山の記 2020
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10月11日(日)  峠越え クマも羨むこの笑顔
萱野峠278m 朴ノ木峠398m 山形県小国町 地理院地図は→こちら
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十三峠を歩く会。今回は、越後側から4番目、5番目の萱野峠と朴ノ木峠。山形県の玉川から出発してほぼ1時間歩き、今、時刻は10:25、萱野峠標高278mに達したところ。天候が整わず、2回延期してようやく実施の今回。皆さん、待ちに待った山歩き、だから、嬉しくて嬉しくてたまらない、この表情。もっとも、まだ1時間。このあと、歩いた歩いた6時間、ほぼ9㎞。標高398mの朴ノ木峠を越えて、夕方、小国町に着いた頃には、相当の体力消耗。しかしそれも、期待通りのダイエットと、そこまで喜んでもらえれば、案内人の冥利に尽きるというもの。とにかく皆さん、山歩きが大好きなんですね。
さて、今年はこれにて終了。残りの八峠は、また来年。熊スプレーも、蜂スプレーも、救助ロープも使わずに済んで、何よりのことでした。皆さんのご協力に感謝です。来年まで、お達者で
 渡辺伸栄watanobu
スタート地点の玉川大橋。名勝玉川渓谷に架かる吊橋で、春秋の景観はまた格別という。往時はもちろん藤蔓の蔓橋。揺れる吊橋を渡った旅人、文政4(1822)年に旅した良寛もその一人。ここは越後米沢十三峠に架かる三大大橋の一つ。他の二つは小国大橋に手ノ子大橋だったとのこと。足下の岩壁に刻まれた旧橋の橋脚跡や岩肌に穿かれた細い水路跡などを見下ろしながら揺れる橋を渡る。
30分ほど歩いては小休止、水分補給に栄養補充。所々で往時の名残りの説明。ここは、裸松とか子泣き松とかを過ぎたあたり。かつて、松の大木あり、その木の皮を剥いで持ち帰り、夜泣き虫のついた子の前でその皮に火をつけて灯すと、不思議とピタリと泣き止んだのだとか。そんな話も、足のつかれ休めには格好の材。
鉄パイプの仮橋が2ヶ所。下見の時には橋板が渡してあったのだが、雪対策なのだろうか、すっかり剥がして近くの木に立てかけ括られていた。パイプの上を大股で渡る人、あるいはまた、手すりにしがみついて蟹の横歩き風に小股で渡る人、人それぞれに楽しむ渡り。
橋のない徒渉地点が1ヶ所。ここが萱野峠唯一最大の難所。流れを渡ることもさることながら、その後に対岸(画面こちら側)の1m程の崖を攀じ上がるのが難関。
往時の街道を偲ぶ敷石の道。これらの石は、街道傍の石切り場から切り出したという。地産地消の石。近年、ボランティアの人々が埋もれた敷石を掘りだしては敷き直して、ここまで復元したという。この敷石、湿っていると現代の靴では意外と滑るので要注意。往時の草鞋なら、決して滑らない。かつて草鞋を履いてアユ釣りをした経験から、それはよくわかる。
道にクリの実が落ちていて、見上げれば案の定、熊棚。熊が栗の木に攀じ登って太枝の上で小枝をへし折り実を食べた後、その枝を尻の下に敷くのだと聞いた。熊のヤグラとも言う。幹の皮には生々しい爪痕も。昨晩か今朝あたりのものか、キズは新しい。関川村では人身被害が出たばかり。ゾーッとしながら、こわごわ見上げる。笛を吹き鳴らすわ、立木の幹を丸太で叩くわ、クマよけ、クワバラ。
足野水に到着。あの山が龍ヶ岳だろうか。山上に池あり、天から龍が遊びに舞い降りて、麓の村の雌馬に恋をし、生まれたのが三本足の馬で、足三つが足野水に変じたというのが地名譚とのこと。ここでちょうど正午。次の朴ノ木峠の登り口にある民家の緑地広場をお借りして昼食休憩。奇しくもその民家、Youmyさんの親戚だったとは。この地は街道間の宿で重要地、さらには平家落人伝説もあるとか。由緒ある地で休ませていただいた。
大木の倒木を越える。ここが、朴ノ木峠道の最大の難所。最大と言ってもこの程度。もぐって越える人、跨いで乗り越える人、人それぞれ。
やがて道は爽やかな白いブナの森に入る。深呼吸して森林浴。この場所から峠までが意外と急登り。あるいは人によっては、ここから峠までが最大の難所だったかもしれない。
朴ノ木峠に祀られた聖観音の御堂下で全員集合写真。タイマーセットのオートシャッターでは、いつシャッターが切れるのかと案外緊張、なかなか笑顔は作れない。それをどう克服して、萱野峠のときのような解放された笑顔にするか、今後の大きな課題だ。と大げさに言うほどのことでもないが。オートながらピントはよく合っている。
健康の森横根を過ぎて車道から再び山道に入ろうかとする峠歩きの最終場面に出てきた追分石。下見の時にはうっかり見過ごしてしまったが、道脇の杉の木の根元にひっそりと立っていた。右・山道 左・越後道 とある。山道に迷い込む旅人が多く出て設置されたという。それが寛政9(1797)年のことだから、良寛もこの追分石を見て通ったことだろう。この場所から山道に入って小国町に到着した。玉川から小国町まで休憩を含めて7時間、峠を二つ越えての時代旅。楽しい楽しい旅でした。続きはまた来年に!乞うご期待。
<コースとタイム>
玉川発9:15-10:20萱野峠10:30-11:57足野水13:05-14:25朴ノ木峠14:50-15:55小国町着 
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