綿野舞 watanobu 山歩紀行 2009.8.1 光兎山
 標高966.3m  新潟県関川村    
 
この年、国体が新潟県で開催されることになっていて、そこで使う炬火を県内各市町村で採火することになったという。

採火の仕方は、各市町村独自の方法でということらしく、当関川村では、光兎山山頂で採火することにしたということで、この日、その採火式を執り行うという。


オリンピックの聖火採火式というのはTVで見たことはあるが、国体の炬火採火など、どんなふうにするのか、しかも光兎山の上で、と、珍しいこと好きで、最近山好きになったばかりの当方としては興味津々、採火団の一員に加えてもらって光兎山に登った。


スタッフの一人が大きなパラボラアンテナを担いでいた。大きすぎて登山道の木の枝に憚るところも多く、横になったり斜めになったりしながら、難儀して山頂まで担ぎ上げたそのスタッフ、元からの山男で、さすがと敬服するしかなかった。


さて、その山頂で、にぎにぎしく採火式が執り行われた。

ギリシャの聖火採火式は麗しき乙女たちが厳かに執り行っているようなのだが、ここ関川村では、むくつけきおのこどもが恭しく執り行った。

無事採火された種火は、県から配布されたという専用の容器に継火され、大事に麓まで下ろされて、この日の採火式は終ったのだった。


可笑しかったのは、専用容器に継がれた種火が万が一途中で消えたときの用意として、なんと、採火した火の一部を蚊取り線香に継いで、それを燻しながら下山したこと。

可笑しいなどというのは失礼なことであって、真面目に万一の場合の策を講じたのだろうが、蚊取り線香という発想が実に愉快で可笑しかった。

火を継ぐということで思い出したのだが、1月15日の歳の神で「ホヤホヤ」と称して茅を組んで火を燃す行事が今も続いているが、子どもの頃、祖父がその火でタバコを吸うと一年息災でいられるということで、歳の神の火で木の枝の先を燃し、その火を家まで消さずに運んでくるように命じられた。
枝の先の赤い火にフーフーと息を吹きかけて起こしながら、消えないうちにと家まで走って祖父に届けたものだった。
「おったいぎ、おったいぎ(大儀)」という祖父の決まり台詞とともに、妙なことを思い出してしまった。


ともあれ、2度とこのような登山は経験できないだろう。そういう意味で、山歩紀行の貴重な一頁になった。
 
 
 
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