荒川沿岸の風物、旅の出会いなど、折々に綴る      
    
綿野舞watanobuの
風物記 2015  
 
 3月14日 梅に苺に  祝・Unqさん小説出版

ご存知、水戸の偕楽園は、この日、人人人・・・正味1時間の駆足見物

この日一番のお気に入り撮影はこの写真




阿賀北山岳会の年一度のお楽しみバス旅行。
水戸の偕楽園で今盛りの梅園を見て、そのあとで、とちおとめの本場真岡で苺狩。
もちろん花より団子、イチゴの食べ放題は生涯初めて。夢中になって食べた。
もうしばらく苺は見なくてもいいと思ったのだが、その翌朝、ふと指先に残っていたかすかな香りに、あ~また食べたいと思うのだから、幾つになっても品性は卑しい。

と、まあ、それはその程度の話。
もっとすごい話がある。


Unqさんの作品が単行本になって出版された。題名がすごい。

悲しいことなどないけれど
さもしいことならどっこいあるさ


いかにも純文学的。
生涯初の単行本出版だという。
まずはめでたく、かつ、うれしい。

1985年2月号の早稲田文学に発表、30年ほど前の作品。第一回早稲田文学新人賞を受賞、知る人ぞ知るの名作らしい。

この度、金沢市にある龜鳴屋(かめなくや)という出版社から刊行。ネットで見るとご主人がほとんど手づくりで装丁する所だとか。
ネット上にも、もう一度読みたい、本になっていないのが惜しい、と声があった。ファンの根強い要望に応えての出版のようだ。30年の歳月を考えれば、相当手ごたえのある作品だったことが想像できる。


去年、四阿山に行ったときだったか、路傍に牧水記念館とかの建物があって、Unqさん以外の同行3名、そこに全く興味を示さず覗きにすら行かなかった。
以来、非文学的男女の一員に格付けられてしまった小生にも、その素敵な装丁の御本が一冊届いた。


バス旅行の日の前日、227ページ分あるその小説の50ページまで読んでいた。
推理小説系の当方には、なかなか手ごわい文章で、筋追いでサッサ、サッサと読み飛ばしていくわけには行かない。
何しろ、登場人物がハチャメチャな連中で、筋もまたハチャメチャ、人物名も出来事も文章も、すべてハチャメチャ。ハチャメチャが延々と続く。
この手の本は読んだことがない。不純文学派の小生には、生涯で初めて出会ったような小説だ。


バスの中は、時間がたっぷりとある。乗るなり、アルコールが入り、食べて飲んで、ただ窓を見たり目をつぶったり、ぼわ~として時を過ごす。
と、突然のように、Unqさんのその小説の一コマが浮かんでくる。
ひとりでに笑いが浮かぶ。目をつぶったままニヤリと頬が動く。
ハチャメチャぶりが、面白く、可笑しいのだ。
50ページというと、ちょうど月見剣子さんが登場して下がっていくあたり。
その剣子さん、トンデモナイ詩を作って、無理やり聞かせるのだが、聞かされた輩は剣子さんの詩を貶しても、矢鱈に褒めても、大怪我をすることになる。だから、皆、どう言うかというと
「うーーーーーーんブルブル」




雑踏を入れないで梅園の風情を撮るのは一苦労

そして、これまたご存知の黄門様に助さん格さん

馥郁と咲き誇る梅また梅 
この日の真のねらいはこちら 
とちおとめ、その色艶の良いこと 

30分一本勝負で食べた苺のヘタがこれだけ 

ソンナニ夢中ニイチゴヲ、マァ、タベチャッテ、
と呆れているよな顔
   

バスの中で目が覚めた小生、隣のUnqさんに、よせばいいのに言ってしまった。
「あの小説、おもしろいわ」
当然のことだが、「たった50ページばかり読んで、何が面白いだ」という顔をされてしまった。
剣子さんなら、頭の上から石が降ってくるところだった。それとも、ビンタか蹴りか。いずれにしろ入院だ。
言葉を間違えた。
おもしろいなどと批評するには、非文学的青年としてはおこがましすぎた。
「可笑しいわ」と言うべきだった。

今、読んでいても、可笑しい。
150ページまで読んだ。もう半分だが、物語上の時間は、確か2日間だ。
ハチャメチャ共の言動は、客観的に見れば奇妙奇天烈ナンセンスなのだが、彼らなりに真面目に日を送り、満たされて眠りに着く。それが可笑しい。
それに、時間は平板には流れず、過去形の物語が輻輳か錯綜かして、読み手の頭を混乱させる。それが可笑しい。
ページ数にして残りあと半分だが、果たして、2日分なのかどうか。
気になる月見剣子さんは再登場するのか、はたまた、鉛筆1本マンは一体どうなるのか。
任侠道の旅烏よろしく逃避行を続ける柿本均一君が拾った日本辺地の禁句は、まだあるのか。
それらの人々は、作者によってその場限りに使い捨てられる存在か、それとも、どこかで結びつく運命か。
何よりも、これほどまでに真面目にナンセンスな時間を送る若者たちを作者はどうするのか。
興味は尽きない。
いずれ読了の暁に、再度、読感など綴る機会があればと思っています。
まだ、読みきってもいないのに、お薦めするのもおこがましいのですが、とにかく、この本、面白い。いや、可笑しい。
ぜひ、読んでみてください。

とはいっても一般書店売りはしないみたいで、亀鳴屋のHPからメール等で購入できるようです。