綿野舞(watanobu)山歩紀行2017
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8月18・19・20日 感動の 剱見たさに 鹿島槍 
第1・2日目 雲湧いて 百花繚乱 空の道
鹿島槍ヶ岳2889.2m 富山県立山町・長野県大町市  地理院地図は→こちら
 
この日の元々の計画は、秘境雲ノ平へテント3日旅。ところが、天候不順で山の予報も安定せず、19日だけ晴、前後は雨。ならば荷揚日と下山日の雨は仕方ないとして、中日の稜線歩きは期待できると、鹿島槍に変更となった。
2週前、あの剱から朝日のシルエットで見た後立山の稜線。あそこから剱はどんなふうに見えるのか、感動を再びと勇躍出かけたものの、初日の標高差1120m荷揚げ登りのキツイこと。雨中、重荷、登り一方、ひたすら耐えてのテント場入り。
しかし、山はいつもその労苦に見合う以上のご褒美を用意しているのです。だから、老いも若きも、皆人フーフー言いながら、それでも坂を登るのでした。
第3日目(爺ヶ岳大展望)は→こちら
渡辺伸栄watanobu
初日14:53 種池山荘に到着。10:13に柏原新道登山口を出発してから、雨の中、20キロのテント荷を背負って5時間弱の登り。黙々と、一歩一歩、それはまさに「行」。
第2日目5:10 行動開始してすぐ、山荘近くのお花畑に雷鳥。前回の立山レポで、他の山では見たことがないと書いたばかり。花もそうなのだが、珍しいものも、現れるときには続くもの。不思議なことだが、山ではまゝあることではある。いや、山だけではないか。
事前の予報は、この日は晴。昨夜半は満天の星で大町の夜景も見えた。が、朝は一変。雲がずっと下りてきていて、霧雨、空気はぐっしょりと濡れている。この辺りからは正面右に立山・剱が見えるはずで、左は針ノ木岳のはずだが、ぶ厚い雲。下界も雲。ただ、山荘の屋根にだけ朝日が射していて、なんとも怪しげな景色ではある。
6:00に爺ヶ岳南峰を越えた。そこから中峰に向かうガレ場、コマクサが何株か咲き残っていた。もう終わりかけの花だが、女王だけのことはあって気品は衰えていない。早速ご褒美をいただいた感じ。
6:26 爺ヶ岳の山頂。爺ヶ岳は、南峰、中峰、北峰と三つのピークが並んだ長い大きな山で、ここ中峰が最高点2669.9m、山頂となっている。ガスの中、眺望はまったくゼロ。
 
7:43 冷乗越、赤岩尾根ルートの分岐点。この先に冷池山荘とテント場がある。鹿島槍へは最短なので、ここのルートを使う人も多いようだ。が、標高差は1362mで柏原新道より約2時間強余分にかかる。同じ時間で爺ヶ岳の稜線歩きを楽しむか、省くか。それはそれぞれの考え方だが、重荷を負う身には、キツイ登りは少ないに越したことはない。
8:49 思わぬお花畑が待っていた。冷池山荘を過ぎ、テント場を越えた辺り。登山道に沿ってかなりの広範囲。しかも、進むにつれて植生が変わり、違う花々が出てくる。高山ではすっかりお馴染みの花たちだが、例えば、ウサギギクが群れて連なっていたり、チングルマの穂が霧の水玉を載せていたりと、見飽きさせない風情があってすっかり見入ってしまった。
 
9:20 布引山へ向かう斜面。雨は上がり、ガスも薄れてきたが眺望はまったく効かない。左の谷の向こうには剱があるはずだし、行く手には鹿島槍が見えるはず。だから、ちょっとでもいいから顔を出してほしいと願いながら歩く。
9:52 布引山の山頂を越えて、この先少し下って鹿島槍への登りに入る。後立山連峰は、東側が切れ落ちた典型的な非対称山稜。その原因は、確か、分厚い積雪と雪崩だと地学の本にあった。酷い崩壊の進行箇所が何ヶ所もあった。
切れ落ちた東側の崖のまだ崩壊に至っていない斜面は、お花畑になっているところが多い。ミヤマトリカブトなど様々な花が咲いていて、中に、数株とりわけきれいな花があった。帰宅して調べてみると、シナノナデシコらしい。標高の低い河原などにも群れ咲くというが、別名のミヤマナデシコといえば、なんとなく高貴に見える。もっとも、手元の図鑑では、ミヤマナデシコには根生葉があるとされている。そこまでは確かめなかったし、写真に写してもいなかった。とにかく、目立ってきれいな花だった。
しゃがんでナデシコを見て、目を上げたら、一瞬前方にピークが見えた。シャッターを切ったら、その後すぐ見えなくなった。どうやら、あの霞んだピークが鹿島槍の山頂だったようだ。この後、ガスの中で鹿島槍の山頂に立ったので、山体を見たのはこの時だけ。だから貴重な一枚になった。
10:35 濃さを増したガスの中、鹿島槍ヶ岳山頂2889.2mに立った。双耳峰の鹿島槍でここ南峰が山頂。私にとってはちょうど50座目の百名山。
剱・立山の帰り車中、百名山をいくつ登っただろうなどと話題になって、帰宅して数えてみたら立山で49座目だった。当初予定の雲ノ平行では薬師岳は登らない計画だったから、50座目を特別に意識していたわけではない。期せずして、鹿島槍が50座目となった。
別に百名山ハントをしているわけではない。ただ、高名な山は、やはりいい山だ。というか、当たり外れが少ない。それに情報も多い。だから初めての山へ行くとなると、結局、百名山が多くなる。ここまで来たら百名山全部登ろう、などと俗なことを持ち込む気などさらさらないが、これからも多分、百名山の数は増えていくだろう。
11:12 布引山へ向かう小鞍部まで下山した。
山頂で雨が来た。しかも、大粒で強雨。身体を濡らすまいと大急ぎで雨具を着た。風も強まり気温低下、雲行きはかなり険しい。北峰行きは取りやめにして急遽下山したが、ここまで来たら雲が薄れ始めた。
 
11:49 布引山の頂まで引き返した頃、厚い雲が割れて青空も一部見え始めた。雲の先に幽かに見えるのは剱のはず。姿を現して欲しいと願いながら布引山頂で25分も待った。が、雲はこれ以上薄れることはなかった。この後も、稜線を戻りながら、道々、剱と鹿島槍が姿を見せてくれることを願った。しまいには、どちらか一つでいいのでと割引もした。が、この日は最後まで、奇跡は起きなかった。
12:27 願い叶わず、布引山を下る。とは言え、悄然としているわけはない。花々は結構喜ばせてくれるし、何よりも、雲の稜線歩きは趣があっていい。山に雲はつきもの。奥ゆかしさを醸し出してくれるから、もちろん嫌ではない。雲湧く空の道を歩く、高山の稜線でなければ絶対に味わえない。
12:48 行きに見入ったお花畑まで戻った。行くときは気付かなかったが、ヒメクワガタの小さく可愛い花が沢山咲いていた。斜面に咲き乱れる様々な花々に目をとられていて、足元の小さな花に目が行っていなかった。景色も花も、登りと下りで見えるものが違う。これも山でよくあることだ。
13:46 冷池山荘を過ぎると、爺ヶ岳の雲も晴れた。あの稜線の右端に小さく種池山荘が見える。あそこに帰るためには、あの爺ヶ岳を越えなければならない。もしかすると、あの峰のどこかで姿を現した剱を目にすることができるかもしれない。 
ズームで種池山荘を撮った。背後の雲かかる山塊は、右から岩小屋沢岳、鳴沢岳、大きな鞍部を挟んで針ノ木岳、蓮華岳、だろう。この角度からの唯一の写真となった。 
14:11 爺ヶ岳へ登る稜線の道。下界から次々と雲が湧き上がって来てガスがかかり、結局、淡い期待も叶わず、爺ヶ岳の稜線歩き中、鹿島槍も剱も見ることはできなかった。
明日は予報通りであれば、雨の中を下山するしかない。今日の花、雲、稜線、山頂、それだけでも十分満足できる。そう思い定めて、テント場へ戻った。
ところが、翌朝、奇跡は起きた・・・つづきは、第3日目へ→こちら
<コースとタイム>
第1日目;第2P発9:54-10:01柏倉新道登山口発10:13-14:54種池小屋15:00-15:02テント場
第2日目;テント場発4:47-4:49種池小屋5:04-5:57爺ヶ岳南峰-6:25中峰(爺ヶ岳山頂)6:30-7:42冷乗越(赤岩尾根分岐)7:45-8:00冷池山荘8:16-9:42布引山9:47-10:36鹿島槍ヶ岳南峰(山頂)10:50-11:50布引山12:16-13:14冷池山荘13:35-14:44爺ヶ岳(中峰分岐)15:02-15:20爺ヶ岳南峰巻道-15:57種池小屋-16:00テント場
 ここで紹介しきれなかった鹿島槍稜線の花々や最終日の大展望を
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