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平田甲太郎家文書<年貢割付状 安永4(1775)年 文書№768
 関川村広報紙2024年5月1日号掲載
<解説>
 年貢割付状とは、納税通知書のことで、この文書は小見村に出された安永4(1775)年のもの。当時は米沢藩の預領だったので、末尾にある差出人は、上関にあった代官所(陣屋)の役人と思われる。
 文書に書かれた税を項目ごとに整理すると、以下のようになる。

~本 税~
 本来の年貢のことで、田畑の生産高に応じて課税する。それで、文書には、田畑の生産高と年貢(取米)がセットで書いてある。
 年貢だけを取り上げて整理すると、次のようになる。

本税1 前葉が欠けているため、文書は、いきなり内訳から始まっている。
           田 26石7升6合
           畑 3石1斗8升2合
本税2 新田畑3か所
  亥明新田    田 3石5斗4升3合
  寅丑明新田  田 2石4斗5升8合
  戌丑明新田  田と畑 9石7斗5升8合
    この文の次の「内訳」は、戌丑明新田の田畑別の税で、ここでは省略する。
本税3 新田畑 5ヶ所
  辰改新田      田 3石4升3合
  先戌御高入新田  田 3石7斗7升
  先夘御高新田   田 6斗2升4合
  先夘御高新畑   畑 1石8斗8升4合
  当未高入新田   田と畑 3斗4升2合
     この文の次の「内訳」は、上記同様で省略。

本税合計  52石8斗2升2合
  文書に「取米合」として、この数字が書いてある。これが、本税(年貢)の合計。
  ところが、上記の本税1,2,3を合計すると、44石9斗2升2合になり、7石9斗足りない。
  つまり、不足分のこの数字が、欠落した前葉に書いてあったことになる。

~諸 税~
 江戸時代の税は、本税と諸税に大別できる。
 「取米合」(本税合計)の数字の次に、「外」と書かれてある。本税の外にという意味で、ここから以下が、諸税ということになる。
 文書では、「外」の文字に続いて諸税を列記してあるが、ここでは、種類ごとに分けて整理する。また、文書には記載されていないが、種類ごとの合計も算出する。

諸税1 見取 5ヶ所 
 見取とは、新規開発した田畑などで収穫が不安定なため、本税の対象である村高(村の生産高)には算入していない土地のこと。本税とは別扱いしていることになる。
 5ヶ所それぞれの面積や課税割合も書いてあるが、それは省略して税だけを整理する。
   見取            畑 5斗8升7合
   明和8夘より新見取    畑 7斗5升7合5勺
   同上            田 1升5合5勺
   安永2巳より新見取    田 6升8合4勺
   同上             畑 1斗3升9合7勺
 諸税1の合計     1石5斗6升8合1勺

諸税2 米納
   ①御伝馬宿入用    米 8升9合8勺1才
   ②六尺給米       米  3升8勺4才
   ③山手船役米定納   米 1斗7升5合
   ④諸売り酒屋役     米  2斗5升
 諸税2の合計   米 5斗4升5合6勺5寸

諸税3 銀納
   ①夫銀定納      銀 1匁7分8厘
   ②?川役定納    銀 8分1厘
   ③鮭川役定納    銀34匁8分7厘
   ④漆木役定納    銀 5匁7分5厘
   ⑤銀駄賃定納    銀 3匁5分7厘
   ⑥材木代定納    銀 8匁9分2厘
   ⑦薪代定納      銀 7匁1分4厘
   ⑧刈干代定納    銀 3匁7分5厘
   ⑨縄代定納      銀 4匁4分7厘
 諸税3の合計  銀 71匁6厘

諸税4 現物納
  ①大豆納      大豆 3石6斗9升8合
  ②荏(エゴマ)         1斗5升6合

諸税5 銀納
  ①稗上振銀      銀 3匁
  ②糠代         銀 5匁9分9厘
  ③藁代         銀 7匁3分9厘
  ④入草代       銀 1匁7厘
  ⑤大豆上振銀    銀 7匁8分6厘
 諸税5の合計  銀 25匁3分1厘

諸税6 銭納と金納
  ①諸林役       銭 300文
  ②御蔵前入用    永 374文2分5毛

~総合計~
 文書の最後には、この年に納めるべき税としての総合計が次のように書いてある。
  米 54石2斗9升7合7勺5才
     外に 大豆代米渡し 6斗3升8合
  大豆  1石2斗7升6合
  荏(エゴマ)  1斗5升6合
  銀  96匁3分7厘
  永  374文2分5毛
  銭  300文

 総合計に書かれた数字は、次のように解釈される。

(1) 米 54石2斗9升7合7勺5才 について
 本税分は 52石8斗2升2合 だから、これに諸税分 1石4斗7升5合7勺5才 を合わせた数字になる。
 ところが、諸税分は、諸税1の1石5斗6升8合1勺 と諸税2の5斗4升5合6勺5寸 で
合計2石1斗1升3合7勺5才 になるはず。それなのに、 1石4斗7升5合7勺5才では、6斗3升8合 足りない計算になる。
 この 6斗3升8合が、総合計の「大豆代米渡し」分の数字と合致する。
 つまり、諸税1と諸税2の合計は2石1斗1升3合7勺5才なのだが、そこから、「大豆代米渡し」分の6斗3升8合を差し引き、その6斗3升8合を外に出した形になっている。その理由は分からない。

(2) 大豆 1石2斗7升6合 について
 諸税4の大豆納は 3石6斗9升8合で、その内訳として、正納1石2斗7升6合、上振2石4斗2升2合となっている。大豆の現物納は、正納の数字に合っている。ということは、上振の数字分は、米で代納し、その換算分が「大豆代米渡し」 6斗3升8合に当たることになる。

(3) 銀 96匁3分7厘 について
 諸税3の9税目合計が 71匁6厘 で、諸税5の5税目合計が 25匁3分7厘となり、銀納は、14税目合計で 96匁3分7厘 になる。

(4) 永 374文2分5毛 について
 永は、金貨が4進法で計算しにくいので、10進法で計算するために使われた計算上の単位。
 永250文が金1分(1両の1/4分)になる。だから、永 374文2分5毛は、ほぼ金1.5分になる。

(5) 銀、永、銭の納税額を全て金に換算したとしたら 
 銀96匁3分7厘=9637厘  金1両=銀60匁=6000厘  銀9637厘/6000=1.6両
 永374文2分5毛  永250文=金1分  永374.25/250=金1.497分
 金1両=4分  金1.497分/4=0.37425両=37/100両=3/8両
 銭300文  金1両=銭6500文  銭300/6500=0.046両=5/100両
 全て金貨に換算すると 1.6+0.37425+0.046=2.02025両 で、ほぼ2両ということになる。

<補足>
 諸税4の箇所からは、「役石10石に付」という文言が出てくる。役石は 52石8斗2升2合とあるので、本税(年貢)のことを指している。つまり、諸税4~6の税は、石高に応じた課税で、高掛とよばれる税に当たるのだろう。
 また、文末に「御年貢御取箇」とあり、文中には「取米」とある。これらの言葉から、税は、領主の取り分という意味であることが分かる。
 領主の取り分とはいえ、大雑把な徴税ではなく、細かく税目を明示し、徴税の計算割合も細かく示している。税の内容について、納税する側の理解を得ようとする意図が感じられる。強力な権力を持つ幕府といえども、そう無茶な徴税はできなかったということではないだろうか。
 なお、米沢藩の預地ではあるが、あくまでも幕府領であり、領主は幕府、米沢藩は管理者ということになる。

原文
釈文
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