綿野舞(watanobu)山歩紀行2018
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8月27~28日 中八(なかやつ)の 天狗の上で 夏惜しむ
天狗岳(西天狗岳)2646.0m 長野県茅野市  地理院地図は→こちら 
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西天狗岳山頂から、南八ヶ岳の核心部 奥から阿弥陀、赤、横、硫黄、根石
八ヶ岳は麦草峠を境にして北八ヶ岳と南八ヶ岳になる。天狗岳は南に属するがちょうど中心部で、人によっては麦草峠と夏沢峠の間を中八ヶ岳と呼ぶらしい。
四年ぶりの八ヶ岳。前回は赤岳・横岳・硫黄岳と南の核心部を歩いたが、ガスがあって八ヶ岳の全体像は把握しがたかった。が、今回は、天狗岳の山頂から南北20数㎞に及ぶ連峰を一望できた。
太古、八ヶ岳は富士山より高い山だったらしい。山頂稜線を歩きながら、どれほどの高山がそそり立っていたものやらと想像を巡らせて見た。改めて調べると、連峰全体が一つの高山だったというのではない。約130万年前、北の蓼科山の辺りから噴火が始まり、長い年月を経て次々に噴火した山が連なったのだという。その中で、30万年前に南の阿弥陀岳の辺りにあった火山は現在の富士山より数百m高かったと。が、その後大規模崩壊を起こして、富士山を下回ってしまった。もっとも、富士山の方は、最初から高かったわけでなく、50万年前から何度も噴火を繰り返し高さを積み増して、今の高さになったのは1万年前とか。だから、太古、八ヶ岳と富士山が高さを競い合ったという背比べ神話も、あながち荒唐無稽とは言えないようだ。
今回は、夏の終わりを惜しむ山行。山の木の葉は早一部色づき、高山の夏花は終わり、秋の実を赤くしていた。あの猛烈な暑さの夏も、もうすぐ終わると思うとどこか寂しい。が、地球上に繰り返された悠久の時を思えば、四季の移ろいなど極わずかな時間。一々の喜怒哀楽など小さい小さい。
  渡辺伸栄watanobu
唐沢鉱泉の登山口から入り、苔生す樹林帯を登って尾根筋に出るとようやく眺望が開ける。すぐに露岩が現れ、そこが第一展望台。ちょうど昼時なので、ここで展望を楽しみながら昼食休憩。ゆっくり登山。先月初め賑やかに登った入笠山が目の前に見えた。
暫く尾根歩きの後、西天狗岳山頂への急斜面。そこは、大石がゴロゴロのゴーロ地帯。巨石の間をぬったり攀じったりしながら、山頂へ直登する。
西天狗岳山頂。天狗岳と呼ばれる山体には西天狗岳と東天狗岳があって、西の方が僅かに高く、こちらが天狗岳の山頂となっている。ただ、東天狗の方が麦草峠から赤岳に向かう縦走ルート上にあって通る人多く、そこから外れる西天狗に来る人は少ないのだとか。南北に連なる連峰の中心でもあり、主稜線から離れている分、全体を眺めるには格好の場所なのに。
こちらは北八。奥から蓼科山、北横岳、縞枯山、中山と来て、中央の鞍部にこの日の宿・黒百合ヒュッテが見えている。手前の斜面は東天狗岳。この斜面を横切る廃道を大きな黒い動物が歩いていて一瞬クマかと思ったが、望遠レンズで見ると顔が白くカモシカと判明。歩き方もクマと違ってややスマートだった。
北横岳の山頂下にはRWの駅が見えた。実は、この翌日は一旦下山後RWで北横岳に上り縞枯山まで歩く予定でいた。ヒュッテに入ってから夜、翌日の予報を見ると雨。それで2日目は北八を取止め、麓の町で、通りがかりに偶々目に入った放浪美術館という怪しげな建物で山下清展を見た。結果は?・・・早起きは三文の得ならぬ、立寄りは三文の得。いや三文どころではなかった。期待値と満足度の反比例法則は、ここでも立証された。
一度も見たことのなかったブロッケン現象。今夏、燕岳で初めて出逢ったら、今回、東天狗からの下りでまた出逢った。そう言えば、燕で親雷鳥に出遭って、今度は子連れ雷鳥に遭いたいものだと思ったら、雲ノ平で初めてお目にかかれた。今年の夏は、念願の大キレット通過で槍から前穂までつなげる大縦走を果たせたし、奥黒部の山々も周回でき、リンネソウにも出逢えたし、本当に充実した山夏だった。いつになく行く夏が惜しまれるのは、そのせいなのだ。
2日目の朝、出立前の記念撮影。古式ゆかしいというか、風格のある山小屋。それなのに、アイスクリームを販売しているとは、なんと斬新なことか。トイレも実に清新。古きを守り新しきに遅れず。不易流行、かくありたいものだ。
八ヶ岳の魅力の一つに苔生す登山道がある。4年前に歩いた美濃戸口から行者小屋への道もそうだったが、唐沢鉱泉からの周回路も登り下りどちらも緑濃い苔の林を通る。岩を蓋う苔、倒木に這い付く苔、なんともいい風情。人工の苔庭では、この風情を出すことは到底無理というもの。
唐沢鉱泉の源泉。温泉かと手を入れたらその冷たさ。10℃の冷泉とのこと。二酸化炭素泉とのことだが、年に一度白く濁るのだとか。沈殿しているのはその時の成分だろうか。
唐沢鉱泉の裏手には、ヒカリゴケの群生地があった。火山弾だろうか溶岩流だろうか、積み重なった岩の隙間が各所にあって、その中に生えている。花もそうだが、珍しいものでも、あるところにはあるもんだといつも思う。長く山を歩いていれば、珍しい物珍しい事そのほかいろいろ、いつか出逢うことになる。人生もおなじ、喜び悲しみ幾年月だ。
<コースとタイム>
一日目(8/27) 唐沢温泉下P発10:25-12:31第一展望台13:07-13:39第二展望台-14:35西天狗岳14:40-15:08東天狗岳-16:21黒百合ヒュッテ
二日目(8/28) 黒百合ヒュッテ6:04-6:37分岐-7:50光苔群生地7:58-8:02P着
 ここに載せきれなかった写真はYouTubeにあります ⇒こちら 
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