綿野舞(watanobu)山歩紀行2019
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5月4~6日 常念から蝶 残雪の稜線を歩く
常念岳2857m 蝶ヶ岳2677m 長野県安曇野市・松本市  地理院地図は→こちら 
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厳冬の北アルプスは到底無理として、せめて残雪期にはと念じてきた。念じれば叶う。チーム大キレットの3人、アイゼンにピッケルを背負い雪靴に身を固めて冬支度。いざ、あの三角錐の頂点へ。
 渡辺伸栄watanobu
安曇野を登山口に向かう途中、目の前に常念の麗姿。あれだ、あれだ、あの三角錐。
一ノ沢登山口から歩き始めて3時間半、いよいよここからが初日の核心部。 あの空と山との境目まで激烈な雪渓の急登。登れ、登れ、天まで昇れ!
雪渓と2時間の格闘、常念乗越に上がった。稜線鞍部の向こう側は別世界。槍、中岳、南岳、そしてあれは! オーなつかしや、あの稜線あのピークあの大キレット。
戦い済んで陽が沈む。常念小屋のデッキから、あの稜線を飽きず眺め続けた。よぎるのは、あそこを歩いた夏の日々。恐々跨ぎ越した長谷川ピーク、垂直登攀した北穂小屋下の岩壁。 
2日目朝。昨日喘ぎ喘ぎ登り着いた常念乗越に、今朝は朝日が登って来る。喘ぎ音一つ立てず、静かにそうっと着実に。常念の山肌が赤く染まった。
乗越を越えた朝日が対岸の槍と稜線を照らし出した。 昨晩、槍の背面に沈んだ太陽が早くも槍の前面から上がってきた。なんという速さ、いやなんという地球の小ささ。
乗越からの常念の登りはきつかった。が、途中経過は省略。8時40分常念山頂に立った。文字通り360度の大展望。得も言われぬ光景に只々立ち尽くし眺めまわす。
中央に大キレット、左へ北穂、涸沢岳、奥穂、前穂。右に槍、そのさらに右、三俣蓮華、鷲羽、水晶。なんとも懐かしい山たち。あれはたった昨夏のこと。でも、遠い遠い昔のような。
左に槍。中央に三俣蓮華。その右、鞍部を挟んで鷲羽、ワリモ岳の小さなピークがあって長い稜線の先の画面右端が水晶。山頂山座盤は、それを薬師だとしていたが、Unqさん曰く、そんなはずがないと。カシミール3Dで調べてもどうやらあれは水晶。北アに通いとおしたUnqさんの眼に狂いはない。 
中央の黒い三角錐は針ノ木。常念山頂に屯した人たち、剱だ剱だと騒いでいたが剱はその左、谷を挟んだ大きな山塊。左端は立山。歩いた山はよく分かる。針ノ木とその右・蓮華は未だ見ぬ山。右端は鹿島槍と後立の山々。
中央に微かに富士。その左、八ヶ岳。画面にはないがさらに左に浅間、四阿山。富士の右は南アルプス。その右手前に中央アルプス。北アルプスの山からは見慣れた光景になってしまった。左手前の尾根は前常念。
常念の真下の乗越を挟んで横通岳。そこから左方、大天井に続く稜線、その先右に燕。さらにその先遠く後立山連峰が続く。右端の白嶺は焼山、火打、妙高の連山。その手前黒いのは黒姫山か。
バックはこれから一日がかりで歩く蝶ヶ岳への稜線。 麓から見た以上にアップダウンは大きい。右は上高地の谷。その先に乗鞍、御嶽。チーム大キレットの心強い二人。
蝶槍へ向かう稜線上で一休み。昨夏、槍から前穂まで繋いだ稜線を真正面から一望して感極まり、何はともあれ、大キレットに乾杯。帰省した息子がドローンと一緒に置いていったCanonG3X、オートでこの写り中々ただ者ではない。 
蝶ヶ岳の稜線、歩いても止まっても、見飽きることのない槍・穂高の山並み。去来するのは両手両足を駆使して岩を乗越えたあの夏の自分たちの姿。難関の一つ一つが目に浮かぶ。 
3日目の朝。蝶ヶ岳ヒュッテの前で、荘厳な夜明け。寒風に煽られながら、日の出に浸る。
下界を見れば、安曇野の田に朝日が照り映えて、何やら神々しくもある光景。豊葦原の瑞穂の国とはかくもあるらん、などと。 
高山に雲はよく似合う。とりわけ薄くまとったベールを脱ぎ始める頃は、たまらない。上高地は雲海の下。中央に焼岳。
蝶ヶ岳山頂。ここから東斜面を下るので、西側にある槍・穂高の山々とはここでお別れ。三日間毎日、その全貌を余すところなく見せていただいた。
2677mから標高差1300mをほぼ一気に下る。ここを登りに使ったらさぞ苦しかろうなどと呟くが、なに、一ノ沢の雪渓だって飯豊石転びの雪渓と変わらぬ斜度。だから、結局、何処を登りに使おうと、楽な道など一つとてないのだ。 
サルオガセのそよぐ木の向こうに常念岳。右へ突き出た前常念に尾根を架け延ばして、東西方面から見る三角錐の常念とは全く別物の姿。これもまた真実。
この木、知る人ぞ知るの木らしく、Tシャツのプリントにもなっているのだとか。ゴジラの木と言わずに、「みたいな」と控えめなあたりがすこぶる好ましく、気に入った。人はすべからくかくあるべし、だ。
三俣口から一ノ沢口へ戻る途中のタクシーの中、満たされてウトウトしていたら、常念坊だよ!と起こされた。慌ててG3Xの蓋を外し望遠でカシャリ。やはりこのカメラただ者ではない。それにしても常念坊、どう見てもマリつきを楽しむ越後の良寛様ではないか。 
 ここに載せきれなかった画像はYouTubeにあります。⇒こちらから
<コースとタイム>
1日目 一ノ沢登山口P発8:30-11:00烏帽子沢ー14:20常念乗越(常念小屋泊)
2日目 小屋発6:30-8:40常念岳山頂9:25-15:08蝶槍ー16:13蝶ヶ岳ヒュッテ(泊)
3日目 ヒュッテ発6:10ー6:20蝶ヶ岳山頂ー10:15三俣登山口  
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