綿野舞(watanobu)山歩紀行2018
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11月25日 今日もまた 岩に魅せられ 絶壁へ
岩櫃山802.8m 群馬県東吾妻町  地理院地図は→こちら 
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古谷登山口の辺りから見上げた岩櫃山。絶壁の上にさらにそそり立つ岩峰。あの岩稜の上を歩くのだろうかと、一同半信半疑の態。実際に登ってみると、岩稜中央部にある少し尖った岩の先端が山頂で、そのすぐ右隣の岩の先端と二つの山頂が並んでいるのだった。岩稜の左側、切れ落ちた谷間の大鞍部から登り上がる密岩通りのルートは、この山の最難関。鎖場が連続し、途中には天狗の架け橋と名付けられた蟻の戸渡りもある。大キレットですっかり岩稜に魅せられた3人組、ヘルメットも用意し意気揚々と登り始めたのだった。
 渡辺伸栄watanobu
 
急登の崖上り、谷間には鮮やかに色づいた楓。関東の紅葉は今が盛り。岩にも鎖にも慣れた手つき足つきですいすいと高度を上げていく。
ここが天狗の架け橋、蟻の戸渡り。細い岩のナイフリッジは途中空洞になっていて、その名の通り橋の形態。戸隠より距離は短いが、細くて、しかも路面の凹凸は大きい。何とか渡ろうと思うが、足が言うことを聞かない。足場が不安定で立っているだけが精いっぱい。動くだけでクラクラして、一歩踏み出すのも容易でない案配。岩の細道の中央部が空洞のため、戸隠のように横伝いもできないし馬乗り状態での前進もほぼ無理。我らの後からやって来たこの登山人も、暫く逡巡していたが、諦めて迂回路へ向かった。その時のセリフがいい。「ここで落ちたら、皆さんに迷惑かけるから、止めておこう」と。あの大キレットを通過して、大概の岩場は平ちゃらな我らだが、摑まるものがない断崖上の一本橋だけは、どうにも苦手。
架け橋を渡らず回り込んだ迂回路も簡単な道ではなかった。急な鎖場の連続。でも摑まるものさえあればへっちゃら。
さっきの架け橋は、この凸凹斜面が水平になった感じの道なのだが、摑まる鎖があるかないかでまったく違う。
鎖を登り切ったら、岩の壁の穴を潜って山の反対側へ出る。この先どうなるのかと、変化に富んだ山は緊張と興味の連続。
穴の先は、断崖絶壁の上。真下に、車を置いた登山口の駐車場。朝見上げた絶壁の上に出たことになる。ここからさらに鎖の急登りがあって、山頂のある岩の先端へ向かう。
ようやく山頂のある岩峰の先端に上がった。この山頂は狭い。
山頂の岩の先端に立つ。ここの四等三角点は、標柱がなく、三角点を示す金属が岩に埋め込まれていた。ぐるりと360度大展望。なんとも爽快な気分、気宇壮大。
東方面は、吾妻川が流れる中之条町市街と十二ヶ岳、その後ろに子持山。さらに右遠くに赤城山。中央遠くは武尊山、左の白嶺は谷川連峰。眼前には、そそり立つ岩の上に立つ人たち。あれは東側のもう一つの山頂。 
南西方面。遠く浅間山、その手前に浅間隠山 
狭い山頂が混んできた。我らが来た密岩通りルートは本格登山のコースだが、岩櫃城方面から来るルートはハイキングコースにもなっていて、わりと気楽なスタイルで結構な人がやって来る。我らのヘルメットが少々大仰な感じに見えるほど。早々に山頂を下って、隣の東側山頂へ移ることにした。 
東側の山頂から、さっきまでいた三角点のある山頂を振り返った。狭い岩の先端にこぼれそうに人がいる。こちらの岩の上は比較的広い。皆人高みを好む、か。
 
山頂を降りて、岩櫃城本丸址へ向かう途中、妙な木を発見した。木の根がどうしたことか地上へ出て、そのまま、隣にある岩の上を這い、急崖になった尾根を伝って上へ上へと登り上がっている。人のみならず木の根も高みを好む、か。
戸隠山の蟻の塔を立って歩けず這い歩きしてから2年。情けない思いをして、あれ以来目つむり片足立ち3分の訓練を重ねてきたし、大キレットの岩場も通過してきた。今度こそは大丈夫だろうと、やる気満々で天狗の架け橋の端っこに立った。なのに、我が意に反して足は言うことを聞かなかった。自信は見事に打ち砕かれた。トボトボと下山の途に就いたのだが、紅葉鮮やかな厚い落ち葉の谷を歩いて、沈む気持ちがすっかり癒された。関東の山はカラッとしていて、いい。
鋭い岩峰が連なる岩櫃山の岩稜地帯からは東にずっと離れた、穏やかな地形の尾根上に岩櫃城の本丸址はあった。周囲の斜面は縦横に築かれた堀で守られていたが、岩櫃山からの尾根筋に大きな堀切がなかったことが意外だった。あの岩稜・岩峰から敵が攻めてくることはないという読みなのだろうか。
ここでゆったりと昼食、手挽きのコーヒで気を静め、下山。山城の根小屋地帯を通って吾妻川の段丘平地に出、真田道を散策しながら登山口駐車場へ戻った。郷原の地は、養蚕の地なのだろう。せがい造りの特徴的な旧家が並ぶ歴史街道だった。
ここに載せきれなかった写真はYouTubeにあります ⇒こちら 
<コースとタイム> 古谷登山口駐車場発9:20-9:38密岩通り登山口-10:20天狗の架け橋-10:57山頂11:08-11:20東側の山頂-12:19天狗岩-12:30岩櫃城本丸址13:33-14:30駐車場着
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