歩いたのはもう3年も前の秋。戸隠にしろ妙高・火打にしろ、こうやって自分の歩いた山を隣の山の上から見るというのは、実に爽快なものだ。
ところで、妙高連峰と戸隠連峰が、それまでの上信越高原国立公園から分離独立して、妙高戸隠連山国立公園となったのは2年前のこと。今、最新の国立公園をぐるっと見回せる位置に立っている。
 
向きを変えて南方に目をやれば、戸隠山。右が西岳の山塊、鞍部を挟んで中央が戸隠山。尖がりが八方睨みでそのすぐ左が戸隠山の山頂か。此処と彼処の間にある深い谷間の流れが、前日訪ねた鬼無里を通り、やがて長野へ出て千曲川に合流する。鬼無里から先へ西方向の分水嶺を越えれば白馬村で、姫川水系となる。こうやって山に通ううち、信州の地理にも少しは通じてきたようだ。
10:15 九勢至。後ろが高妻山。高妻山は信仰の山で、一不動から山頂の十阿弥陀まで十の仏が祭られていて、ご丁寧に仏の名を示す看板が立っている。我らは六弥勒からだから七番、八番の仏の前を通ったが、私など不信心のせいか、その仏の名を帰りにはもう忘れている。ところが、Unqさんは5年くらい前に登ったこの山の九番の仏を覚えていて、「九は確か勢至のはずだ」と言う。現地に到着して、自分の記憶の良さに感心の態だったが、失礼ながらそれほど信心深いとも思えないので、多分だが、撮影スポットだから記憶は写真と共に残ったのだろうと、不信心な私は思っている。仏づいたか、Jynjyさんは仏の位を解説し始めるし、驚いたことにKeynさんは道々般若心経を唱え出した。私は、対抗上島倉千代子のリンドウの花の歌を歌ったら、なぜか、「他の登山者が来たから止めろ」とUnqさんからストップがかかった。道の傍にリンドウが咲いていたのだ。山はもう秋だ。
 
九勢至を過ぎると富士山型の高妻山は一段と急坂になる。その上、峻険な岩場もあって、中々手強い山に豹変する。一筋縄ではいかない麗人なのだ。
この岩場のどこかにヒカリゴケがあることを、7月のNHK「百名山」の放映で見たのに、そのことをすっかり忘れていた。下山して数日後改めて録画を見たら思い出した。多分だが、また行くことはないのではないだろうか。もったいないことをした。
 
高妻山の稜線にコゴメグサが咲いていた。葉の形が小さいことには気づいて、コバノコゴメグサかなくらいに思っていたのだが、帰宅して図鑑を見たら、トガクシコゴメグサのようだ。改めて写真を拡大して見ると、鋸歯の先が芒状に伸びて尖っていた。これが特徴だとのこと。右はオヤマリンドウ。この花を見てつい歌いたくなったのだが、さては他人には聞かれたくなかったか。
 
高妻山の山頂。いつも頂では1時間ほど寛ぐのだが、今回は時間がなく30分ほど。それでもUnqさんの大ザックからはカップ麺がザックザックと出てきて、コンロでお湯を沸かしてもらってご相伴。その上、コーヒーまで。「頂にはいつも憩いあり」の図。 
<コースとタイム>キャンプ場発5:22-5:35弥勒新道分岐-9:00五地蔵山9:16-12:00高妻山山頂12:33-14:18五地蔵山14:30-16:35弥勒新道分岐-16:47キャンプ場着
 ここで紹介しきれなかった高妻山登山の様子や稜線の花々を
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