綿野舞(watanobu)山歩紀行2018
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7月8日 霧晴れて 夕日の峰は 奥黒部 (燕岳一日目)
燕岳2763.0m 長野県安曇野市・大町市  地理院地図は→こちら
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燕山荘前から左に槍ヶ岳、右に燕岳山頂、その間に横たわる奥黒部の連山稜線へ19:01日が沈む。この日、登山口麓は晴だったが、1840mを越えると霧の中に入り小雨模様。燕山荘に着くころにはカッパは不要となったが、ガスがかかって周囲の山は見えない。とりあえずと、燕山頂へ行き、その先北燕まで足を延ばしたものの、槍が時々ガスの中から姿を垣間見せてくれたくらい。奥黒部の山々も、時々ガスが薄れるものの全体像が分からない。ところが、日没近くなると突然ガスが晴れ、夕日の空に周囲の山々がくっきりと姿を顕わにしてくれた。高山ならではの感動の場面に出遭えた。
 渡辺伸栄watanobu
ここに載せきれなかった写真はYouTubeにあります ⇒こちら  
長い急登途中にある合戦小屋、名物のスイカ。これの美味さをKeynさんから何度も何度も聞かされた。今回は都合で来れなかったKeynさんと、これでようやく対等に話ができる。標高2380mのここまで高低差990mを4時間一気登り、このスイカの有難さを実感。Keynさんが言いたかったのはこのことだったと、何事もその場に立って見なければ真の理解には至らない。 
小屋より下、標高2000m付近でUnqさんが見つけたこの花、初めての花で名前が分からない。帰宅して調べたら、イチヨウランらしい。コイチヨウランは確か北沢峠で見た覚えがあるが、この花は初めて。葉が多数あって惑わされたが一茎に一葉らしい。
今回の初対面はもう一つあって、この花。これも帰宅して調べた。よく知っているツリバナは、マユミに似た花で赤くて5弁。これは色が黒っぽいからクロツリバナ。なるほど。
燕といえば、イルカ岩にコマクサ。燕山荘の裏手で定番の写真が撮れたと喜んでいたら、Unqさんが来て「これは違う」と。本物は燕山頂へ行く稜線の途中にあるのだと言う。
で、こちらがその本物。確かに、彫り物のようにイルカ。対岸に槍が時々うっすらと見えたりするのだが、写真にならない(・・・この翌日には撮り放題になるのだが)。
こちらがそのチラリの槍様。少々方向音痴気味の小生、時間的には少し前のことになるが、この槍と全く方向違いの方に出ていた小さい尖がりを、槍だ槍だと声に出してしまった。槍はその方角ではない、それにあんなに小さくないと、Unqさんにたしなめられただけでなく近間にいた見ず知らずの登山人からも苦笑いされて、赤面。山坐同定(遠くの山の名を当てること)と花の名は、人に聞こえる声で言うものではないと日頃自戒しているのだが、つい我を忘れて恥をかく。それはともあれ、コマクサと槍の写真も燕での定番らしい。斜面に寝そべって狙ったりしてみたのだが、何しろ瞬間の出来事なものでこの日はこれが精いっぱい(これも翌日はじっくり撮り放題)。
燕岳山頂の方面。画面中央右奥の岩峰が2760mの山頂。中央左に見える低いギザギザの岩がメガネ岩。荒涼とした風景に見えるが、周りにはコマクサがびっしり咲いていて、感動の景色。
斜面の上も下もこんな感じ。コマクサはアップで撮ればそれなりに絵になるのだが、これだけびっしりある風景を写すとなるとなかなか切取りにくい。
燕山頂を越えて北燕まで行こうとして途中の山頂分岐を見落とし、東沢へ向かう北燕山頂直下の横道へ入った。これが怪我の功名。びっしりのシナノキンバイに混じってオオサクラソウの群落。さながら秘密の花園に迷込んだ態。これまでオオサクラソウを見たのは、二王子岳でのたった一株。それも相当以前のこと。 
秘密の花園で驚いたのはもう一つ。足のすぐ脇を雷鳥が鳴き声を上げながら走り抜けていった。かなりの大声を上げ、これ見よがしにお尻を振り振り斜面を駈けて行く。多分、私の通った近くに巣があって、そちらから注意をそらそうと必死だったのだろう。雷鳥の子連れにはまだ出逢ったことがないが、いつかまた僥倖に恵まれるに違いないと、そんな気がした。
18時からの夕食に間に合うようにと小屋に戻った17:50頃、小屋の前の広場で、ブロッケン現象。噂には聞き、Murandoさんの画像などもずっと以前にもらっていたが、実際に遭ったのは初体験。もっと神秘性に打たれるかと思いきや、それほどでもなかった。周りで子どもたちが、あれは自分の影と虹だよなんてしたり顔に大声を出していたせいもあるだろうか。とまれ、一度は見たいと思っていた現象に出遭えた。長く山に登っているUnqさんにして初めて見たというから、これも僥倖の一つといえるだろう。雷鳥にしても花園にしても、何事も長く続けていれば必ずいいことがあるものだ。
ブロッケンが出たということは陽が射してきた証。雲がどんどん消えていく。奥黒部の峰々が姿を顕わにし始めた。これは夕日が期待できそうだと、とりあえずは夕食へ。 
夕食後の18:58、本日のクライマックスが来た。皆人広場に出てただ茫然うっとり大感激。この日この時この場に居あわせた僥倖にただただ感謝。
槍が出た。しかも、南岳までの稜線もくっきり。その上、大キレットと奥穂までも。槍、大喰、中岳、南岳の稜線が思いのほか長い。あそこを歩いて早5年になる。今度また行く。それに大キレット。5年前、南岳小屋のシシバナ展望台から覗き込んだ時の垂直な崖、それがどうだ、今こうやって眺めると結構ゆるい傾斜に見える。5年前はとても無理だと思った道も、今はそうでもないような気がしてきた。穂高が呼んでいる。 
黒い大きなシルエットはさっき往復した燕岳山頂。その右方遠く、雲が晴れて特徴ある双耳峰の山影、あれは鹿島槍。去年登ったオレの山。 
ついに全貌を顕わにした奥黒部の山々。目立つのは左から鷲羽岳、水晶岳、野口五郎岳。8月の山行計画に入っているまだ見ぬ山々をじっと見入る。 
19:30小屋の前から安曇野の夜景。テント泊の登山人だろうか、遅くまで広場のベンチに腰を据えて夜の景色を楽しんでいた。高山は稜線に泊まるにしくはない。
<コースとタイム> 駐車場発9:15-中房温泉前9:26-13:09合戦小屋13:26-14:53燕山荘15:53-16:30燕岳山頂16:45-17:06北燕岳山頂下-17:50燕山荘
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