歴史館の古文書WEB分館へ戻る
平田甲太郎家文書<皆済目録 安永7(1778)年 文書№601
<解説>
上野山村の納税完済証明書です。
課税は、その年の秋に「年貢割付書」によって領主側から村へ示されます。それに従って、村は逐次納税し、その都度領収書(手形)を受け取ります。
全て納税が完了すると、領主側は手形と引き換えに完済証明書である「皆済目録」を発行します。その目録の内容を下の表に整理してみました。

~表から~
項目1と2の小計34石余が、上野山村に課せられた年貢高です。これは、嘉永2(1849)年の上野山村の定免願に書かれた年貢高とほぼ同額です。⇒こちら
村高(生産高)84石余の上野山村に対して34石余の課税率は約4割。ほぼ4公6民の基本線に沿っているように見えます。しかし、1と2以外に、3~10の付加税もあります。だから、実際はもっと重税感はあったでしょう。やはり、5公5民くらいにはなっているでしょうか。

1と2の合計34石余は米納が基本ですが、実際はそうでないことが分かります。
1と2の内訳(1)~(10)の内、(2)~(7)は金納になっています。また、項目3~9の付加税は全て金納です。金納の総額は
永銭で 19貫279文5厘5毛+16文9分=19貫295文9分5厘5毛
銀貨で 59匁5分4厘

永銭というのは、少々難しくて、金貨で納めるべき額を4進法の金貨では計算が厄介だということで、10進法の永銭に換算しているのです。
金1両=永1貫文 1/4両=金1分=永250文 1/8両=1/4分=金1朱=永62文5分
これを永銭勘定と言って、実際の支払いは金貨に換算しなおし、はしたは銅銭に換算するということです。つまり、永銭という貨幣は実際にはなくて、あくまでも計算上の仮想通貨ということになります。江戸時代の貨幣勘定は複雑です。
おまけに、但し書きにあるように、それぞれの税目(品)ごとに金貨換算の値段が異なっているようです。納めた時期がそれぞれ違っていて、その時々の時価で計算しているのでしょうか。とにかく、複雑です。


さて、項目1と2の合計34石余の内、金納の分(2)~(7)の米高を合計すると26石余になります。この比率は77%です。つまり、年貢米の8割近くは金銭で代納していることになります。
意外なほど、金納の割合が高くて驚きです。
(2)のように、村側からの願で金納にしている分もあります。金納の方が、領主側にも村側にも都合がよかったのでしょう。村での換金はなかなか大変だと思うのですが。

最後の「納合」を見ると、実際に米で納めるのは
江戸廻米用の5石8斗余 と
大坂廻米用の2石3斗余(これは籾で、米に換算して1石1斗余) のようです。
これだと、(1)と(10)の米計9斗余が、「納合」には載っていません。ほぼ1石分、どうなったのでしょう。不思議です。

とにかく、様々に税目を設けて、細かく税を集めていたことが分かります。逆の見方をすれば、このように必要な税目を一つ一つ上げて、徴税しなければならなかったということです。大雑把な税徴収では百姓衆の納得は得られなかったということでしょう。その税目なら、自分たちが負担するのも仕方がないなと思ってもらわなければならないということで、それは現代も同じです。領主と言えども、百姓衆の納得無しのごり押しは通らないということでしょう。
項目    米  永  銀
1 本途・小物成 33 8 7 7 4
2 見取 9 1 5 5
小計 34 7 8 6 2 4
      内訳      
(1) 大豆代米渡 8 2 5 5
(2) 願石代 8 1 7 5 407 2
(3) 不熟米石代 6 3 6 9 3 411
(4) 三分一金納 12 1 2 8 5 8 80
(5) 御傳馬宿金納 5 2 1 9 34 8
(6) 六尺給米金納 4 5 5 3
(7) 小物成米金納 1 7 5 116 6
(8) 江戸御回米 5 8 3 8
(9) 大坂御回米 1 1 6 2 5
(10) 蔵敷小揚米 1 2 4
小計 34 7 8 6 2 4    
   
3 大豆金納 1 6 5 1 1 185
4 荏金納 4 6 39 2
5 銀 小物成銀 57 8 1
6 永御蔵前入用 217 4 5 5
7 三口米金納 1 4 2 783 5
8 銀 三口銀 1 7 3
9 三口荏金納 6 4 1 3
金納計 19 279 0 5 5 59 5 4
10 山蝋実(現物) 3 2
包歩銀 16 9
            



5 8 3 8
2 3 2 5
59 5 4
19 279 5 5
山蝋実 3 2
外に永 16 9
原文
釈文
読下し(横書き・算用数字に書き換え)
 
原文
釈文
読下し(横書き・算用数字に書き換え)
原文
釈文
読下し(横書き・算用数字に書き換え)
原文
釈文
読下し(横書き・算用数字に書き換え)
 
 ページのTOPへ