綿野舞(watanobu)山歩紀行2018
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12月25日 一陣の 吹雪去り 頂に憩う
不動堂山557.3m 新潟県五泉市  地理院地図は→こちら 
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不動堂山の頂。真新しい看板と鉄管を吊り下げた鐘。この鐘を、これも吊るされた金槌で思い切り叩く。ゴ~ォ~ン・・・とは響かない。ガンガンと誰もいない冬の山を喧しくするだけの甚だ趣に欠ける音。金槌は釘抜付き、山には実に不釣り合い。何のための鐘かと首を捻りつつ、よくよく見れば鐘の鉄管には吊り下げ用の耳が2個溶接で付けてある。ここのためにわざわざ作ったものか。だとすれば、看板と言い鉄管と言い、この山を整備した人たちの心意気というもの。音の味気なさは差引いても余りある。そう言えば思い出した。ここからそう遠くない猿毛岳には、炊飯器の鍋を吊り下げた鐘があった。山には鐘が似合うと思っている人たちがいる。そして、鐘があればとりあえずはと、叩いてみる人が必ずいる。クマは堪らず逃げる。サルは堪らず黙る。ハハ~ァン。
 渡辺伸栄watanobu
今朝は寒かった。夜来の雪で外は真っ白。途中の車道も凍結。これなら雪山だ、とカンジキまで用意した。が、五泉まで来てみればこの通り、雪なし。尾根の上には陽射しまで降り注いでいる。ただし、ここは谷間、日は当たらず空気は冷たい。登山口ですでにキリリとこの表情。
標高185mの鉄塔まで一気に登る。急坂にじっとりと汗ばみ、その上鉄塔の尾根には陽射し。雪山衣装は脱ぎ捨てる。足下には乾いた落ち葉。ところどころに霜柱。ここは越後か、12月も暮の冬山か、と半信半疑。すぐ隣には、白山。この後、尾根を登るにつれて白山の左方に粟ヶ岳が見え、さらには守門岳。みな真っ白に輝く雪山。ここは紛れもなく越後。
山頂への稜線は白く嫋やかなブナの林。乾いた落ち葉と霜柱を踏んで進むと、林を透かして山頂の看板が見えた。ここまで眺望はほとんど利かない。だから、あの頂へ行けば何が見えるかと期待が高まる。それが頂に立つ楽しみの一つ。
山頂からの眺望ー北東方面。すぐ隣、目の前に大倉山、その先に菅名岳へ通じる稜線。吹雪混じりの冬風が吹いている。
山頂からの眺望ー西方面。眼下に流れる早出川。村松から五泉の市街地。五泉フルマラソンのコース。その先に菩提寺山のある新津丘陵。
山頂からの眺望―南方面。白嶺の粟ヶ岳、その右の木の陰に白山。左に離れて守門岳も朝の内は見えていたのだが、雪の雲が厚く降りてきた。
山頂からの眺望ー南東方面。中央遠くに御神楽岳。その左、平らな峰は日本平山だろう。これまで挙げてきた山々は、みな過去に登った山だが、日本平山は未踏。名前に惹かれる山、来年こそは。
ちょうど頂に立ったときのこと。白山と粟ヶ岳に真っ白な風というか雲というか、それがこちらの方に向かってかなりの勢いで流れて来る。あれは間違いなく吹雪を運ぶ雲。山頂の眺望を楽しんでいる僅かな間に、その雲が風になって来た来た。急激に気温が下がる。これはもう下山するしかないと冬着を出して身構えたら、なんと、一陣の風は北に向かって吹き去り、着いた時と同じく穏やかな山頂に戻った。やれやれとばかり、荷をほどいて昼食休憩。湯を沸かしてラーメンやらコーヒーやら、啜る温かさの嬉しいこと!ゲーテ曰く、なべての頂きに憩いあり。まさに!
下りは福連寺山への尾根を辿る周回コース。このルートを使う人は少ないらしく道はか細かったが、途中の木の葉道は日射しが戻ったせいもあって穏やかな尾根歩き。カサカサと、この時季の越後の山らしくない音を立てながら軽快に下る。
このまま軽く下山かと思いきや、最後の福連寺山は、登りも下りも思いのほかの酷い急坂。道が細いわけが分かった。不動堂山を目指すなら、わざわざこの道を使うことはない。ただ、福連寺山だけを行き来なら、この急坂、恰好のトレーニングコースかもしれない。上りも下りも、スリップ転倒に気を付けたせいで、翌日からのランニングに差し支えが出るくらい、足が妙に強張った。何しろ今年は一度ならず二度三度と転倒し、その都度、運悪くYoumyさんに見られてしまって、やたら喜ばせてしまったものだから、今日だけは転倒しまいと秘かに決めていたのだ。元旦マラソン前に足を挫くわけにもいかないしと。それもあって、気持ちの良い山歩きで一年を締めくくることができた。実は先日、阿賀北山岳会の納会で12ヶ月山行賞を見込み受賞してしまっていたのだ。これで返納しないで済んだ。ともあれ、会の皆さん、一年間素晴らしい山行、ありがとうございました。来年もまた、よろしくお願いいたします。
<コースとタイム> P発9:55-10:23鉄塔-11:29山頂12:20-13:59福連寺山-14:18P着
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