綿野舞(watanobu)山歩紀行2018
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10月28日 秋深く 善男善女 山に入る
倉手山952.4m 山形県小国町  地理院地図は→こちら 
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この日のために新品の山道具を揃えた人も、この日のためにドームでせっせと鍛えた人も、山頂の貸し切り桟敷に座れば、何はともあれ花より団子。急坂の息切れも下界の憂さも、いっとき忘れる憩いの頂。このひとときのために人は山に来るのだろうか。元気回復の山力をもらって善男善女、下界に戻る。これぞまさしく健康登山。
  渡辺伸栄watanobu
前日からずっと雨、朝も雨、登山口についても雨、バスから出るまで降っていたその雨が、降車して整列したとたんに止んで、陽まで射してきた。前日に関係者集まり、気象各社の予報を検討した結果、多分こうなるのではと見込んではいたものの、ここまで的中するとは。僥倖と言うほかないだろう。
実質標高差600mの低山とはいえ、この山の特徴は登山口からのいきなりの急坂。滴る汗にカッパを脱いだ一行、黙して急登と思いきやペチャクチャと賑やかに笑い声。高度が上がるにつれて、樹々の色合いが増し、話しと笑いは盛り上がる。
750mのピークに上がればこの景色。正面に松枯山と大境山が連なる県境の峰。一行から声あり。松枯山の尖がりを指して、あれは光兎山。と思えば、真後ろの宝珠山の尖がりを見て、あれが光兎山。尖がれば何でも光兎山かと、またまた笑い声。なんでも笑う。画面右奥の尖がりが正真正銘光兎山。
750mのピークが倉手の前山になっていて、そこから一旦鞍部に下る。ここの紅葉がまた一段と素晴らしく錦織りなすの観まざまざ。鞍部から山頂への急登を前にして、暫し立ち止まりため息を一つ二つ。目の前の急坂への歎息か、はたまた燃える木々への感嘆か。
鞍部東斜面の紅葉が、倉手紅葉の最絶品。だからもちろん、ため息は感嘆の吐息。口々に歓声を漏らしながらカメラを取り出す。といっても、今時はみなスマホ。
前山鞍部から山頂への登りが、思いのほかキツイ。3日前の下見では、ここで大汗をかいた。登山口からの急坂は倉手の特徴でよく意識に残っているが、山頂前の急坂はほとんど忘れていた。多分、山頂に上がった途端、その直前の苦労などすっかり吹き飛んでしまうからなのだろう。苦しさを忘れた人がまた山へ来る。忘れられない人はもう来なくなる。
急坂を登り切って、やや平らな山頂稜線の雑木林を抜け、少し高くなった地面を2,3段上がると突然視界が開け、目の前に飯豊連峰。そこが倉手山頂。だから、皆、両手を広げてヤッター、ツイターと叫びたくなる。もしかしたら、人はこの一瞬のために山に登るのかもしれない。
倉手は飯豊の前衛峰。だから、山頂からの飯豊大パノラマはこの山最大のウリ。だが残念なことに、この日のパノラマはここまで。地神も北股も梅花皮も厚い雲の中。ただ、本山山頂付近の雲は薄れて、うっすらと雪化粧した姿をちょっとだけ見せてくれた。下山を前に登頂者全員の集合写真撮影中。 
下山路で拾った落ち葉を使って、班ごとに紅葉アート制作展示。下山が早まって迎えバス到着までの時間調整に、うまいことを思い付いたものだ。各班作品の審査結果は後日、記念写真送付時に発表されるのだとか。
さて、迎えのバスが来て、乗り込みが終わった途端に雨が来た。下山中にも時々霧雨がかかり、傘を出したり畳んだりはしたのだが、基本、山行中の雨はほとんどなし。それが、下山し終えた途端に本降りとなり土砂降りに近くなった。まさに紙一重、神対応の健康登山、これを僥倖といわずして何と言う。スタッフ一同、空の神様に感謝感謝。
<コースとタイム> 登山口発8:45-11:13山頂12:33-14:21下山
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