綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
9月23日 楢の葉に秘めた命の虫の知恵 七ヶ岳 
七ヶ岳1635.8m 福島県南会津町  地理院地図は→こちら
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南会津町に印象的な山がある。大型の鋸の歯を並べたような異様な山体、日本三百名山にも数えられる会津の名山・七ヶ岳(ななつがたけ)。山頂には立派な一等三角点があり、三角点マニアには嬉しい場所だった。紅葉の名所とのことだが、登った時期はまだはしり。登り始めは晴だったのだが、そのあと雲が垂れ込めて山頂の眺望はゼロ。長いゲレンデ歩きもあって少々味気なさは残ったが、翌日の燧ヶ岳が本命で、そのついでの足慣らし登山のつもりだったからそれもまたやむを得ない。山頂稜線で、木の葉に着いた虫こぶを見て、そこに命を託す虫の戦略に思いをはせた。
渡辺伸栄watanobu
標高約960mの登山口から40分ほど登ったここは、長いゲレンデの真ん中あたりで標高1160m付近。登山道は、全体の三分の二ほどがゲレンデ内の管理道路になっていて、シーズンに向けて草刈の真っ最中だった。歩きやすいが、少々味気ないのが玉に瑕。ただし、下りは時間を短縮できて、早めにキャンプ場に着けて助かった。
標高1450m付近から、眼下に南会津町の高杖高原。この高原の裾をR352が通っていて尾瀬の入り口桧枝岐村へ繋がっている。
標高1490m辺りで、ようやく管理道を外れて山道に入る。ここからが本当の登山道ということだろうか、「登山口」と大きく表示されていた。
いかにも登山道らしい稜線になったのに、東(画面右)側からガスがどんどん湧いてきて眺望は全く効かなくなってきた。山頂は、行く手のピークを一つ越え、鞍部を挟んだその先にある。
12:40 山頂に到着。紅葉のはしりは、それなりに綺麗だった。七ヶ岳は、その名の通り七つの峰が並んでいて、ここは一番峰。この先、北東方向へ二番峰から七番峰まであって、縦走路もあることになっている。ただし、2年前の豪雨で登山道が崩れたらしく、全部で4本もある登山ルートのうち縦走路ルートを含め3ルートが通行止めで、登れるのは高杖原からのルートだけということだった。
  
登頂記念撮影。眺望がゼロだったのは残念だが、代わりに見事な三角点を見れた。さすがは一等点、大きくて風格がある。敬意を表して、ノンアルビールを捧げた。
 
ミズナラの葉に着いた球。余りにもきれいで、しかも、ちゃんと葉脈の上に付いている。ハナイカダならこれは実なのだが、それ以外で葉に実を結ぶ植物は聞いたことがないから虫こぶだろうと思いながら、興味をそそられてこの球を割ってみた。中は3重になっていて、まずは赤いしっかりした皮、その内側にいかにも果実のような柔らかく厚みのある果肉、そして中心には、いかにもタネのような小さく堅い玉。どう見てもこれは果実にしか見えない。ところが、小さい玉を割ると、中に栗虫のような小さな幼虫が丸まっていた。親虫が葉に卵を産み付けるとき何か細工をして、その刺激で楢木自身が自らの養分で球を造った。やがて球の中で卵が孵化して幼虫になり、球の中の養分を吸って成長するという戦略だろう。いやはや凄い知恵だ。ここからは想像なのだが、もしかしたら、この赤い球を果実だと思った鳥がこれを啄み、中心の小玉は消化されずに別の場所で排出されて、そこで中の蛹が羽化するという仕組みなのかもしれない。ネットでざっと調べてみた。虫こぶは、専門用語では虫えいともいい、昆虫が自分で造った植物ホルモンを、植物に注入することでできるとあった。わざと鳥に食べられるように果物のように見せるというのは見当たらなかったが、これだけ果実に似せるということは、そこにも虫たちの戦略があるに違いないのだ。
 
<コースとタイム> たかつえスキー場登山口発10:06-(ゲレンデ内管理道路)-11:56山道に入る-12:17ピーク(1600m)越え-12:39山頂12:58-13:18電波塔(1600mピーク)-14:33登山口着
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